プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

平戸島~五島列島の海旅 4日目

2016-11-02 17:23:06 | 平戸島~五島列島への海旅

前回「3日目」記事から続く 

平戸島~五島列島の海旅 4日目 野崎島から小値賀島へ

 今日も早朝からテントを揺らす嫌な風が吹いていたが、今日こそは出艇したかった。
 昨日停滞して一息つくことによって、この海域の傾向や今後の旅のスタイルなどがおぼろげに見えてきた感がある。旅の前にはいつも、ある程度のテーマやコースは決めておくが、旅が始まってしまうと結構行き当たりばったりになる。そう言ってしまうとテキトーな漂白の旅のように聞こえるだろうが、海の状況、風や天候の状況、その土地の空気感などなど、実際に行ってみて臨機応変に対応していかなければ危ないし、またたとえ予定通りに行けたとしても予定をなぞるだけなんてあまり面白くないからだ。パドルを海に差し込んでダウジングし、海水をなめてみた味の具合で行き先を決める。それが旅の安全と充実度に繋がるとでも言おうか。
 それがカヤックトリップというもの。
 とにかくここのところ毎日のように北東の風が吹いている。それも10m/sクラスの結構強いやつ。 そしてこの海は北東に大きく開けているので、長い距離の海面を渡ってきた風が大きな波うねりを生じさせる。
 プラスアルファ、対馬海流と、島の間を流れる潮流がある。
 潮と波ウネリがぶつかるとかなりでかい、しかも不規則にカヤックを揺らす潮波が立ち上がる。こいつが一番やっかいなのだ。ウネリだけならばまだいい。潮流だけならまだいい。
 その両者がぶつかり、複雑に干渉し合うとやばいのだ。
 それがここの海。
 今年は異常気象気味で、いつもならここまで北東は吹かないと色んな人が言うが、旅人にとって例年のことはあまり関係ない。とにかく今ここで北東の風が連日吹いている。なので、出来るだけ早く風裏になる西側海岸に回りたい。

 西側に回るには2つの難関がある。島の南側に津和崎瀬戸、北側に六島瀬戸があり、そのどちらかを通過しなければならない。どちらも海図では4~5ノットの潮流と書いてあるが、こういうところでは実際、ピンポイントで7,8ノット流れている場所があったりするものだ。
 おまけに今日は大潮である。そいつとぶつかる外洋からのうねり。
 また、 野崎島には漁師がいないので、潮止まりの時間を聞くことができなかった。
 とりあえず干満の時間だけは分かっている。
 となると、目星を付けた時間帯にある程度近くまで漕いでいって瀬戸の外で様子を見る。そして潮止まりの兆候が見えてきたところで渡ってしまう。
 それが一番いい方法だろう。
 マジでやばいと思ったら引き返す。

 ということで朝イチまず南下し、津和崎瀬戸を目指した。やはり嫌なウネリが入っている。どんより曇っていて雨がぱらついているのがまた、鬱々とした気分を増長させる。アウェイの知らない海の難所を行くときのなんとも言えないナーバスさ。瀬戸に近づけば近づくほど潮の影響が出始め、波うねりの形状が変わり、まるで海底からくる不思議なエネルギー体のように、カヤックを揺らす力が不規則になる。沖の瀬戸の水路あたりを見ると、かなりでかい白波が崩れている。とりあえず岬の先端の「一ツ瀬」という岩礁の手前まで来て様子をうかがったが、オーバーヘッドの崩れ波が炸裂していてちょっとやそっとで行ける状況ではなかった。
 ここで色々葛藤する。
 もしかしたらそのやばい状況はほんの数十メートルほどで、岬を越えると俄然穏やかになっているかもしれない。いや、なっていないかもしれない。オーバーヘッドの潮波が押し寄せるゾーンが何キロも展開されていて突入したは最後、最後まで漕ぎきらなければ抜け出せないのかもしれない。
 沈したらロールで起き上がるしかないが、フル過重のロールは大変そうだな。
 上陸して高台からスカウティングできれば一番いいけれど、切り立った断崖で、上がれるような浜がない。 
 まだ最大満潮まで時間がある。多分今、かなり潮が走っている時間帯だろう。
 この場所で潮止まりを待っているのも大変なので、一旦引き返して出直すことにした。
 
 港に戻って、しばらく休憩。
 再度出艇し、今度は北の六島瀬戸から行ってみることにした。
 若干潮波が落ちついてきたように思えたからである。またバウ(舳先)を北に向けたときの方が腰の入ったパドリングができる感じだったからである。実はこの「漕ぎ味」というのも潮や波がかなり影響するもので、カヤックが自分に教えてくれる貴重な海の情報なのだ。腰の入った力感ある漕ぎができる時の方がそうでない時よりもカヤックとの一体感も生まれ、テクニックも繰り出しやすい。何より不安感や鬱々とした感情から解放される。
 ということで、体感を信じて、南回りの津和崎瀬戸をやめて北回りの六島瀬戸を回ることにした。

 だけど、 六島瀬戸周りの方が陸からの視覚的情報が少なく、未知的な部分が大きかった。またものの本によると、六島周辺も潮が速くて有名で、明治39年に村の舟が近辺で転覆し、何人も死者がでた事故があったらしい。そしてその後この島は「時間厳守の島」と言われるようになったという。つまり「潮止まりの時間帯でなければ危なくて島に近づけない、きちんと潮止まりの時間を守って動け」、という戒めにまでなったというわけで、いっそうここの瀬戸のヤバさに彩りを添える話になっている。
 「ヤバさを感じたらヤバいゾーンのまっただ中に突入する前に引き返す」という前提で進んでいった。
 うねりと潮波がぶつかっている場所は確かに2,3あったけれど、こちらの方が視界が効いてコース取りもしやすく、けっこうあっけなく瀬戸を通過できた。時間的にも潮止まりに近かったと思うが、それでも川のように流れていたのは確かだった。

 安全地帯に抜け出たときのホっとした瞬間。 
 身体の全細胞が喜びに溢れるかのようにざわめき、超でかい声でシャウトしまくった。
 まあ、こういう感覚の中毒になってしまったらまずいのだけれど、だけどすごく生きている実感や感謝の念がわき起こる、いい瞬間だと言えるだろう。そして周囲の海、山、島、空、雲、鳥、木々、すべてのものがいとおしい気分になってくる。
 「自然との一体感」とは、こういうことをいうんだなという実感。
 漕ぎ抜けてみる、野崎島がとてもいとおしい存在に思えてきた。
 野生の鹿と隠れキリシタンの島、いつかまた来たい。心底そう思った。

 目の前ででかいブリが小魚を追ってボイルした。
 そのエネルギッシュな生命感、躍動感が胸にしみた。
 
 写真はいずれも安全地帯に出てからのもの。
 その後、心地よくツーリングし、小値賀島の港に近づき、そのそばにある船瀬海水浴場に上陸。そのまま歩いて島のゲストハウスまで行き、一泊した。ゲストハウスの隣りにあるカラオケスナックが唯一、晩飯が食える場所でそこで酒を飲んでいると、色んな人と知り合いになった。
 島にまつわる色んなことを教えてもらった。 

次回「平戸島~五島列島への海旅 5日目」へと続く

  

 

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