プリミティヴクール

シーカヤック海洋冒険家で、アイランドストリーム代表である、平田 毅(ひらた つよし)のブログ。海、自然、旅の話満載。

優雅に生きることが最大の復讐である

2012-03-17 16:12:03 | タイ南部カヤックトリップ
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  (タイ南部カヤックトリップのラスト記事です)

 タイのカヤックトリップの記事、まだまだ色々話題あるんだけどキリがないのでこれくらいにしておきたいと思います。

 最後にトラン沖のハイ島という所にいったんですが、やはり多海島。視界の中にたくさんの島々や石灰岩の奇岩が現れる光景はタイ南部の海域ならではのもので、次はあの島に渡ってみたいぜ、あの奇岩の裏っ側はどうなってんだろうかと、好奇心がとめどなくすぐられる感がありました。カヤックで実際一個一個回ってるとキリがないんですが、次の島、また次の島を求めて永遠に旅を続けたくなってくるようなムードを醸し出しているこの海域には、ぜひ皆さんをお連れして戻ってきたいものだと思いました。

 それから、やっぱり海外にいると日本のことを色々考えます。
 ちょっと距離を置くことによって見えてくるものがあるわけですが、やはり原発のことがまっさきに脳裏に浮上してきますね。だけど、人類史上最も忌まわしい出来事のひとつと言いうる原発事故を起こしながら、未だに原発再稼働の方向とか、ありえないです。
 狂ってるとしか思えないですね。
 反対派とか賛成派とかそういう次元ではなく、
 そもそも原発なんて全くいらないものです。
 不完全な人間ごとき生き物が取り扱うシロモンじゃない。

 先日11日の震災一年の日に犠牲者への哀悼、被災者への思い、復興への祈りを込めて高野山への巡礼道をロングウォークしましたが(参加者のみなさまお疲れ様でした。コンディションにも恵まれて、少人数で、無事に歩きぬくことができました)、その時も歩きながら原発のことを考えていました。

 原発、今すぐ止めて廃炉にしなきゃいかんと思いますね。
 次、事故起こしたらもう終わりだもん、日本。
 で、地震の活動期に入ってる日本。

 ・・・というと決まって、じゃあ電力どうすんだ? という答えが返ってきますが、
 ちょっと調べれば分かりますが、火力で全部行けるんですよ。
 それも天然ガス・コンバインドの発電ならばコストもかからんし、
 シェールガスとか、コールヘッドメタンとか、石油より遥かに埋蔵量も多い
 資源はまだまだあるんですよね。

 「イランのホルムズ海峡封鎖によって原油が
 高騰する危険性も鑑みればやはり原子力に頼らざるを得ないのが現状だ」
 とかなんとかエセインテリのおっちゃんがよくテレビなんかで言及なされていますが、
 賢いように見えて実に底の浅い考えだと思いますね。
 (ちなみにぼくはホルムズ海峡をカヤックで漕いでるんですがよろしければこちらもチェックをば。)

 天然ガスコンバインドで繋ぎながら
 次世代の自然エネルギー発電を徹底的に研究すりゃあいい。

 色んなしがらみや利権構造がヘビのように絡みまくって
 新しい方向に行けない日本。そりゃあ若者は絶望してニートになって当たり前だよ。
 ちゃんとした原発関連の本を何冊か読めばすぐわかることだけど、
 別に原発なくしたところで電力が足りなくなることなんてない。
 (おれとすれば多少足りないくらいでいいんじゃないの?街の明かりはドギツイし、
 と思ったりするけれど、幸か不幸か原発なくてもドギツイままをキープできる)。

 さっさと 「我々は間違っていた。日本の原発は今すぐ、すべて廃炉にします」
 と宣言したらかっこいいのに。
 そうすりゃ、海外も「おおっ」と思うだろうし、特に海外の若者たちに受けるだろう。
 (日本は高齢化社会だけど世界には若者ばかりの国もたくさんある。中東のジャスミン革命なんかもユースカルチャーから発生した。日本だけの定規で決めつけてしまうとよくないし閉塞感で窒息しちまうぜ)。
 
 日本車とかモノは有名だけど、人の顔がぜんぜん見えない日本。
 円だけがポリシーだって思われてる現状を挽回するチャンスでもあるのにな。
 それかスーパーマニアック的に自然エネルギーの最先端を徹底的に行くと、
 そっちのほうが長い目で見りゃ「円」にとってもいいはずなのにね。
 
 おれとすりゃ日本って何が面白いかっていうと気持ち悪いオタクアニメなんかじゃなく自然が面白いんだって世界のあちこちを周ればまわるほど実感することなんだけど、だけど今ぼくは以前言えた「旧石器~縄文12000年の歴史を持つ自然カルチャーの国から来ました」というセリフが胸を張って言えない。このタイのトリップでも50カ国くらいの人と出会いましたが、それを言うのをためらっちゃう部分がどうしてもある。それが歯がゆくて仕方ないですね。

 過剰なる自意識と電磁波と雑音にまみれた都会から離れて自然と交感することってほんとに大事なことなんだけど、それに気が付いている人は年々増えている一方、全く意識にない人も多いですね。で、そういう人たちが国を動かしているのが現実で、ぼくは時々日本にいるのがほんとに嫌になることがありますね。狂ってるような人も多いし・・・。
 あまりにも経済効率一辺倒、金かねカネカネカネカネと鳴くセミの、
 センス悪く知的レベルの低い、無神経な大合唱が耐えられなくなる時がある。

 でもそんな中でも楽しくやっていきたいですね。
 「楽しく、優雅に生きることが最大の復讐である」って言葉があるように。
 
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 ウミツバメの巣を取る現地の人たち。シットオンのカヤックで取っていた。ぼくが近づくとびっくりしてひっくり返っていた。「ガハハ」と笑顔になるところが、タイ人のおおらかさでいい。


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ダチ

2012-03-07 23:53:43 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 10日もいたスリン島、立ち去る時は胸がキューンとしましたね。
 その後はクラビを経て、さらに南部のトラン沖にあるハイ島に行きました。

 いずれにせよカヤックで知らない場所を漕ぐってことは、
 旅としてもひときわスペシャルなものです。

 普通の旅はまあ、その場所に対して、通りすがり的なニュアンスになるけれど、
 カヤックでのトリップは、
 自分の判断でナヴィゲーションしていく中で、
 心に染みいってくるものが全然違います。

 ある場所に対して、
 普通の観光が「ちょっと会話した」程度の交わりだとすると、
 自分で判断してカヤックを漕いだならば、
 「徹夜で語りあった仲」みたいな記憶の残り方になります。

 このプラネットアース上の美しい自然と、
 たくさんダチになりたいものです。

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スリン島 モーケン人の集落

2012-03-06 21:40:35 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 スリン島には海の民、モーケン人の集落があります。

 もともと彼らは何百年にも渡って定住せず、
 カバンという家船に乗り、船の上で生活する人たちでした。
 ミャンマー、タイ、マレーシア、インドネシアに至る海域を
 国境を越えて移動し、その時々に貝やナマコ、魚などを採集して
 つつましやかに暮らしていました。

 ミャンマーのモーケン人は未だそのようなシージプシー的な暮らしをしていますが、
 タイ側の彼らはタイ政府によって半ば強制的な定住政策を施され、
 南スリン島で暮らしています。

 ぼくは北スリン、南スリンとカヤックでくまなく漕ぎまわった後、
 彼らの集落を訪れました。
 気の優しい人たちで、一人の青年の家に招かれ、コーヒーをごちそうになりました。

 定住するようになった彼らが幸福なのか不幸なのか、
 もちろんぼくにはそんなこと詮索したり言ったりする権利はありません。
 ただ、海上を小舟で移動する生活について、色々想像したりしました。

 先日の記事でも書きましたが、ここ10年ほど自分がカヤックに携わってきたことについて、色々まとめる作業をしていまして、スリン島でも10年前にシーカヤック日本一周した時の日記なども読み返していました。
 
 当時、ちょうど毎日毎日海に出てカヤックを漕ぎ、夜は海岸際でテントを張って寝るという生活をしていました。はじめは大変でしたが、だんだんそっちの方の生活に慣れてくると今度は逆に、家の中で寝るのが妙な感じで落ち着かない、というリズムに変わっていきました。テントならば薄皮一枚で外の風や海の状況がすぐに分かります。自分が一連の気象の流れの中にいることを皮膚感覚でとらえながら過ごすことができます。ところが家の中っていうのは空気が止まっているでしょう?
 それがすごく気持ち悪く感じるのでした。

 というのも、海生活してると、どっちから風が吹いてきてそれがどのように変化するか、
 波に変わった兆候が表れていないか、そいつを常に把握していないと不安になるんですよね。
 海は荒れたら危ないわけだから、未然に変化の兆候を察知しなきゃいけない。

 というと何やら苦行のように思えるかもしれませんがそうではなく、
 そっちの方が大いなる世界に属している感じがして、気持ちよかったのです。
 だからむしろ喜んでテント暮らしをしていました。

 実は今でもそんな傾向はありまして、
 風がどっから吹いてるかというのを基本的に把握しながら日々を送っています。
 (シーカヤックのガイディングの基本でもありますね)。

 都会でそれを感じないで日々を過ごしたとすると、
 自分が本当に意味のない歯車以下になった気がして、
 気持ち悪くなってくるところがあります。 

 で、きっと彼らもそういうところ、あるんじゃないかなあと思います。
 だって、ぼくよりも遥かに長時間海にいるわけですから。
 しかもメディアの天気予報なんてないわけだから。

 また元来、あまりモノを持たない人たちですが、
 それも、偉大なる海に抱かれて生きていると実感していると
 それだけで満ち足りてしまって、あまり余計なものは
 いらなくなるんじゃないかという気がしました。

 それも幸福なのか不幸なのかこちらが取りざたする権利はないですが、
 2004年のスマトラ島沖地震の際に津波が襲ったとき、
 海の兆候の変化にいち早く気づいた彼らは先に高台に上がり、
 ほとんど被害がなかったと言われています。

 要するに海のリズムとどっぷりで生きていたから、
 察知できたわけですね。
 もし中途半端な海との付き合いだったならば、
 一族もろともやられちゃってたかもしれません。

 彼らは今でも基本的に漁をしていますし、また、
 海岸線のキワキワに家を建てています。
 完全に海から離れるというのはなかなかできないだろうと思います。

 子供たちが大人になる頃、どんな状況になるのでしょうか。

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 海岸線スレスレのモーケン人の集落

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 村の女性たちは賭けごとに夢中でした。実際に現金を賭け、みんな必死な顔していました。

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 男たちはのんびりしていました。言葉がなかなか通じないのでコミュニケーションは難しかったけれど、言葉がなくとも、同じアジア人特有というかモンゴロイド特有というのか、なんかこう空気が重々しくならない感じがありましたね。

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 彼は子供のころから海で泳ぐことが最大の遊びなので、小さいころから潜るのが上手い。大人になると素潜りの達人になる。

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アイデンティティ

2012-03-06 00:30:11 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 今回のタイでもそうだったけど、
 日本にいる時には意識しないけれど海外に出ると、
 日本人であることをを意識しますね。
 というのも、必ず、
 「どこの国から来た」と聞かれますから。
 「日本から来ました」と答える時点で、
 そのことを意識することになります。

 で、日本人であるおれとは何ぞや、と、
 とりあえず考えることになりますが、
 やはり日本人であるおれとは、
 花鳥風月な国から来たネイチャーボーイであり、
 海洋民の子だというところに至りますね。

 自然を見る目とかやっぱり白人とは違うし、タイとか東南アジア人とも違う。
 またカヤックトリップのほんとのディープさも、
 おれが日本人だからこそこだわるんだろうな、って感じる部分も、
 色んな国の人見てて分かる。

 スポーツか、バカンスか、冒険か、というのが
 白人の海に接する視点で、
 食べるための魚介類を取る場所、というのが、
 東南アジア系の人たちの視点です。
 
 ぼくらはもっとこう、メンタルな多様性の部分を求めていると思います。

 ですが、そういうことも原発によって何も言えなくなってしまう悲しい現状があります。
 「1万年の歴史ある縄文の流れをくむ自然文化がぼくたちにはあります」
 と言ったとします。
 「ふーん、じゃあなんで、原発事故を起こして自然を取り返しつかなくしちゃって、そのうえまだ稼働するわけ?」
 と返されちゃうと、全く何も言えなくなってしまいます。
 
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 スリン島ではさんごが結構死んでました。3年前にアンダマン海全体で水温が上昇し、それが原因でかなりの広範囲にわたって壊滅状態になっているようです。特にエダサンゴ、テーブルサンゴ系がやられちゃっていました。

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スリン島の長期滞在者

2012-02-29 05:54:08 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 スリン島は簡素なコテージかテントサイトしかなく、だけどそれがよかった。
 あんまりワーッと観光客が殺到するわけではないので、静かに過ごしたい人には最適ですが、海以外ほんとに何もないので、ダメな人は全くダメでしょうね。まあ海はきれいなので日帰りか1,2泊ならば感動するでしょうが・・・。ぼくはカヤックで島を隈なく漕ぎ回ったり、潜ったり、またちょっと集中して考えたり書いたりすべきことがあったから10日ほどでも足りないくらいでしたが、この人一体何をやってんだろう、大丈夫か? と心配になるくらい何もせず日がな一日ハンモックに揺られている、自炊して半分住んでいるようなヨーロピアンも結構しました。

 聞くと30日とか、40日とか滞在している人も結構いました。
 しかもそういう連中は毎年のように来るらしい。
 皆、口をそろえて言うには、タイも色々周ったけれど静かで何もないこの島が一番居心地いいとのこと。
 レオナルド・ディカプリオ主演の「ザ・ビーチ」って映画にもあったけれど、「楽園志向」みたいなものなのか、ある種の西洋人は海辺で全く何もせずかなりの日数を過ごすということも苦にならないどころか、それを好んで求める心理ってのもあるのかな、と思いました。アジア系の我々にはない感覚ですね。実際、日本人はほとんどいず、11月の開島から2月現在まで、日本人は1人か2人しか来てないとレセプションのねえちゃんも言っていました。コリアンや中国人はちょこちょこいましたが2,3日で帰る人がほとんどでした。まあ、本などは長期滞在のみなさんよく読んでらっしゃいましたが、別にこう、一生懸命読んでいる風でもなく、全体として、常にボーっとしている感じでした。

 しかしそう見えるだけで実は頭の中では高速回転でいろんなことを考えているのかもしれない。実はぼくがカヤックで出かけている時に死ぬほど忙しく何かをやっているのかもしれない。まあそれはないだろうけど。ぼくはカヤックを漕いでいる時よりハンモックで揺られている時の方が脳内高速回転状態だったのですが、日本人はそういう内面がどこか表に出てしまいますね。皆さんとは違ってぼくのハンモックの揺られ方ってのはどうもソワソワした感じでまだまだ修行が足りないなあ、ハンモック道ってのも奥が深いなあ、と思っていました。集中しすぎたり、入り込んで考え過ぎたりするとだんだん「オエー」ってなってきたりしたのでそういうときはそこらにいるテントサイトの誰かを捕まえて世間話などをしました。
 
 実にいろんな国籍の人たちがいましたが、イタリア人とドイツ人とフランス人が多かったですね。意外とスウェーデンとか北欧の人が少なかったけれどいるにはいた。イスラエル人、イギリス人、ニュージーランド人、オランダ人、インド人、ハンガリー人、タイ人、コリアン、それから地球の裏側、アルゼンチンから旅してきてる学生もいました。そのうちだんだんめんどくさくなってきてどこの国の人か聞かずしゃべっていました。素性がよくわからんかったりするがよく聞くと学校の先生だったり、あるいは本当に何者なのか分からない人もいて、面白かったです。ヨーロピアンは堅気でも、1~2カ月くらいのホリデーは普通のようですね。日本もそうなればいいのに、ならないのは、実は貧しい国だからなのかもしれないなと思うことがあります。

 やはり個人主義が発達しているヨーロピアン。フレンドリーでありつつもあまり人の領域に立ち入ってはこない傾向にある。ある種のアジア系の人は、特に大阪のオッサンなどは初対面でいきなりずけずけと本音で迫ってくるノリもあったりしますが、彼らにそういう習慣はないのだろう。加えて、日常から離れてバカンスに来ているからか(ほとんど日常になってる連中も多いが)、極力当たり障りのないように話を持っていく感じがするなという気がしました。
 と感じたのはやはり、こちらが日本人と見るとどうしても東北の津波や福島の原発事故の話になったりするんだけど、大丈夫か? という程度で話がとどまってそこからは突っ込んでこないことからでした。それはこちらがそんなに英語がうまくないから話が発展しないんだとかそういうことではなく、やはり気遣いを感じるのでした。あまりへヴィーなところには触れないでおこう、というような。

 で、そういう気遣いは心地よい半面、アジア人にとってはドライに思えるのも確かで、なんかこう、もうちょい湿り気があってもいいかなという感覚でしたが、その中でイタリア人だけはちょっと違うなという感じがしました。原発の話をしていて、事故後も原発賛成派の人もまだまだ多い、日本は地震の活動期に入り地震の巣のような真上に原発が稼働していたりもするが、脱原発の動きはそんなに大きなうねりにもなっていない、というような話をすると、マウリシオというイタリア人は、「何やってんだ、革命起こせよ革命!!」と唾を飛ばして繰り返しました。
 以後彼はぼくを見るたびにこぶしを握って「革命!!」と言ってくるのでした。
 こういうノリは嫌いではなかったです。


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スピードボートでスリン島へ

2012-02-28 09:07:03 | タイ南部カヤックトリップ
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 アンダマン海の俯瞰図。

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 この真ん中らへんがスリン島。その上のクリスティー島ってのはミャンマー。

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 北島と南島に分かれるスリン島。さらに小さな離島も衛星のようにある。

 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 スリン諸島にはクラブリ港を出てスピードボートで2時間ほどで着きました。
 ちょうどタイ本土から50キロほどの距離で、それより沖、つまり西に行くと数年前に行ったアンダマン・ニコバル諸島までひたすら海、海、海です。一方南に行くとダイビングで人気のあるシミラン諸島があり、さらにプーケットやクラビ沖の島々、トラン沖の島々、マレーシア国境と続いてゆきます。一方すぐ北が国境で、水平線から見えてる30キロほど沖合の隣島は、ミャンマーとなります。
 
 このアンダマン海エリアは、何より多島海が特徴的なんですね。
 中でも恐ろしいほどの数の島だらけのミャンマー沿岸部は、
 「メルギー諸島」と呼ばれています。
 軍事政権下、外国人の渡航がほぼ閉ざされていることも相まって、
 東南アジア最後の秘境エリアと言われるゾーンです。
 しかしミャンマーは徐々に開放に向かっています。
 いずれメルギー諸島も門戸が開かれることでしょう。
 その時にはぜひカヤックトリップしたいと思っています。

 一方タイ側は完全に開かれていて、10年20年前は未開の地だった島々も、
 ヨーロピアンの旅人が入っていき、徐々に観光化されていきました。
 そうなると少しずつ俗化してムードが崩れるので、
 さらに別の島、別の島へと好事家たちの触手が伸びてゆきます。
 それにつれてどこも秘境ムードはなくなり、
 もうタイには観光の手アカのついていない島はないと言われています。

 海辺っていうのは歴史などを売りにするわけではなく、
 自然がボーンとあるだけなので、エコ思想とか何かちゃんとしたコンセプトがないと
 変にレジャーとかリゾートの側面のみが強調され、
 だんだんダサくなっていく傾向があります。
 特にタイの場合、屋台などが自然発生的に猥雑に集まる分にはいいけれど、
 逆にそれが海辺の開発ってことになると、どうも取りとめがなくなってしまう。
 で、次の島、次の島~、となっていくわけですね。
 ミャンマーのメルギー諸島はそうならなければよいが、と思います。
 都会は猥雑が面白いけれど、自然はもっと思想性のようなものを持ちつつ
 センスよく共生するってのが大事なんだと思いますね。
  
 でもまあ多くの島はプーケットやサムイ島などを除いてガンガン開発されているわけでもなく、
 ちょっと調べればそれなりにのんびりした南国ムードが漂う島もいっぱいあって、
 またカヤックを漕ぎ出せば観光のにおいの全くしない場所にも
 漕ぎだせるわけで、普通に楽しむ分には問題ない。
 基本的にぼくはこの、独特のとろみを帯びたエメラルド色の海水と、
 次々と展開される島々のシルエットが美しいこの海域が好きなのです。
 
 そしてここスリン諸島は国立公園として保護されていて、
 簡素なコテージかテントでしか宿泊することはできません。
 大きく北島と南島のふたつに分かれていて、
 それぞれ外周15~20キロほどになります。
 北島には深い入り江があって、カヤック探索するのに面白い島でした。
 一方南島には海洋漂泊民「モーケン人」の集落があって、
 そこを訪れたりしました。
 さらに離れた小さな小島などにも漕ぎまわったりしました。

 で、北島の方にテントサイトがあって、そばに併設された簡素なレストランがあるんですが
 結局スリン島には結局10日くらいいましたね。
 あちこち移動しつつ漕ぎまわり見て回る派のぼくにとっては、
 かなり一カ所に長居した部類に入ります。

 実は今回、カヤックを始めてアイランドストリームを起こしたり色々旅したことや考えたり勉強してきたことが何年も経っていい感じで熟してきたので形としてまとめ上げたいと思っていまして、その意味で島ごもりしたということもあります。ひとつ区切りをつけて次に進みたいという段階なんですね。朝夕はカヤックを漕ぎシュノーケリングし、昼間はハンモックに揺られながら書き物など、夜は同じくキャンプ泊しているいろんな国からの旅人と雑談、という感じで過ごしていました。
 長すぎる滞在にはさすがに飽きますが、そこそこ滞在するにはいい島です。
 何より雰囲気、居心地がとてもよい島でした。

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 島の西側、外洋側は断崖や岩がごつごつしていて、なかなか荒々しかった。干満の具合によって、結構早い潮流や潮波もでていました。荒れたらやばいフィールドでしょうね。

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 一方島の本土側には隠れた美しいビーチが無数にある。

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 あまり標高が高くない島で2004年末にはインドネシア・スマトラ島地震の影響で津波も来た。幸い大きな被害はなかった模様だが、何千年単位でみると島を飲み込むようなやつも来てたんだろう。

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 奥へ奥へとパドルを進めたくなるいい入江がある。

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 北島と南島の間の水路。重なった島の見え方がいい感じ。


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フリーダム

2012-02-28 03:39:31 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 知ってる人には言うまでもないことですがバンコクには「カオサンロード」という世界中の旅人が集まる界隈があります。周辺にはゲストハウス、旅行会社、レストラン、バー、雑貨屋、土産物屋、マッサージ店、屋台などがぎゅうぎゅうにひしめき、24時間360日賑やかです。いつもタイに入るとまずここに来て長距離バスなどのチケットを手配して一泊するのですが、ぼくは夜ちょっと外れの道端のバーでビールを飲みながら道ゆく人たちを観察するのがとても好きです。

 でかいザックを背負って意気揚々と歩く白人のねえちゃん。はげかかってくたびれた感じの白人のおっさんとやたらボディコンの服を着てパッツンパッツンの体を強調したタイ人ギャルのあやしいカップル。7,8人くらいのグループで土産物屋をはしごしてワイワイ言いながら物色しているコリアンやチャイニーズ。海外ではなまっちろい感じがより一層際立つ日本の学生グループ。ごついタイ人のオカマ。妙になれなれしく体にタッチしてくる60前後の隣りのバーの呼び込みのおばちゃん。アジアの熱気に疲れて神経を半分やられちゃったような危ない顔をしてブツブツ独り言をいってるメガネのドイツ系白人。50代にもなってゴムでできたネズミやヘビやクモやサソリを道端に置き、通りがかった人の驚いた表情を見て腹を抱えて大笑いするおっさん。やたら上手いがうらぶれたヒッピーって感じの汚い髭もじゃの白人ブルースギタリスト。ごくたまに混じるアフリカ系黒人と、次から次へと湧いて出るように現れる白人の大群・・・。

 まあカオサンロードあたりは半日も居たら飽きるし歩くととても疲れちゃうエリアですが、腰かける場所というか、露天で飲むときのちょっとした座る角度によって、すごく超都市感とひなびた片田舎感が絶妙に混じり合う空気感が形成されて、面白いです。こちらが歩くのではなく、向こうから歩いてくる人を低い目線から眺めるのが、味わい深いのです。

 で、今回もカオサンで一泊した後、スリン諸島に向かいました。まず夜行バスで10時間ほど走ってラノーンというミャンマーの国境の町に行き、そこでさらに早朝別のバスに乗り換えてクラブリという田舎町に着きました。全くぱっとしないイナカですが、夜になると屋台やマーケットがたくさん出て(写真上)、それなりに居心地のよいところです。タイの屋台とか、なんかこうテキトーな感じがしてかつバイタリティがあって、大好きですね。日本にも屋台村とかがありますが、あんなのほんとに管理されたフードコートみたいな感じで全然面白くない。屋台は、自然発生的で雑然としたええかげんな感じこそ、いいんです。
 日本でも規制なければ、それこそニートの連中とか主婦の人とかが屋台やれば、お客付けばそこそこ食っていけるわけだし、失業対策にもなるし社交場が生まれるし経済も回るし、やりゃあいいのになあといつも思います。
 まあ衛生上および道路交通法の関係でできないんだろうけれど、日本はあまりにがんじがらめで窮屈になりすぎている。多分社会全体がカッチリしすぎて閉塞感にうんざりするから、若者は引きこもっちゃうんだろう。

 この町に「Tom & Am Tours」というトラベルエージェントがあって、今回そこでスリン諸島へのボートチケットをアレンジしてもらいました。テントやシュノーケルセットの貸し出しもあるけれどその辺は全部持ってきているのでチケットだけお願いしました。往復で1600バーツ(¥3700くらいか)、オープンチケットで帰路日時はいつでも前日に決めればOKというのがいい。彼らは10年前にゼロから店を始めたというご夫婦で、すごく親切で親しみやすかったです。以前無一文の日本人が来て、1ヶ月ほど泊めてやっていたということもあったそうです。スリン諸島が開かれている乾季(11月~5月)に毎日働き、その他のシーズンはちょこちょこ働き、1ヶ月ほどは全く働かずドイツで休暇を過ごすらしい。自分のカヤックを持ってきたんだというと、「いいね、スリンはカヤックにも向いてる。フリーダムを感じることができるよ」とTom。
 タイ人というか日本人を含むアジア人がなかなか使わない「フリーダム」という言葉をなにげに使うあたり、世界中からいろんな人がたくさん来るんだろうな、と思ったのだった。
 フリーダム、いいよな。

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カヤックトリップする理由 遊びと人間

2012-02-28 01:28:06 | タイ南部カヤックトリップ
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 (タイ南部カヤックトリップの続き記事です)。

 タイのカヤックトリップから帰ってきました。
 海外から帰ってきていつも真っ先に感じるのは、日本って清潔で整然とした国だなってことですが、特にタイのような東南アジア特有の渦巻くような猥雑、乱雑なエネルギーを感じた後、すごく落差を覚えます。
 いやに静かな国だな、と。
 
 タイにはバンコクから入り南部のアンダマン海沿岸を旅し、再びバンコクに戻って帰ってきたわけですが、まず日本はこの一カ月足らずでだいぶ春の香りのする空気に変わった気がしました。そして風の中を貫く、肌に染みいるような、空気の清冽さ。これは熱帯独特の肌にまとわりつくようなねっとりした空気を味わった後にこそ強く感じる爽やかな透明感なのですが、このなじみの感覚はやはり好きですね。空気の透明感によって、自然のフィーリングを味わうアウトドアアクティヴティにおいても、より深み、奥行きあるものになるんだろうなと思います。特に見た目の絵葉書的美しさだけじゃなく、感性に訴えかける世界においてね。

 渦巻くような都会のエネルギーという意味においては、管理主義や閉塞性が強まり年々活力がなくなっている日本よりタイやベトナムなど東南アジア諸国の方が遥かに面白いですが、逆にアウトドアをディープに楽しむフィールドと考えるならば日本の方がぜんぜん面白いと思います。中緯度に位置し、四季が顕著で、黒潮エッセンスの影響を受けた照葉樹林文化。日本の山、海、川のよさ、空気の清冽さ、透明感、奥行きの深さ。自然文化の歴史の深さ。これも外から見ないとなかなか見えづらいことなのですが、大事にしなきゃだめだと思いますね。
 逆に言うと日本に住むなら都市ライフより断然アウトドアライフに限ると思います。
 またここにこれからの日本の可能性も宿っていると思います。

 と言っても世界は広く、特にカヤックのような自然に対してムキ出しの敏感な乗り物に乗って旅すると、世界はもっともっと広いものだと改めて思い知ることができます。だから世界を旅するのです。縦軸と横軸みたいなもので、ホーム(日本)で自然観をぐっと深めていき(縦軸)、そしてアウェイ(海外)で広げてゆく(横軸)という捉え方。ぼくはカヤックでメシを食っているけれどあえて誤解を恐れず究極的に言うと、別にカヤックそのものにそれほど興味を持っているわけではない。カヤックに乗って見えてくる感性の世界に対して興味を持っているわけです。
 カヤックを通して繋がる本物の海世界、自然の世界。
 というかそこに最もダイレクトに繋がるツールだからこそ、カヤックにこだわっているのです。 
 だからこそ国内外カヤックトリップをするわけですね。
 もし匹敵するくらい深いものがあるならば、別にシーカヤックじゃなくてもよいと思っています。

 ブログにしてはちょっと濃い、マジメな話になっちゃっいますが、自分が生まれ、死んでいく間に、日常の生活とは別に、世界の本質とは何か、自然とは何か、宇宙とは何か、っていうような本質的な事と己自身とがどこまで深くかかわれるかってことによって、人生の価値も深みを増してくるだろうと思います。
 そういうものを「コスモロジー」と言います。
 で、自分自身のコスモロジーを追求してゆくことこそが、本当の豊かさだと思います。
 特に何でもかんでもカネカネ主義というか、経済効率第一主義の今の世の中でそんなもの追求すべくもないし下手すりゃ新興宗教行きとなってしまいますが、そのどちらにも吸収されることなく絶妙のバランスを取れるのが自然の遊び、海の遊びってやつなんだと思います。

 今の時代、そういう遊びを絶対持っておいた方がいいと思います。
 パチンコとかビンボーくさいものじゃなく、己の存在と戯れる本物の遊びね。
 そしてぼくは、消費文化が行きつくしたこれからは、ある程度の部分、遊びで経済を回していけばいいと思っています。
 永遠の右肩上がりを志向する資本主義経済なんて、とどのつまりゲームなのだから。
 どうせなら「人間性の味方」を志向するゲームをしたいものです。


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トリップの途上

2012-02-17 12:27:43 | タイ南部カヤックトリップ
こんにちは。
ぼくは今、タイにカヤックトリップに来ております。
先日までミャンマー国境近くのスリン諸島に滞在し、
現在、弊社でもツアーを行うクラビーという町にいます。
これからさらにトランという地に南下し、その沖に
ある多島海をリサーチします。

スリン諸島には「モーケン人」という、海洋漂泊民も住んでいまして、
彼らの村をカヤックで訪れたりしました。なおスリン諸島の北のミャンマーの海岸には
さらに「メルギー諸島」という何万もの小島が点在する美しい多島海が広がって
おり、多数のシージプシーが暮らしていたりして非常に興味深いのですが、
今はまだ外国人の渡航が禁止されています。

しかしミャンマーは年々開放に向かっています。
やがてメルギー諸島も渡航がオープン化されるでしょう。
フォールディング(折りたたみ)カヤックを持ってあちこちこぎまわる
カヤックトリップとは、多島海にこそ向いている旅のスタイルです。
開放後全く観光ズレしていない新鮮な旅ができるであろうミャンマー。
その動向はしばらく目が離せないところです。
一方タイは非常に旅しやすい国で、世界中の旅人の目にさらされた観光、
ツーリズムはある意味、日本よりも進んでいます。
月末に帰国しますが残りの日々、有意義なリサーチをしたいとおもいます。


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