東京医大被害者遺族ネット

東京医科大学病院で医療被害を受けた患者・遺族の情報交換と相互理解を目的とする任意団体です

医療版事故調・検討部会を傍聴して(一被害者の立場から)

2013-06-11 10:41:20 | 寄稿
[emoji:e-23]自己紹介
私は東京医大の被害者ではありませんが、民間医療法人で夫を医療事故で亡くしました。1998年の事故ですが、院内調査に納得できず、裁判まで経験しました。

事故調推進の署名活動(患医連・事故調フォーラム)は6月30日で50回になりますが、私はこの活動に殆ど参加してきました。
暑い日、寒い日、雨の日・・いろいろありましたが、今も駅前に立って活動を続けています。医療事故の不条理を初めて経験し、多くの人に関心を持って欲しいからです。

そして、医療版事故調関連のシンポジウムにも参加し、2012年に始まった医療事故調査制度を検討する厚労省の有識者会議の傍聴も、5月29日の13回終了まで出来る限り足を運びました。そしていよいよ検討部会の基本案がまとまり、秋の臨時国会に医療法改正に合わせて提案されることになりました。

一被害者として、一歩踏み出してやっとスタートラインに立ったという思いです。

[emoji:e-23]事故調への期待と不安
何よりも「逃げる、隠す、ごまかす」の無い医療界であって欲しいものですが、今回「第三者調査機関」設立が早まる事への期待と同時に危惧するものも感じています。

どんな医師でも間違いは起こします。被害者は納得いく説明を求めています。裁判はお金での解決でした。裁判で私の主張は必ずしも通りませんでした。私は今でも提出した鑑定書意見が正しいと信じています。
真実は一つのはずです。事故は何時起こるか分かりません。患者も医療者も共に被害者なのです。真相究明されれば相互理解が深まり、大きな溝や不信感は減っていくのではないでしょうか。
全く当たり前と思うことが医療界では当たり前ではないのです。それは組織を守ろうとする壁にあります。

検討部会を傍聴して感じるのは、医療界の透明化に抵抗している姿が見え隠れしていることでした。多くの委員が自分の立場だけで考えていることです。被害者の思いが分からない検討委員ばかりで、被害者団体の委員が16人中1人しかいないことがとても残念でした。

一つ救われたのは第三者機関に被害者側からも調査を要請できるようになったことです。しかし、ここで問題なのは費用です。金銭的に苦しい被害者は裁判が出来ず泣き寝入りするしかありません。費用は誰でも出せる費用に抑えることが必要です。

基本案は先ず院内調査からという事ですが、透明性、公平性をはかる為にも第三者参加が必要なのは当然です。知っているのは当事者です。ここを透明化しなければ意味がありません。
私の場合、カルテなどを証拠保全してみると改ざんされていました。これが現実です。病院側に事実を開示する体制が浸透すれば被害者の不信感は減るのです。裁判で究明しようとしても嘘を通されるとなかなか真相が分からず、費用だけが掛かるのです。

[emoji:e-23]事故調機関の構成員
事実を開示すれば解剖などせずにAIだけで分かるかもしれない。100%とは行かなくても医療当事者なら一番知っているはずです。
私が危惧するのは第三者の調査員です。院内調査でもそうですが、第三者機関の構成員をどのように選出するかが問題です。医療界でつながりのある人が選出されれば、かばい合う心理がはたらきます。

被害者には真相を知る方法がありませんでした。どのくらい医療事故が起きているかも把握されていません。透明化されたデータも無いのですから医療安全にはつながりません。
確かにクレーマーもいるでしょう。でも大切なのは真相が解明された事故から学び、医療安全を求める姿勢です。中立が保証される組織作りをして欲しいと思います。

厚労省は年間事故件数を1300~2000件と試算していますが、そんなものではないと思います。泣き寝入りが多い中で、訴訟だけでも年に約800件あるのです。
被害者は同じ事故を起してほしくない、と望んでいます。
真相究明の第一歩が開けたのですから、しっかりした骨組みを作って欲しいと国に希望します。 (非会員、首都圏在住・女性)