わが家の無機物の多くは生きていて、よくしゃべる。ま、ハハのいるとき限定ですが…。特に朝、子どもたちが起きてから出かけるまでのあいだにとてもよくしゃべる(というかしゃべらされる)のは、置き時計のとけいくんだ。リビングに降りると、寝起きの子どもたちが「とけいくんは!?」と彼を呼びつける。
とけいくん「おはよー、**ちゃん、**ちゃん。あれぇ、なんでー?まだ着替えてないのぉ?」
10歳女児「だって起きたばっかりなんだもん」
とけいくん「そんなこと言ってると学校に遅刻しちゃうよ!早く着替えなよー。」
8歳男児「とけいくんは着替えないの?」
とけいくん「とけいくんは時計だから着替えないよ…」
10歳女児「アラーム鳴らしちゃおーっと」
とけいくん「わぁ、やめてよ!背中さわらないでよー。ああっ!」
バタッと倒れてしまう(というかハハが誤って倒してしまった)とけいくん。起き上がりながら(というかハハが立て直しながら)
とけいくん「ちょっとちょっとぉ~ここの家の人は乱暴だなー。っていうか**ちゃんと**ちゃん、早く着替えなよ!」
10歳&8歳「ふあーい…」
まったく、小5と小3の人間二人を着替えさせるだけでも、ハハととけいくんのふたりがかり(実質ひとり)で毎朝タイヘンな騒ぎ。親の仕事っていろいろあるなあ…。すったもんだの末、8時すぎにようやくふたりが玄関を出て行くと、とけいくんはホッとしたように棚の上に戻って(というかハハに戻されて)、次の朝までの時間を静かに過ごしている。
ちなみにこのとけいくんにはゆりかごのような形をした振り子がついているのだけれど、それはずいぶん前から右に振り切ったままで止まっている。でも、ただの飾りだったのか、とけいくんの時計としての機能には何の支障もないようだ。自分にとって絶対必要だと思いこんでいるものが意外にそうでもなかったりする、ということを、身をもって教えてくれているとけいくんなのである。