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五重塔は仏教美術の粋をきわめたものである。 

2020-05-08 16:49:08 | 日本の美

日本の美の一つとして表現されているのが「五重塔」である。ご存じのように、奈良の法隆寺、室生寺、興福寺、そして京都の東寺、醍醐寺の五重塔は国宝に指定されている。ちなみに法隆寺や東寺、醍醐寺は世界遺産である。

その中で、よく訪ねるのが東寺で、行けば必ず五重塔にすり寄っていく。通常は内部を見ることはできないが、季節の特別拝観のときに石段をあがり四方の扉から順番に見せていただくことがある。なんと不思議な世界観をもつ建造物であることは言うまでもない。

五重塔を含む多重塔は、多宝塔とはちがう宗教観のある建物と考えられているようだ。石造仏塔と同じように、下から「地」(基礎)、「水」(塔身)、「火」(笠)、「風」(請花)、「空」(宝珠)からなっている。それぞれ五つの世界、つまり五大思想を示し、仏教的な宇宙観を表しているといわれている。

塔の全体が、仏教思想を表現している建物になるのだろう。あの器に思想の全てが網羅されているといっても過言ではないだろう。形状や内部構造、そして納められている全てのもの一つ一つが仏教思想的役割を果たしていると言えるのだろう。

たとえば、京都 東寺の五重塔は、各層を貫いている心柱(しんばしら)は、大日如来としての役割をもっている。その周りを四尊の如来(阿閦如来・室生如来・阿弥陀如来・不空成就如来)の如来、八尊の菩薩が囲んでいる。さらに、四方の柱に金剛界曼荼羅が描かれている。心柱はすべてにおいて中心的役割を果たす、塔の心臓部と脊髄部となるのである。

心柱は、地下に埋めこみ上に伸びているもの。地上の基礎部に置いてあるのもあり、また上層部からつり下げ地上には接してない心柱も多い。法隆寺の五重塔は地面に埋設された堀立式、薬師寺東塔は礎石の上に立てる礎石式。東寺は懸垂式といわれ、塔から心柱を鎖でつないで宙吊りになっている。それぞれ違いには諸説あるようだ。

五重塔は、地震の力を柔軟な構造を用いて吸収することにより、建築物の破壊を防ぐ柔構造が用いられている。それは心柱が地震の力を吸収し、また階層の庇が大きく瓦などの重みが、地震の力を下に逃がしていく仕組みになっている。初層にはその力を吸収しても耐えられる心柱を囲む4本の柱が支えている。

千年前にこれだけの優れた建築技法が生み出され駆使されていたことを想像すると、歴史に対する見方が変わってくる。その中から美意識が生まれ「日本の美」の礎になっているように思える。機能と形状が一体となって美観が生み出されている。つまり、構造と形、そしてその周辺の景観を含む、日本の伝統造形は仏教思想を忠実に表しているといえるだろう。


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