「勘竹庵」evnc_chckの音楽やそれ以外

音楽の話題が中心になるかもしれませんが日々の雑感など書いていけたらと思っています。

恐竜コミックの傑作「臥竜 化石の記憶」

2008-08-24 00:31:31 | 古生物
「岸大武朗」の「恐竜大紀行」は恐竜をテーマにした早すぎた名作と言われていますが、私がもう一つ傑作と思う作品が「森秀樹」の「臥竜 化石の記憶」です。

森秀樹さんを私は良くは存じ上げないのですが「子連れ狼」などを描かれている、所謂「劇画」の世界の方らしく、なるほど確かに「臥竜 化石の記憶」は素人目にもきちっとした筆致でいてどことなく日本的な情念と柔らかさが感じられる絵です。
内容は「化石の記憶」の副題のとおり恐竜の化石の産状をモティーフに、そこに至ったかもしれないエピソードを作者の想像から描いたもので、有名な産状の化石がいくつか出てくるので知ってる人間には堪らないおもしろさです。
例えば

・ステゴサウルスの背中の板がバラバラで発掘されるのは何故か?
(そのせいでこの背中の板の復元は諸説があるんですが)
・モンゴルで発見されたオビラプトルが卵泥棒と呼ばれるのは?
(最近では自分の卵を守っていたというのが主流ですが・・・でもやはりオビラプトルは卵泥棒であって欲しいですね)
・モンゴルで発見されたプロトケラトプスとヴェロキラプトルの格闘化石(通称モンゴリアン・ファイトですね)の背景
(これは泣けます!化石のレプリカは福井県立恐竜博物館のHPでご確認を)

などなど。それが迫力と柔らかさを兼ね備えた画力で表現されて飽きさせません。もっと評価されてもいいと思うのですがネットで検索してもヒットすらなかなかしないという扱いです。

ただし江戸時代だかに日本人の坊やが中国に恐竜(物語の中では龍と呼ばれてますが)の骨を探しに行くエピソードは、ラストシーンで「だから何?」と思ってしまう少し評価に困る作品です。ほぼ完璧に関節したタルボサウルスの化石がむき出しになっている産状も、映画「ジュラシック・パーク」の冒頭の化石発掘現場を思わせる大笑いぶりです。余談ですが「マイアサウラ」の子育て説で有名なジャック・ホーナーがアドバイザーを努めた映画「ジュラシック・パーク」は、古生物学者を集めてプレミア試写会をしたそうですが、その冒頭でサム・ニール扮する古生物学者が作業中の発掘現場の場面で、レリーフのような化石の産状が画面に現れたとたんに会場から爆笑が起こったそうです(笑。

恐竜が好き!と言う方は是非、一度お読みいただくといいかも。古本でなら入手は比較的楽では無いかと思います。多分・・・。