感染症疫学の風

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O157食中毒事例 in 札幌

2012年08月16日 | 感染症情報
「札幌でO157が集団で発生している、どうやら食中毒らしい。」
そんなニュースがメディアで流れたのは8月13日でした。そして、昨日、14日には原因食材が特定されたと札幌保健所のホームページで情報が公開されました。

公開された資料では、8月7日(火)に老健施設で下痢症を訴える入所者が探知された、とあります。複数の施設から同様の報告が相次ぎ、保健所が調査を行い、「はくさい浅漬け」が原因食材と特定されました。
札幌保健所が公開した情報はこちらです。(PDFファイル)

「おかしい」と最初に気づくのは、医療現場で働く医師や医療者です。今回の事例においても、札幌で診療をしている医師たちが「下痢症例の異常な集積」を感じ、保健所に直接相談されていました。その一人は米国で疫学を学んだ医師でした。患者さんに一番近い所にいる医師が、「保健所に相談してみよう。」と行動を取る、このセンス。医療と公衆衛生のGood Job と感じました。

札幌では、保健所が中心となって、発症者への「喫食調査」や関連する人や施設への「聞き取り調査」、食材の納入先をたどっての「さかのぼり調査」、採取された検体のタイピングによる「分子疫学」をふくむ「疫学調査」が行われていると思います。

しかし、さらに、「広域事例」となる可能性があります。
7月末から8月のこの時期、全国から北海道に旅行や仕事で人が訪れています。この食中毒事例は、汚染された共通食材を通じて、全国に拡がっている可能性があります。
こうなると、地元の医師やそれぞれの地域の保健所単独では事例をつなぎ合わせることが難しくなります。

しかし!です。ここでも、現場最前線の医師がキーパーソンになります。

O157を含む腸管出血性大腸菌感染症は、感染症法では3類感染症に該当し、「直ちに保健所に届け出る」こととなっています。

この届け出を記載する際に、備考欄に患者さんから聞き取った情報が、保健所に集まり、さらに、国立感染症研究所に集まることで、感染源の重なりやその可能性が浮かび上がってくるのです。
ぜひ、下痢症状を訴え、O157が検出された患者さんに「いつもの通りの聞き取り」をされたときには、発生動向調査の報告書にも情報提供をお願いします。

気になるのは、8月6日発症、O157検出され、その後11日に死亡した4歳の女の子です。メディア情報では、ご家族に発症者はおられないとのことで、感染源が気になります。

15日の情報では、「同保健所と道保健福祉部によると、漬物が出荷され、O157の患者が確認された9施設と他の1施設を合わせた計10施設で、14日正午までに下痢や腹痛などの症状を訴えたのは計102人(入院77人)に上る。」とあります。

メディア情報は、8月15日読売新聞にわかりやすくまとめられていました。


8月14日公表による事例のまとめ
患者数55名(男性7名、女性48名:72歳~101歳)
7月28日 感染源と考えられる「白はくさい浅漬け」漬け込み(最長賞味期限8月3日)
8月1日 複数の老健施設で「はくさい浅漬け」提供
8月4日 老健施設で初発
8月7日 札幌市内の5つの老健で、下痢・血便を発症している入所者がいる、と保健所に報告がはいった
8月11日 老健入所者がO157感染症発症後1名死亡。
8月12日 老健入所者がO157感染症発症後1名死亡。




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