JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「殺人狂時代」

2008-03-12 | 映画(DVD)
痛快娯楽作品で面白い映画を作る岡本喜八監督の作品はもっと観たいところだけれど、今回ラピュタ阿佐ヶ谷の特集「喜八魂」では、この「殺人狂時代」のみの鑑賞に留まりました。

「殺人狂時代」1967年 東宝 監督:岡本喜八

犯罪心理学の大学講師 ・桔梗信治(仲代達矢)はある日、「大日本人口調節審議会」の男にいきなり命を狙われる。人口調節のために無駄と判断した人間を秘密裡に殺すことを目的とした審議会会長は精神病院の院長・溝呂木省吾。彼は殺人哲学を持ち、入院患者たちを殺人狂の殺し屋にしていた。桔梗信治はこそ泥のビル(砂塚秀夫)とルポライター鶴巻啓子(団令子)とともに審議会と対決することに・・・

これはずいぶん昔、レンタルビデオで借りて見て一気にお気に入り映画上位にランクインした物、劇場では初、久し振りの鑑賞。
細かいところはほとんど忘れてしまっていたので思い出しながら観て・・・。
ビデオで観た時ほどの衝撃は少なかったものの、やっぱり面白い。

いきなりきちがい病院の患者のシーンから。この病院がやけに光の白く、美しい建築様式になっていて妙にSFチック。

この精神病院とか、桔梗のオンボロ車が走る街とか、監督が狙った世界感は魅力一杯。富士山麓のシーンもセンスが良くて・・・
桔梗信治は牛乳瓶底の眼鏡、水虫、とうだつの上がらない大学教授だが、密かにスパイ顔負けの武器を作成、飄々と殺人鬼をかわして行く。途中から無精髭を剃り、二枚目仲代達也になる。いつもの、ちょっとクサイとも言われる仲代達也の演技が役にピタリと嵌っている感じ。
ピタリと言えば、やはりここでの天本英世でしょう。溝呂木だなんて、最近ではウルトラマンネクサスを思い出すけど、そうか、この狂気は受け継がれていたのかもしれない。
車窓のヒットラー画像をバックに生い立ちを語る横顔のシーンが印象的。勿論、精神病院でのスペイン式の決闘もカッコ良い。
天本英世の代表作、実はこの作品だったのです。



謎のルポライター団令子も可愛い。仲代、団といえば先日の「野獣死すべし」で共演があったが、まるで別人のよう。「野獣死すべし」はちょっと丸すぎでした。なんて思って観ていると、ラスト、仲代達也の胸に抱かれ息絶えるシーンではブサイク光線を放ちまくっていて安心・・・

注ぎ込まれる殺人者達も秀逸で、片目の和装女は「肉体の門」の富永美沙子。ついでにもう一人、江原達怡の殺し屋っていうのも意外で良かった。鞭ビュンビュンで切り裂いて行く。

自衛隊に扮する審議会の殺し屋の皆さん(二瓶正也他)それぞれ暗号名がオバQ、アトム、ソラン、パピィ。これなどは公開当時見ていた大人たちより、当時テレビマンガに夢中になっていた我々世代が現在見たほうが郷愁があって趣深いよ、きっと。

脚本もスラプスティクで、この原作、都築道夫の「なめくじに聞いてみろ」ってどなん?と興味が湧いちゃうのです。
とにかく、後半ドンデン返しの連続。次から次へと桔梗信治が明晰な頭脳でネタを明かして行く。
ドンデン返しもそこまでやるかという感じで、落ちは砂塚秀夫の一言!(落ちてないし!冗談言っちゃいけねぇ)

肉を裁く光景越しのカットやら、繋ぎの巧妙さなど、映像的魅力も一杯の作品です。

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