JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「死ぬにはまだ早い」

2008-03-09 | 映画(DVD)
シネマヴェーラにて「100発100中」に続き・・・

「死ぬにはまだ早い」1969年 東宝 監督:西村潔

秘密の情事が終った元レーサーと元ファッションモデル。凶悪犯罪があったらしい検問を抜け山小屋風のドライブ・インに入った。店内にはマスターの他、七人の男女がくつろいでいた。そこへ薄汚れたジャンパーにGパン姿の若い男が飛込んで来た。拳銃立て篭もり事件に巻き込まれ・・・

ウルトラQでもお馴染みの田村奈巳も出ているので楽しみにしていたが・・・
いや、これは意外なほど面白かった。メッケもんでした。
やはり、西村潔という人は上手い。特にオープニングからワクワクさせられる上手さが際立ちます。
無音の情事(高橋幸治と緑魔子)と爆音轟くレーシング・カーのシーンを交互に見せ、音楽も無いままタイトル「死ぬにはまだ早い」・・・

しかも、レーシング・シーンなんて高橋幸治が元有名なレーサーであったという回想シーンなんだけど、その後のストーリーにあまり関係は無い。高橋幸治が元レーサーじゃなくてもぜんぜん構わない。
この映画のための音楽は一切無し。しかし、劇中、車の8トラック・カーステレオからの越路吹雪。ドライブインで立て篭もり男(黒沢年男)がかけるジュークボクスの曲などの選曲がとても良い。
高橋幸治と緑魔子がドライブ・インに入店した時かかっていた曲に聴き覚えあり・・・
うわッ、これ「巨人の星」の立花ルミ等「オーロラ3人娘」が歌っていた曲やないの。元歌がゴールデン・カップスであったとは今の今まで知りませんでした(恥)オーロラ3人娘のオリジナルだと思っていました。

音楽だけではありません、ドライブ・インで点けているテレビの音。ラジオの如くしゃべりまくる金原亭馬の助。このTV音がまたまた緊張感を高める。

高橋幸治と緑魔子の会話もクール、2人の関係が会話一つでいろいろ想像できる。

森進一の「花と蝶」の間奏に交わす「本当に彼女を殺してきたのかしら」「まさか、嘘は言わないだろう」みたいな会話とかが好きでしたね。
緑魔子、いつもとっても魅力的・・・

高橋幸治の元レーサーは憎いほど落ち着いていて、殺された警官の目を伏せて、合掌させ、ハンカチを掛けてやったり、急病人を助けようと警察に電話し包囲を解かせたり、事件解決となったらすかさず半裸の恋人に上着を掛けてやったり、もう徹底的にカッコよすぎるのでした。

対する、黒沢年男は立て篭もり凶悪犯とはいえ、若さ故の大甘で困ってしまうくらい。「俺は死刑だー」と叫び、「もう何人殺しても同じだ!」としながらも警官以外には引き金を引けない。だから、最後には恐怖を感じていた緑魔子にまでなめられてしまう。ど素人なんですね。店の片隅で見るとわなく見ている本物からすれば滑稽でしたでしょう・・・

立て篭もりの極限状況になった時のエゴや疑念の心理を実に上手く描いていて面白いし、結末の意外な展開に驚きながら、伏線に気付き唸らされます。決着を付ける男の心理もこの極限状態で起きている数々のドラマによって微妙な変化があった・・・菊村到の原作「閉じ込められて」に俄然興味が沸きます。

事件解決後に駆けつける犯人の恋人の浮気相手(中山仁)のおトボケも良いし、マスターの科白も良い。
この事件マスコミ相手にペラペラと英雄気取りで状況をしゃべりまくるのは絶対このマスターですね。

田村奈巳は新婚妻役で青いスーツがまぶしかった。ただそれだけ。こちらも犯人が甘ちゃんだったので貞操が守られ目出度し目出度し。ジジイ(若宮大佑)にもう少しがんばって欲しかったけど・・・

今回のシネマヴェーラ特集。狙っていた「国際秘密警察 火薬の樽」「豹(ジャガー)は走った」「血とダイヤモンド」「奴が殺人者だ」・・・タイムテーブルとこちらのスケジュールが上手く合わず、悉く見逃して悔しかったのですが、この作品で完全に気が治まりました。見逃した作品は機会があればいづれまた・・・

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