Mr.Bation

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「善き人のためのソナタ」

2007-12-31 | 映画(DVD)
とにかく、どこで聞いても評判の良いこの映画。新文芸座のシネマカーテンコールでかかっていたので観てきました。

1984年、東西冷戦下の東ベルリン。ガチガチの国家保安省(シュタージ)局員、ヴィースラーは、劇作家のドライマンと舞台女優である恋人のクリスタが反体制的であるという証拠をつかむよう命じられる。成功すれば出世が待っていた。しかし、国家を信じ忠実に仕えてきたヴィースラーだったが、盗聴器を通して知る、自由、愛、音楽、文学に影響を受け、いつの間にか今まで知ることのなかった新しい人生に目覚めていく。ふたりの男女を通じて、あの壁の向こう側へと世界が開かれていくのだった…。

噂に違わぬ良作。静かな雰囲気(盗聴するヴィースラーの静けさに依るところ大)の中シュタージと通報者(隣人)による徹底した管理社会の実態を克明に描き、その時そこに生きた人の心の動きを描ききった、しみじみ・・・

かつて立川談志が高座で頻繁に東欧ジョーク集を紹介していた時期がありました。
その中に
「東から昇る太陽は何故あのような歓喜の輝きを放っているのだろう。
それは夕方には西へ沈めるからだ・・・」
というのがありました。劇中類似するジョークを青年が党幹部が居るのを知らずに仲間に紹介しようとしてしまう描写があります。

「善き人のためのソナタ」の譜面をドライマンにプレゼントして自殺を遂げる演出家イェルスカなど、なかなかいい顔したゲルマン親父だし、その他役者達の魅力も充分。

主演級はヴィースラー(ウルリッヒ・ミューエ)、ドライマン(セバスチャン・コッホ)
ラストでの2人の間の間接的な関係、ドライマンの思いやりとヴィースラーの満足が感動を呼ぶのだけれど、クリスタの悲運な生涯とヴィースラーの関係にも注目したい。

クリスタ役のマルティナ・ゲデックは「素粒子」でも素敵な年増を演じていた人だけれど今回も魅力一杯。
体制に対して一種の恐れを持ったクリスタはヘムブフ大臣との関係を強要されているし麻薬の力も借りていて苦悩の中に居る。ヴィースラーの心の動きの中でも決定的となる酒場でのクリスタとの接触。(監視者としてはタブーのはず)この接触がクリスタの運命、ドライマンの活動に大きな影響を与える。
ヴィースラーとしては善意であったかもしれない。しかし、監視するうちに神の視点で2人の人生の軌道にちょっと手を加えてみたくなるというのはありそうで、発端はそんなところと想定してみるとこの話が実は滑稽話としても楽しめる要素がありそう。
実は余計な事をしたオッサンだったりして・・・
ガチガチのシュタージで質素な独身生活のヴィースラーだからこそ、また、芸術にも縁遠く、免疫が無かったがために木乃伊取り的になったという事でしょう。

さて全編緊張感を持つ名作でしたが、個人的に好きな場面を2つ。

エレベーターの中でボールを持った少年と乗り合せるヴィースラー。少年は無邪気に
「シュタージの人?」と訪ねる
「良い人を捕まえに来て牢屋に入れる悪い人たちだってお父さんが話していた」
・・・
「名前は?」と見下ろし問うヴィースラー
「ぼくの名前?」
一瞬、緊張が走る。
「いや、ボールの・・・」
「ボールには名前なんかあるわけないよ」
ガチガチシュタージとは思えないウィットさ

ドライマン作戦が失敗に終わり郵便の開封という閑職にまわされしまうヴィースラー、そこでベルリンの壁崩壊となる。壁が崩れた事をラジオで聴き感嘆する青年局員は東欧ジョークの青年。やられたー!

あとドイツの懐の深さと強さをドライマンが閲覧に来る歴史博物館に見てとれます。

「善き人のためのソナタ」DAS LEBEN DER ANDEREN
2006年ドイツ 監督:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク

HGW XX/7

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キーワード
善き人のためのソナタ ベルリンの壁崩壊 歴史博物館 マルティナ・ゲデック ウルリッヒ・ミューエ 東ベルリン 国家保安省 セバスチャン
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2 コメント

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来年もよろしくお願いします (tak)
2007-12-31 22:44:41
よかったでしょ?「善き人のためのソナタ」。
今年はimaponさんの半分しか劇場で映画観られませんでした。
その中で、観て数日経つのに、じわーっと余韻が残る映画が数本ありました。
それがこの映画。
来年もいい映画に会えますように。

今年もお世話になりました。
imaponさん見習って、来年はもうちょっと更新の頻度あげようっと。
来年もよろしくお願いします。
よろしくお願いします (imapon)
2007-12-31 23:47:33
B級やゲテモノを中心に鑑賞しているのでこういう映画にめぐり合うと少し戸惑ってしまいます。
でも、良い映画というのはやはり余韻を残してくれますね。
もっと新作にも目を向けてみようかという気になります。

takさん、こちらこそ。今年も1年ありがとうございました。
来年も懲りずにお付き合いくださいませ。



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