JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「牡丹燈籠」

2012-07-08 | 映画(DVD)
「世紀の大怪優2 西村晃MAGIC」

「牡丹燈籠」1968年 大映 監督:山本薩夫

燈籠流しの宵、新三郎は遊女・お露と知りあい契りを結ぶ。しかし、女はこの世の者ではなかった。恋しい男のもとに夜な夜な現れる妖艶な美女幽霊──。三遊亭円朝の傑作怪談噺を映画化。西村晃が臆病&強欲な男・伴蔵をコミカルに演じる。

三遊亭円朝作・怪談牡丹燈籠は寄席でこま切れに演じれば見事な切れ場でその日の観客を楽しませる。ちくま文庫で読んだら、よく知られたお露とお米の幽霊の件だけでなく周囲の飯島家のお家騒動、仇討ち話とからみあって進む人間の業の世界が滅茶苦茶面白い読み物だった。
六代目円生のレコードを持っているが「乳房榎」とともに聴き入っちゃいますよ。
やはり映画にするとなると当然この「お札はがし」の段となります。

社会派イメージの山本薩夫監督。お露を吉原の遊女という設定にして、不幸な身の上を語らせるあたりは、”らしさ”でしょうか。
怨念ではなく恋しい男のもとに通う幽霊の妖艶さの表現が冴えてます。

お露の赤座美代子という方はTVなどで疲れたおばちゃんのイメージが強かったのですが、この頃は若く、とてもお露に合っていて、新三郎(本郷功次郎)との接吻シーンなどの妖艶さにうっとり。
新三郎がお露を受け入れている間の幸福そうな中に儚さのある幽霊の美しさも、お札を貼られて拒絶された時には隈が出て悍しい怨霊幽霊と化します。
お露の後を追って死んだ下女お米(大塚道子)この人もはまり役。新三郎がお露を幽霊と知って斬りかかった時の凄みと哀しみを称えた恨みつらみの言葉ったら、ありません。

しかし、妖艶な幽霊物語にそこそこの満足を得ていると判蔵(西村晃)の女房お峰(小川真由美)の登場によって、俄然、興味はそっちに全て持って行かれちゃう。
やっぱり、小川真由美、凄いわ。このお峰のキャラがいいんだ。
仇な姐さんな感じで、ちょっと新三郎の家来らしからぬ所はあるが、伴蔵との蚤の夫婦っぷりが最高。あきらかに主導権は母ちゃん。
高鼾のお峰にお久しぶりにと挑みかかる判蔵の西村晃と、滑稽さも加わってくる。
そんな、お峰も判蔵がひそひそと幽霊のお米と話をしていると強烈に焼きもちを焼く可愛さ。
欲の皮を突っ張らせすぎた夫婦は関口屋として繁盛する以前に栗橋まで逃げ延びる事もなく、引き返して無残な最期を遂げる間抜けぶり。
本当は悪事は判蔵の方で、お峰を殺してしまうのだけれど、尺の限られた映画としてこの簡潔な落とし前の付け方はあり。お峰が主導権のまま終わるのも良いではないですか。

ちくま文庫「牡丹灯籠」
細かい記憶が薄れているので、再読したくなってきた。

ラピュタ阿佐ヶ谷

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