JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」

2010-12-02 | 映画(DVD)
「稀代の「演技者」 追悼・小林桂樹」

「黒い画集 あるサラリーマンの証言」1960年 東宝 監督:堀川弘通

エリートサラリーマンの石野は、部下でもある愛人の家からの帰り道、近所の顔見知りの杉山と偶然出会う。後日、杉山が殺人事件の容疑者となり、アリバイを証明できるのはあの日会った石野だけ。しかし彼は、保身のため証言を拒否し…。平凡な男が、事件に巻き込まれ転落していく様を描く。

松本清張原作らしいサスペンス。大作じゃないけど、とても丁寧に描かれ見応えのある傑作。
人の良いサラリーマン役イメージの定着している小林桂樹ならではの名演で、家庭を裏切る小さな嘘から保身のための嘘、その嘘から杉山の人生を追い込む嘘、法廷での偽証に発展する過程、その良心との葛藤、因果応報な転落人生をきっちり演じています。

そういえば趣は違いますが、今年観た「にっぽん泥棒物語」も偽証する事の良心の呵責というテーマでしたが、あちらは法廷劇としての感動的傑作になっているのに対して、こちらは主役がサラリーマン小林桂樹であるだけに、その苦悩は多くの観客が切実に受け止めるのサスペンスとして秀逸。
身内を欺くちょっとした嘘、秘密はそこらじゅうに転がってるでしょうし、やっぱり悪い事はできないなと思わせる。

当時の東京の風景、サラリーマンの日常なども確りと描かれているのも興味深い。約束までの時間潰しで2度繰り返されるビアホールの煽り、パチンコ屋の俯瞰。

また、嘘に使った映画。原知佐子が本屋で買ってきたキネ旬か何かで粗筋を憶えようとする場面も時代ですね。今ならDVD鑑賞でOKですもの。(新作ではなく2本立てのようですから)

愛人役が原知佐子という点も個人的に見逃せない処で、小柄で溌剌とした若いOLがキュート。ホットパンツで動きまわったり、課長さんに甘えてみたり・・・

石野課長の証言(嘘)
「二本立てで、最初が『西部の嵐』、二本目が『パンと恋と夢』でした」

西部の嵐(1936)
パンと恋と夢(1953)

本当に観た映画は・・・
「僕は今日、本当に見てたんだ。題名は『夜ごとの美女』と『お嬢さん、お手やわらかに!』の二本立て」

夜ごとの美女(1952)
お嬢さん、お手やわらかに!(1958)

なかでも小林桂樹が劇場で爆笑しながら見ていた「夜ごとの美女」。こいつはジェラール・フィリップ特集で見逃したが、機会があれば是非と思っている。

大事な約束の前に2本立てなんか見て遅れなければ江原達怡も殺されなかったのにね。
あ、そうそう、チンピラの小池朝雄。若い小池朝雄が良いです。
他にも、中北千枝子、西村晃、平田昭彦、中丸忠雄、菅井きん、織田政雄、中村伸郎と・・・光る脇役を挙げればキリがないほど充実。

新文芸座

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