JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

映画 「その場所に女ありて」

2008-08-15 | 映画(DVD)
「その場所に女ありて」1962年 東宝 監督:鈴木英夫

特にサスペンスで力量を発揮したと言われる鈴木英夫監督。女性映画の傑作だそうで、自分の好むものとちょっと違うかもしれないと躊躇したものの、これは観に行って大正解。まさに傑作。

難波製薬が新薬発売に投ずる莫大な広告費の獲得を目指して、広告代理店の争いが始まった。そんな中、西銀広告に勤める律子(司葉子)は、ライバル代理店のやり手営業マン・坂井(宝田明)と出会う…。

題材と、そのドライなタッチ故か、こんな日本映画離れした物があったとは!しかも60年代初めにと驚く。

確かに仕事をする女性の環境は大きく変っただろうし、男と女の関係性に古さは見えるものの、現代でも綿々とと変る事のない一面もあるからだろう、作品の古さはあまり感じさせない。いや、むしろ新しくさえ思える。(よほど前近代的な職場環境に居るのか、私

西銀広告の女性たちは男言葉の実力派タイピスト祐子(大塚直子)と職場内で金貸しをするバツイチの久江(原知佐子)、悪い男に騙され続けるミツ子(水野久美)
煙草プカプカ酒ガブガブ麻雀ジャラジャラと仕事に生きるクールな律子(司葉子)
個人的には原知佐子の可愛らしさが気に入ったがそんな事はどうでも良いか。
しかし、後輩に上手を行く金貸しOLが「なんか用スカッ」と眼鏡で登場するのは楽しい。いつの時代にも世代交代はすぐそこに迫っている。

個人的には30代に広告会社(西銀さんのように大きくないけど)の経験があるのでその内実のリアルさも面白い。

律子の周囲の男どもは皆不甲斐ないのがまた良い。
ちょっとピントがはずれてしまう部長(西村晃)
賞をとって引き抜かれるも順調とはいかない女好きデザイナーの倉井(山崎努)
社の方針で本当にやりたい仕事が出来ずにライバル会社からの裏の誘いに乗り、社を裏切る制作チーフの浜村純(蝶ネクタイお似合い)彼の「独立するだけの資力も無い」は切実。ああ。ここでも組織対個人の苦々しい闘いが・・・
極めつけは律子の姉(森光子)の年下の亭主。この役が「アタックチャンスの狙い目!」の児玉清だということに最後の方まで気付かなかった。気付いた時の驚きや!良いです児玉清の与太郎演技「ボク、シラナイ」・・・

そんななかダメそうで意外や中間管理職の責務をこなす課長さんがよくがんばっていました。

司葉子、やや痩せすぎですが、この役なら返ってピッタリ。そのクールさが凛々しくて・・・。
宝田明とキッパリ別れ、それでも会社からあらぬ疑いを掛けられます。
「女がひとりで仕事だけの7年はご想像以上のものがあります」と訴える。いや切実ですな。

後年、司葉子ご自身が「何故、この作品で私は賞を取らなかったのか」とおっしゃていたそうですが、まったく同感の主演女優賞モノでございました。カッコ良すぎ!

アテネフランセ文化センター 「鈴木英夫映画祭2008」

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