JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「女ばかりの夜」

2009-12-26 | 映画(DVD)
「生誕百年 映画女優 田中絹代」

「女ばかりの夜」1961年 東京映画 監督:田中絹代

昭和33年、売春防止法が施行されたが法の網の目を潜って春を売る女は後を断たない。検挙された彼女たちは、強制的に厚生寮か補導院へ送られ、そこで一定の補導期間を終えて更生への途に踏み出すのだが、彼女たちを迎える社会は意外に冷たく、想像できない困難が待ち受けていた。白菊婦人寮もそうした施設で、邦子、チエ子、亀寿、小雪ら33人の女が収容されていた。彼女たちは寮母の熱心な指導のもとで、規律ある毎日の生活を送っていた。模範生邦子は、職安の斡旋で食料品店に勤める身となったが・・・・

大女優の田中絹代は小津、溝口、成瀬ら名匠の下での演技経験を生かし女流映画監督としても素晴らしい才能を発揮していたらしい。その6本の作品のうち5作目の本作は若かりしころの原知佐子が主演に抜擢された作品。これは見逃すわけにはいかない。

女性の視点から偏見に耐えながら更正の道を歩む女性を描いた社会ドラマ。

冒頭白菊婦人寮を見学に来た婦人団体の品のいいおばさま方の偏見にあふれた反応が時代を感じて面白い。
そしてなんといってもこの頃の原佐知子の輝き。
寮の先生(淡島千景)に言わせるとこの寮に訪れる娘はたいてい知能指数が低いが邦子(原知佐子)は比較的知能指数が高く中学中退だそうな。その知性を感じる美貌が堅気になろうと健気に労働に勤しむ少女の役で輝きを放つ。元赤線で腰にマブのイニシヤルを刺青しているのだが、偏見から挫折しそうになり当時のやさぐれ度が表面に出る、そのギャップと、赤線出身の箔が美しさを際立たせている感じがとてもよく出ている。
それは、堅気になろうとする姿に比べ食料品店を辞めるとなり休日に美容室でセットをし夜の女の姿になり主人(桂小金治)を誘惑する姿など決して美しくないのだけれど、この姿があっての更正しようとする邦子の可憐さに現れているのは間違いない。

女工となり、同僚のボーイフレンドたちに元赤線としてのサービスを迫られた際の徒な啖呵もカッコ良い。

とかく素人のやることはエゲツなく、女性自身に火傷を負わされるリンチに会い悔しくて泣く邦子。
白菊婦人寮に舞い戻り淡島千景に「売春が何故悪いの」と問い詰める。
答になっていない淡島千景センセイ。「法律が変わったから・・・」

夏木陽介の登場からは純愛路線。
幸福の儚さが容易に推測できるのでハラハラする。よほど感情移入して見ていたようだ。

これはなかなかの秀作。
脚本演出に無駄が無い感じで最後まで見入りました。

白菊婦人寮の寮生を中心に助演陣も個性的に輝く。
なかでも浪速千栄子(レズの長老・亀寿。婦人会の訪問にはしゃぐ場面から全開)の怪演は特筆。
快活な北あけみ、女医の診察室でも娼婦役が冴えていた千石規子、淫らな色気の関千恵子、恐ろしい春川ますみ。
いかにも適役な白菊寮教師の沢村貞子。
他にも桂小金治の気弱で堅物な店主が誘惑に負けて妻を恐れてうろたえる様。その妻ざぁます眼鏡の中北千枝子。
邦子にあっさり振られてしまう店員が大村千吉。
女工の女監督・菅井きん、若い。
更正に助力する志摩薔薇園の夫婦に香川京子・平田昭彦。

京橋 フィルムセンター

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