JOEは来ず・・・ (旧Mr.Bation)

なんの役にも立たない事を只管シコシコと

「暁の合唱」

2009-04-23 | 映画(DVD)
「本の街・神保町」文芸映画特集Vol.13
『シネマ大吟醸-魅惑のニッポン古典映画たち』より
昭和の原風景

美しき昭和の風景

「暁の合唱」1941年 松竹大船 監督:清水宏

「若い木暮実千代はバス車掌になり、むっつり運転手の佐分利信とコンビを組む。往時の田舎のきらめく美しさ、人情がまぶしい傑作。」

2本観て、すっかり清水宏監督の魅力にまいってしまい「有りがたうさん」に続く乗合バスの映画を観る。舞台は秋田の田舎バス。

肉感的な女優さんというイメージのある木暮実千代さんも1941年物なのでいたって清純そうな斎村朋子役。冒頭で女学校の入試作文が紹介され(指の障害があるため受からないとわかっていながら試験にきた自分を見つめなおし進路の変更を決意する名文)かなり芯があり、ちょっと変わった所もある魅力的才媛である事が分かる。
進路変更は乗合バスの運転手になること。バス会社ではまずは何事も経験と高学歴の斎村朋子に車掌をやらせる。

車窓の田舎のきらめく美しさも去る事ながら、やはりバス車内でのやり取りのユーモアが車の振動とともに心地良い。
初の乗車での木暮実千代と運転手佐分利信(浮田)のやりとりは漫才のボケとツッコミのよう。
佐分利信の「よけいな事を言うんじゃない」が良いツッコミだ。
木暮実千代は車掌の仕事は「嫌な思いをする事もあるけど楽しい」と言っている。しかし、映画では嫌な思いというほどのエピソードが出てこないところが良い。
女性の同僚との住み込みの生活でも、器量が良いとはいえない同僚に対してキツイ冗談を言ったりするけど、言われたほうもとても大らか。女同士のドロドロもないところがまた良い。

乗り合わせた婚礼一行。婚礼前の今のうちに腹ごしらえと小母さんがおにぎりを皆に配る。木暮実千代はお嫁さんがおにぎりを食べるかどうか気になってしょうがない。
最初は躊躇していたお嫁さんも一つつまむと、次から次へ大きなおにぎりを3つも食べる。角隠しのお嫁さんの食べる仕草が愉快。するとバスは急ブレーキ、田んぼに脱輪。乗客みんな降りてバスを押す。見かねたお嫁さんまでバスを押し始める。角隠しのお嫁さんが怪力でバスを押す。
車掌をやりながら、このお嫁さんを見て恋愛に思いを馳せたり、バスないの出産に出くわして将来の女の一大仕事に想いを馳せながら、女性として成長していく。

三郎さん(活動写真館の若旦那でバス会社の事務も手伝っている)の訳あり女性などが出てきて斎村朋子の内面に焦点を当てる後半も悪くは無い。
眠れぬ夜は腕相撲。腕相撲に負けて泣く木暮実千代。否、腕相撲の最中に妙に泣けてきてしまいそれで負けた。それは少し大人になったという事・・・なんてね・・・
でも、やっぱり前半ののんびりとバスが走る描写と車掌の独特な鼻に抜ける声が幸せ。

結局、見事バスの運転手となる。当時バスの車掌でも花形職業だったろうに、その時代に女性運転手ですから、カッコ良いですね。

そうそう、このバス会社の車掌のユニフォーム(黒?)がまた良いです。末が広がった少し長めのスカート、襟に少しのぞく白。もちろんそれに車掌鞄。木暮実千代は髪型も油でバックになでつけ、カッコ良いです。

石坂洋二郎原作のこの作品、後に2回リメイクされているようです。1955香川京子、1963星由里子。特に1963年版は鈴木英夫監督なので見てみたいですね。

タイトルは何故「暁の合唱」なのでしょう?石坂洋二郎の原作を読むと判るのかしら?

神保町シアター

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