
今回の記事は『ヒア アフター』(2010年、監督:クリント・イーストウッド)です。
クリント・イーストウッド監督、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮で贈るスピリチュアル・ヒューマン・ドラマ。
主演は『インビクタス』に続いてイーストウッド監督とコンビとなるマット・デイモン。共演はセシル・ドゥ・フランス。
死後の世界をテーマに、それぞれの形で死と向き合う3者の人生の交差を描いた静かな感動作。
■内容紹介 ※goo映画より
ジャーナリストのマリーは、東南アジアで津波に飲み込まれ、呼吸が停止した時に不思議な光景を見る。
サンフランシスコ。かつて霊能力者として働いていたジョージ、今は霊能力とは無関係の工場に勤めている。
ロンドンで暮らす少年マーカスは、突然の交通事故で双児の兄を失う。
兄を思うマーカスは、霊能力者を捜すうちにジョージのWebサイトへと行き着く。
一方、マリーは臨死体験を扱った本を書き上げた。
やがて異なる3人の人生が交錯する日が来る…。
死に触れて、前を向く。



■感想
この映画は映画冒頭に大津波による被災シーンがある為、日本では東日本大震災被災者への配慮により上映中止となった作品です。
震災後の今となってはあまりにナイーブでショッキングな内容を含む映画となってしまった。
ただしこの映画は、死後の世界を身近に感じるようになった3人が、それぞれに死というものを見つめ歩き出すまでを描いた映画であり、イーストウッド監督の温かいメッセージが感じられる映画なのだということをどうか心に留めておいてもらいたい。
僕の映画鑑賞直後に書いたメモにはその津波シーンに対する感想も残っているのですが、その部分は今回のレビューでは割愛させてもらいます。
それでは感想。
今作は同じくイーストウッド監督作品である『グラン・トリノ』や『チェンジリング』のような弩級の衝撃は薄く、『インビクタス』のような血沸き立つような興奮はありません。
『ヒア アフター』は前述の作品とはだいぶ雰囲気が異なる作風で、静かな感動に包まれる良作でした。
死後の世界というスピリチュアルな題材を扱った物語なので、下手をすると胡散臭いB級ドラマになりがちなのですが、そこは流石イーストウッド監督でとても上質な人間ドラマへと仕上げています。
イーストウッド監督自らが手掛ける映画音楽も相変わらずとっても良かった。
この物語には3人の主人公がいて、それぞれの物語が描かれています。
後半に向けその3人の物語が絡んでいくシナリオは上質で上手い。
それぞれに心に傷を負った3人の物語の中に、死者、死後の世界、もしくは死そのものについてを静かな視点で綴っています。
なお映画のタイトルともなっているヒアアフター(Hereafter)は、あの世、または来世という意味を持つ英単語で、映画中ではマリーが書き上げる本の題名として登場し、この本が3人の人生を交差させるきっかけとなっています。
(ちなみに日本語字幕ではヒアアフター=来世という訳がふられていました)
主人公3人の中ではマーカスの物語が特に感動的でした。
亡くなった兄ジェイスを想い、寂しさを訴えかけるシーンは涙ぐんでしまうほど感動的です。
主演のマット・デイモンが演じるジョージは死者と対話できる能力を持つが故に苦悩する主人公として描かれています。
そんな特異な能力を持つ主人公ではあるのですが、料理学校へと通い、そこでの出会いを通して何とか心の隙間を埋めようとする姿は、今までマット・デイモンが演じてきた役の中ではかなり一般的な普通の役柄に見えてちょっと新鮮でした。
料理学校でジョージが出会う女性として何気なく登場するブライス・ダラス・ハワード。
碧眼がとっても可愛かった彼女、ちょっと気になったので調べてみたら思いのほか彼女の出演作を観ていた。
M・ナイト・シャマラン監督の『ヴィレッジ』(鑑賞しましたが未レビュー)の主演アイヴィー役がデビュー作で、同じくシャマラン監督の『レディ・イン・ザ・ウォーター』では超ミステリアスな役柄を演じています。
『ターミネーター4』ではジョン・コナーの妻であるケイトを演じ、近年では『エクリプス/トワイライト・サーガ』(これは未視聴)でヴィクトリアを演じています。
作品ごとに全然印象が異なり、調べるまで同じ人だということは気がつかなかった。
今作で主演のマット・デイモンを上回るほどの存在感を放っていたのは、臨死体験後に人生が一変する女性マリーを演じたセシル・ドゥ・フランス。
今まで観たどの女優さんとも異なる雰囲気を持っていて何とも言えない不思議な魅力を感じました。
超自然体の演技はまったく演技しているんだということを感じさせません。
映画のテーマとなっているのは死後の世界。その根底にあるものは“死”です。
この上なくシリアスで重い内容を扱っていると思う。
しかし物語は比較的軽めな描写・演出で進んでゆき、観た人に胸を抉るような痛みを感じさせる映画にはなっていない。
突然死に別れた最愛の人ともし話が出来るのならやっぱり話がしたい。伝え残したこともあるのだろう。
そんな遺された人の願いを叶えるのが、ジョージの持つ能力、死者との対話だ。
しかしそれは悲しい記憶の引き金であり、遺された人に死に別れた時の悲しさを蘇らせる。
もう決して会うことはできないのだから。
もちろん対話には救いもあるのだけれど、やっぱり悲しいのだ。
そんな悲しみをジョージは死者と対話する度に感じていたのかもしれない。
物語の最後は主人公3人がそれぞれに死というものを受け止め歩き出していく。
胸に痛みは残りますが、前向きで希望を感じさせる終わり方は静かに感動的でした。
正直に言うと、映画が伝えようとしていたことはたぶんあまりよく分かっていない。
主人公ジョージが見たヒアアフター=光に満ちた世界が何を表していたのかもよく分からない。
けれど強く心に刻まれたことがひとつある。
↓個人的意見が強いので反転
(最愛の人の死を完全に心から消す必要はない。
時に振り返ってあげることも優しさだろうと思う。
けれど日々を生きる中ではその人のことを記憶から追い出さなければいけない。
忘れることも必要なのだ。
そうしてその人のいない世界を生きていかないといけないのだ。
兄の帽子を捨て、自分の日常を歩き出すマーカスの姿に「死を受け止め生きること」のあり方を教えられたように思います。)
↓貼り残し
イーストウッド監督が絵になり過ぎて、映画のワンシーンであってもおかしくない。
⇒img1(撮影風景1)
⇒img2(撮影風景2)
(★は最高で5つです。★:1pt, ☆:0.5pt)
■Link
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クリント・イーストウッド監督、スティーヴン・スピルバーグ製作総指揮で贈るスピリチュアル・ヒューマン・ドラマ。
主演は『インビクタス』に続いてイーストウッド監督とコンビとなるマット・デイモン。共演はセシル・ドゥ・フランス。
死後の世界をテーマに、それぞれの形で死と向き合う3者の人生の交差を描いた静かな感動作。
■内容紹介 ※goo映画より
ジャーナリストのマリーは、東南アジアで津波に飲み込まれ、呼吸が停止した時に不思議な光景を見る。
サンフランシスコ。かつて霊能力者として働いていたジョージ、今は霊能力とは無関係の工場に勤めている。
ロンドンで暮らす少年マーカスは、突然の交通事故で双児の兄を失う。
兄を思うマーカスは、霊能力者を捜すうちにジョージのWebサイトへと行き着く。
一方、マリーは臨死体験を扱った本を書き上げた。
やがて異なる3人の人生が交錯する日が来る…。
死に触れて、前を向く。



■感想
この映画は映画冒頭に大津波による被災シーンがある為、日本では東日本大震災被災者への配慮により上映中止となった作品です。
震災後の今となってはあまりにナイーブでショッキングな内容を含む映画となってしまった。
ただしこの映画は、死後の世界を身近に感じるようになった3人が、それぞれに死というものを見つめ歩き出すまでを描いた映画であり、イーストウッド監督の温かいメッセージが感じられる映画なのだということをどうか心に留めておいてもらいたい。
僕の映画鑑賞直後に書いたメモにはその津波シーンに対する感想も残っているのですが、その部分は今回のレビューでは割愛させてもらいます。
それでは感想。
今作は同じくイーストウッド監督作品である『グラン・トリノ』や『チェンジリング』のような弩級の衝撃は薄く、『インビクタス』のような血沸き立つような興奮はありません。
『ヒア アフター』は前述の作品とはだいぶ雰囲気が異なる作風で、静かな感動に包まれる良作でした。
死後の世界というスピリチュアルな題材を扱った物語なので、下手をすると胡散臭いB級ドラマになりがちなのですが、そこは流石イーストウッド監督でとても上質な人間ドラマへと仕上げています。
イーストウッド監督自らが手掛ける映画音楽も相変わらずとっても良かった。
この物語には3人の主人公がいて、それぞれの物語が描かれています。
後半に向けその3人の物語が絡んでいくシナリオは上質で上手い。
それぞれに心に傷を負った3人の物語の中に、死者、死後の世界、もしくは死そのものについてを静かな視点で綴っています。
なお映画のタイトルともなっているヒアアフター(Hereafter)は、あの世、または来世という意味を持つ英単語で、映画中ではマリーが書き上げる本の題名として登場し、この本が3人の人生を交差させるきっかけとなっています。
(ちなみに日本語字幕ではヒアアフター=来世という訳がふられていました)
主人公3人の中ではマーカスの物語が特に感動的でした。
亡くなった兄ジェイスを想い、寂しさを訴えかけるシーンは涙ぐんでしまうほど感動的です。
主演のマット・デイモンが演じるジョージは死者と対話できる能力を持つが故に苦悩する主人公として描かれています。
そんな特異な能力を持つ主人公ではあるのですが、料理学校へと通い、そこでの出会いを通して何とか心の隙間を埋めようとする姿は、今までマット・デイモンが演じてきた役の中ではかなり一般的な普通の役柄に見えてちょっと新鮮でした。
料理学校でジョージが出会う女性として何気なく登場するブライス・ダラス・ハワード。
碧眼がとっても可愛かった彼女、ちょっと気になったので調べてみたら思いのほか彼女の出演作を観ていた。
M・ナイト・シャマラン監督の『ヴィレッジ』(鑑賞しましたが未レビュー)の主演アイヴィー役がデビュー作で、同じくシャマラン監督の『レディ・イン・ザ・ウォーター』では超ミステリアスな役柄を演じています。
『ターミネーター4』ではジョン・コナーの妻であるケイトを演じ、近年では『エクリプス/トワイライト・サーガ』(これは未視聴)でヴィクトリアを演じています。
作品ごとに全然印象が異なり、調べるまで同じ人だということは気がつかなかった。
今作で主演のマット・デイモンを上回るほどの存在感を放っていたのは、臨死体験後に人生が一変する女性マリーを演じたセシル・ドゥ・フランス。
今まで観たどの女優さんとも異なる雰囲気を持っていて何とも言えない不思議な魅力を感じました。
超自然体の演技はまったく演技しているんだということを感じさせません。
映画のテーマとなっているのは死後の世界。その根底にあるものは“死”です。
この上なくシリアスで重い内容を扱っていると思う。
しかし物語は比較的軽めな描写・演出で進んでゆき、観た人に胸を抉るような痛みを感じさせる映画にはなっていない。
突然死に別れた最愛の人ともし話が出来るのならやっぱり話がしたい。伝え残したこともあるのだろう。
そんな遺された人の願いを叶えるのが、ジョージの持つ能力、死者との対話だ。
しかしそれは悲しい記憶の引き金であり、遺された人に死に別れた時の悲しさを蘇らせる。
もう決して会うことはできないのだから。
もちろん対話には救いもあるのだけれど、やっぱり悲しいのだ。
そんな悲しみをジョージは死者と対話する度に感じていたのかもしれない。
物語の最後は主人公3人がそれぞれに死というものを受け止め歩き出していく。
胸に痛みは残りますが、前向きで希望を感じさせる終わり方は静かに感動的でした。
正直に言うと、映画が伝えようとしていたことはたぶんあまりよく分かっていない。
主人公ジョージが見たヒアアフター=光に満ちた世界が何を表していたのかもよく分からない。
けれど強く心に刻まれたことがひとつある。
↓個人的意見が強いので反転
(最愛の人の死を完全に心から消す必要はない。
時に振り返ってあげることも優しさだろうと思う。
けれど日々を生きる中ではその人のことを記憶から追い出さなければいけない。
忘れることも必要なのだ。
そうしてその人のいない世界を生きていかないといけないのだ。
兄の帽子を捨て、自分の日常を歩き出すマーカスの姿に「死を受け止め生きること」のあり方を教えられたように思います。)
↓貼り残し
イーストウッド監督が絵になり過ぎて、映画のワンシーンであってもおかしくない。
⇒img1(撮影風景1)
⇒img2(撮影風景2)
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題名 | ヒア アフター |
製作年/製作国 | 2010年/アメリカ |
ジャンル | ドラマ/ファンタジー/ロマンス |
監督 | クリント・イーストウッド |
出演者 | マット・デイモン セシル・ドゥ・フランス フランキー・マクラレン ジョージ・マクラレン ジェイ・モーア ブライス・ダラス・ハワード マルト・ケラー ティエリー・ヌーヴィック デレク・ジャコビ ミレーヌ・ジャンパノイ ステファーヌ・フレス リンゼイ・マーシャル スティーヴン・R・シリッパ ジェニファー・ルイス ローラン・バトー トム・ベアード ニーヴ・キューザック ジョージ・コスティガン、他 |
メモ・特記 | ![]() |
おすすめ度 | ★★★★ |
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観ることが出来ていて、良かったなぁと思います。
またよろしくです♪
僕もあと1週遅かったらこの映画は観れてませんでした。
イーストウッド監督の映画としてはライトな印象もあるのですが、良い映画だったと思っています。
今回見逃した方も何かの機会でいつかぜひ観てもらいたい映画です。
>けんさん
こちらからもTBお返ししますね。