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天帝妖狐 / 乙一

2005-12-09 21:42:33 | 読書
乙一さんの『天帝妖狐』です。
この本を読んだのはだいぶ前です。
何故か今までレビュー記事にしてなかった謎の作品。
忘れてたわけじゃないですよ。
前置きはこのぐらいにして、内容紹介に移ります。
この本には2つの話が入っています。
今までだったら表題作だけ内容紹介してるんですが
今回は2つとも内容紹介します。
表題作じゃない方の「A MASKED BALL」もけっこう好きなんで。


内容紹介1
「A MASKED BALL ア マスクド ボール ―及びトイレのタバコさんの出現と消失―」
学校の敷地の隅の剣道場の裏側にある男子トイレには人があまり来ない。
だからそのトイレを隠れてタバコを吸う為の喫煙室代わりに使っている生徒がいた。
いつものようにタバコを吸おうとそのトイレにやって来た彼は
 ラクガキスルベカラズ
という落書きがトイレのタイルにされていることに気づく。
次の日来てみるとまた新しい落書きがされていた。新しい落書きは
 だらのらくがきなのかは知らないけど、らくがきしてるのは自分のほうじゃないか
 K.E.
とされていた。
その後もこのトイレで落書きによるやり取りがされた。
2C茶髪、V3というヤツが新たに落書きしていった。
そこでタバコの彼も冗談半分に次のような落書きをしてみた。
 あんたたちはいったい何者なんだ。
 G.U.
と書いてみた。
すると、この問いに対しての答えが落書きによって返された。


内容紹介2
「天帝妖狐」
杏子が学校から家へと帰る途中の川辺の道で
自分の前を歩いていた男が倒れた。
男は全身に黒い服をまとい、髪は伸びきり、袖は泥で汚れていた。
そして何よりその男からは
「近寄ってはならない」
という異様な気配が感じられた。
男は肩で息をしていて、苦しそうだった。
助けなければならない
しかし、男から感じられる気配は「関わってはダメだ」という気持ちにさせる。
だが、杏子はその男を放っておくことはできなかった。
これが杏子とその男(=夜木)との出会いだった…。


以下感想です。
まず「A MASKED BALL」の方から。
この話、面白いです。
誰が書いたかわからない正体不明の落書きでのやり取りが
面白くもあり、そして怖い。
前半の落書きによって話が進んでいく展開は斬新な感じ。そして
物語後半の夜の学校のシーン、こいつはすごく怖い。
読んでてドキドキしまくりです。
で、何といっても落書きしてた奴らの正体に驚かされます。
(最終的に全員判明します)
あの人がまさかねぇ。と驚きつつ
わざわざ助けに来てくれたその人に主人公の彼同様感謝の気持ちが生まれました。
読んでない人置き去り気味の感想ですが
読めばわかります。
とっても面白く、すぐ読み終わると思うので
読んだことない人は読んでみてね。
(僕は「天帝妖狐」より、こっちの作品の方が好きです。)

次に「天帝妖狐」の感想です。
この話は夜木の手紙と杏子の回想?の2つを交互に繰り返しながら
話が進んでいく不思議な書き方です。
杏子の回想は過去から今へというちゃんとした時間軸通りに進み、
夜木の手紙は物語の後半に夜木が書いたものです。
つまり最初のうち、杏子と夜木の2つのパートの時間軸が違ってます。
夜木の手紙、最初はなんだかよくわからないんですが
杏子の回想が進むにつれてどういうことかわかってきます。
この文でうまく説明できてるのかちょっと不安です。
簡単に言うと、読んでいくうちに少しずつ謎が解けていくように書かれている訳です。
読んでいくうちに段々と物語に引き込まれていきます。
物語は物悲しい感じに進んでいき、
読み終わった後、少し胸が痛い。
深くしんみりする作品です。

「A MASKED BALL」と「天帝妖狐」という
全然作品の雰囲気が違った話が収録されている『天帝妖狐』
(相変わらず本自体のタイトルと収録作品のタイトルが一緒だとまぎわらしい
「」が収録作品、『』が本タイトルです。念のため)
とても面白かったです。
「天帝妖狐」で少し感じられる暗黒感や切なさは
乙一さんのその後の作品(暗黒童話とか)でより強烈にレベルアップしてきます。
この『天帝妖狐』はちょっとダークで(場合によってはすごくダーク)
そして切ないという、乙一さんの得意な作品感の始まり的な本だと思っています。


『天帝妖狐』 / 乙一 / 集英社文庫
ジャンル:小説(ホラー/ミステリ)
おすすめ度:★★★★
は最大で5つです)


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