しばのずしょりょう

読んだ本などの感想をひたすら書く所。

陽気なギャングが地球を回す

2008-03-28 23:53:00 | ミステリ・サスペンス
陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)陽気なギャングが地球を回す (ノン・ノベル)
伊坂 幸太郎

祥伝社 2003-02
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伊坂幸太郎作「陽気なギャングが地球を回す」を読む。

嘘を見破ることができる冷静沈着な成瀬、演説が得意で、口から生まれてきた
ような男・響野、スリの達人である久遠、異常な程正確な体内時計を持つ雪子の
4人は、銀行強盗団を結成している。迅速且つ華麗な手口で、負け知らず。
その日の強盗も順調だったが、逃走中、同じ日に現金輸送車を襲撃した犯人の車と
接触事故を起こし、襲撃犯に金ごと車を奪われてしまった。彼らの正体とは・・・?

面白かったー!伊坂ワールド全開な話。
強盗は立派な犯罪なのだけど、強盗犯達の醸し出す雰囲気がほんわかとしていて、
そんな大それたことをしているような気が全くしない。洒脱で軽快。

各段落の最初に辞書の記述みたいな項目があるのだが、そこで紹介されている
言葉の意味のアレンジ具合が、また面白い。小説の世界感と合ってるよなー。

4人の強盗を始め、周囲の人間のキャラクターが、どれも個性的で魅力的。
続編も是非読んでみたいなぁ。

月の裏側

2008-03-26 02:19:40 | SF・ファンタジー
月の裏側 (幻冬舎文庫)月の裏側 (幻冬舎文庫)
恩田 陸

幻冬舎 2002-08
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恩田陸「月の裏側」を読む。

九州の水郷都市・箭納倉で、掘割に面した家の住人が相次いで失踪する事件が
起こっていた。しかし、不思議なことに行方不明になった者は、その間の記憶を
失ってはいるものの、ひょっこり戻ってくるのだ。事件に興味を抱いた元大学
教授の協一郎は、教え子の奇人・多聞と娘の藍子、新聞記者の高安と共に、
事件の謎に迫るが・・・というような話。

ミステリかと思って読み始めたら、SFホラーだった。
恩田さんって、いつもながら作品の幅が広いよなぁ・・・。

じめじめとした何かが、始終、身体にまとわりついているようないやーな感じが
作品内に漂っている。「水」がキーワードとなる本なのだが、水路を流れる水や、
雨、水たまりなど、登場する水が、粘度が高い感じ。
そういう湿度や粘度の高さが、この話を、より得体の知れない不気味なものに
するのに一役買っているような気がする。

みんなと同じでありたい感覚と、個性を大切にしたいという相反する感覚が
交錯し、極限状態に追い込まれていく様子が恐ろしかった。
誰もいない町って、想像しただけでも怖い・・・。

初心者のための「文学」

2008-03-25 23:45:41 | その他
初心者のための「文学」初心者のための「文学」
大塚 英志

角川書店 2006-07
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大塚英志作「初心者のための「文学」」を読む。

「文学」と呼ばれる小説は、時々誤った方向へ人を導いてしまうことがある。
「文学」には、ある一定の読み方が必要なのではないか・・・。
三島由紀夫や太宰治など、著名な作家の小説を10作挙げ、現代社会にも通じる
問題と照らし合わせながら、読み方を紹介した本。

作者が前置きで触れているように、結構お節介な本である。
読み方なんて人それぞれだし、たとえ誤った方向で世界を捉える結果になったと
しても構わないと思う。文章を読んで琴線に触れる箇所なんて、読者の価値観に
よって千差万別であろう。

ただ、作者の読み解き方は、なかなか面白い。
紹介されている話の中には、最近読んだ本もあって、そういう発想で読み進める
なんて思いもよらなかったので、こういう読み方もできるんだなぁと驚いた。
何十年も前に書かれた話でも、今の時代にも当てはまることが描かれているのが
すごい。周囲の環境が変わっても、人間の考えることはさほど進化してないと
いうことか・・・。

文学をこういう風に読む必要はないけど、一つの解釈として読み進めると面白い
本だと思う。読んだことがない話も、これをきっかけに読んでみたくなった。

悪人

2008-03-16 23:15:56 | ミステリ・サスペンス
悪人悪人
吉田 修一

朝日新聞社 2007-04-06
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吉田修一作「悪人」を読む。

福岡市内の保険会社で働く派遣社員の佳乃は何者かに殺され、峠に捨てられた。
彼女の周辺には、複数の男性の影があった。その中の容疑者である、土木作業員の
祐一は、佳乃殺害後に出会った光代と逃避行に及ぶ。なぜ彼は彼女を殺して
しまったのか。誰が本当の悪人なのか。佳乃、祐一、光代の周囲の人々を巻き込み
事件はどこへ向かうのか・・・というような話。

重い、重たすぎる・・・。でも、読まずにはいられない面白さがあった。
人間の悪意を描いた本を読むのって、何でこんなにパワーがいるんだろう。
ちょっと違うけど、東野圭吾さんの『殺人の門』の読後に感じた後味の悪さ
みたいなものが、この本にもあったなぁ。だからしんどかった。

ちょっとしたタイミングのズレで、こんなに不幸になるのか・・・と思うと、
やりきれない気持ちになる。だけど、人間の弱さ、ずるさを描く一方で、
這い上がる力、再生する力が描かれているのが、まだ救われるところかな。
祐一が最後にとった行動は、どのようにも解釈できると思うのだけど、
私は好意的に受け取りたいなぁと思う。じゃないと、救いがなさ過ぎるから。

DEATH NOTE

2008-03-13 01:38:09 | まんが
DEATH NOTE デスノート(1)DEATH NOTE デスノート(1)
大場 つぐみ 小畑 健

集英社 2004-04-02
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大場つぐみ原作『DEATH NOTE』全12巻を読む。

ある日、死神が人間界に落としたあるノートを拾った高校生の夜神月。
そのノートとは、デスノート。名前を書くことで人を殺せる恐ろしいノート
だった。月は、この腐った世の中を正すため、自分が新世界の創生神となるべく、
ノートを利用し、凶悪犯罪者を次々と殺していく。それに気づいた警察、FBI、
そして“L”と呼ばれる優秀な探偵が、事件の真相を求めて動き出したが・・・
というような話。

友達に前々から面白いよーと言われていたので、ずっと読んでみたかった漫画。
映画もやってたけど、漫画を先に読みたかったので見ていなかった。

面白かったー。「月を追うL」という図式のまま最後まで行くのかと思いきや、
色んな展開があって、一筋縄で終わらなかったところがすごい。
ある人物が途中で消えてしまってから、少しトーンダウンしてしまったのが
残念だったけど、追う者と追われる者の攻防ぶりが、息をつかせぬテンポで
繰り広げられていくので、気になって、次々とページをめくってしまった。

何が正義で、何が悪なのか。一番怖いのは、その基準を自分の頭で考えなく
なってしまうことだと思う。テレビで放送されることに、絶対的な力を持った
何者かの言うままに、何の疑問も持たずに、流されてしまう世の中になることが
怖い。あくまで漫画の中の世界だけど、そんな薄ら寒いものを感じてしまった。

ラストは、2パターン考えられたけど、やっぱりこう終わるしかなかったのだと
思うし、これで良かった。絵も文字も中身も詰まった話なので、すぐに読み返す
気にはならないけど、何回か読み返すことで、新たな面が見えてきそう。

阪急電車

2008-03-03 01:13:39 | 恋愛・青春・友情もの
阪急電車阪急電車
有川 浩

幻冬舎 2008-01
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有川浩作「阪急電車」を読む。

見かけたことがあるけど名も知らない人、たまたま乗り合わせたことで縁を
結んだ人と縁が切れた人、見ず知らずの乗客の会話に癒されたり、優しい言葉を
かけてもらって人生観が変わった人・・・など、阪急電車今津線を舞台に繰り広げ
られる人生模様を描いた連作短編集。

面白かったー。一気に読んでしまった。
今津線の各駅(宝塚~西宮北口)が短編のタイトルになっており、そこに
登場する人物たちがバトンを渡すように話を繋いで、一つの話となっている。
その繋ぎ方が上手いし絶妙。この沿線をよく利用する人ならもっと楽しめそう。
私も宝塚に行く時、たまにこの線に乗ることがあるので、何となく親しみが湧く。
今度乗った時に、途中下車してみたいなぁと思えた。

舞台が電車っていうのがいいんだろうなぁ。
電車で乗り合わせる人はほぼ一期一会で、大抵、関わることはない。
それぞれの目的地を目指して、色んな人が乗り合わせているだけ。
だけど、そんな電車の中で、奇跡的とも言える素晴らしい出会いが重なって、
繋がっていく様子は、感動的。現実にそんなことはほぼ起こり得ないこと
なんだろうけど、夢があっていい話だなぁと思う。
小難しい本を読んだ後だったので、余計に頭が爽やかな気分になった。

イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ

2008-03-01 23:27:19 | ノンフィクション
イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策 1
ジョン・J・ミアシャイマー スティーヴン・M・ウォルト 副島 隆彦

講談社 2007-09-05
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ジョン・J・ミアシャイマー作、スティーヴン・M・ウォルト作
「イスラエル・ロビーとアメリカの外交政策Ⅰ」を読む。

アメリカの対イスラエル政策に大きな影響を与えているイスラエル・ロビーの
正体とは何か。アメリカ国内の公的な場で、過大なイスラエル政策を批判する
ことができないのは何故か。など、イスラエル・ロビーが果たす役割を、
様々な例を挙げながら論じている本。

書店で平積みしてあって気になっていた本。
うちの図書館になかったので、他の図書館から借りていたのだけど、
なかなか読み進められなくて、返却期限を少し延ばしてしまった・・・。
やっぱりノンフィクションものは、読むのに時間がかかるからしんどいなぁ。

回りくどく色々書かれているのだけど、要は、イスラエル・ロビーの活動が
アメリカの政策に影響を与え、国益を損ねてるってことが言いたい本。
文中で何度も著者たちが、自分たちは反ユダヤ人、反ユダヤ主義ではないという
ことを主張しているところをみると、イスラエル政策について少しでも物申す
ことで、すごい反発が起こったり、圧力がかかるのだろうなぁと思う。
何度も弁解を書いたところで、結果は同じだと思うけど。

パレスチナの問題はよく知らないけれど、前々から気になっていた。
和平に向かったと思えば、対立の繰り返しで、泥沼状態なイメージがあった。
この本に書かれてることをどこまで信用していいかはわからないけど、
アメリカのイスラエルに対する肩入れは並々ならぬもので、想像を遥かに超える
ものだったから驚いた。アメリカ国内でのイスラエル・ロビーの組織力と
統率力に、底無しの恐ろしさを感じる。

これを読んでいると、パレスチナに平和が訪れることはないんじゃないか・・・と
思えてしまう。信仰する宗教が違っても、相手を思いやる優しさが少しでもあれば
こんなことにはならないのになぁ・・・と思う私は、激甘さんなんだろうけど。
大国の利害に振り回される、何の関係もない人々が本当に気の毒に思える。