しばのずしょりょう

読んだ本などの感想をひたすら書く所。

中庭の出来事

2007-02-22 09:09:04 | ミステリ・サスペンス
中庭の出来事中庭の出来事
恩田 陸

新潮社 2006-11-29
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恩田陸作「中庭の出来事」を読む。

ホテルの中庭で催されたパーティで、脚本家が不可解な死を遂げる。
周りにいた次の芝居の主演候補の女優達3人の中に容疑者がいるようだが・・・。
芝居と現実が交錯しながら、話は進められていく。

恩田さんの作品は、結構好きなのだが、これはちょっとわからんかった。
何回も読めばわかるのかなぁ・・・。どこまでが芝居の脚本で、どこからが現実で
起こっていることなのか。交錯させるアイデアは、めっちゃ良いと思うねんけど、
何かもうゴチャゴチャになってしまった感じで、もったいない。
素材は好きだけど、料理としては完成してない感じと言いましょうか・・・。
でも、ラストに向かっての緊迫感は、すごく出ていたと思う。

都市の遺言

2007-02-18 00:39:21 | ミステリ・サスペンス
都市の遺言都市の遺言
森村 誠一

祥伝社 1997-09
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森村誠一作「都市の遺言(いごん)」を読む。

ある電話番号にかけると、複数人数で無料で話せる混線という現象が起きる
ことがある。偶然、この番号に電話をかけた5人の若者は、「混線クラブ」と
名付け、交流を深めていた。しかし、メンバーが1人ずつ消え、死んでいく。
その死の謎を残りのメンバーが追う・・・というような話。

森村作品は、久しぶりに読んだ。
当たり前の結末にならないところが森村さんらしいのだが、ちょっと突拍子
すぎるというか、何となく終わり方が残念で、すっきりしない。

伝言ダイヤルが、今の時代ではもう廃れていて、すっかりインターネットに
とってかわられているので、今読むと、少し古いように感じるかも。
でも、ネットも電話線を使って通じているから、似たようなもんか。
時代を経ても、人間がやろうとしてることって同じやねんなぁ。

れんげ野原のまんなかで

2007-02-16 01:57:20 | ミステリ・サスペンス
れんげ野原のまんなかでれんげ野原のまんなかで
森谷 明子

東京創元社 2005-03-01
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森谷明子作「れんげ野原のまんなかで」を読む。

秋庭市の外れのススキ野原に新しく建てられた秋庭市立秋葉図書館で働く文子。
本好きの頼りになる先輩司書達に見守られながら、日常業務をこなしている。
町の外れにあるので、利用者も少ない図書館なのだが、そこを舞台にした、
様々な事件が起こる・・・というような話。

職場の人に勧められて読んだのだが、図書館司書の人は読むべき!
かなり共感できるところがあると思う。
元々司書の人って、フツーより好奇心が旺盛な人が多いような気がするので、
色んな事件に首をつっこみたがるのもわかる気がするし、ちゃんと図書館の
資料を使って、謎を解いていくのも面白いし、勉強になる。
内容も季節感が出てるし、軽いミステリとしても楽しめる。

ただこれを読んで、自分は司書として、全然あかんなぁ・・・と反省した。
まだ誰がやってもできるレベルのことだけしかできていない。
読んでて、かなりグサグサ刺さる言葉もあり、ちょっと悲しい。
でも、すごく仕事に対するモチベーションが上がった。
いつか図書館のプロになれるように、日頃から惜しみなく努力しないと
いけないなぁと、しみじみ思うのだった。
でも、基本辞書も所蔵していないうちの図書館って・・・orz

生かされて。

2007-02-15 01:44:30 | ノンフィクション
生かされて。生かされて。
イマキュレー・イリバギザ スティーヴ・アーウィン 堤江実

PHP研究所 2006-10-06
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イマキュレー・イリバギザ作「生かされて。」を読む。

ルワンダで大虐殺が始まって、1人のツチ族女性の幸せだった日々は終わりを
告げた。家族と離れ離れになり、小さなトイレに身を隠し、恐怖に怯え、
時に怒り、悩み苦しんだ。しかし、神に祈り続けることを忘れず、未来への
希望を捨てずにいた彼女は、神の声に耳を傾け、数々の奇跡を目の当たりにし、
再生する・・・というような話。

これもまた被害にあったツチ族の人が書いた本なのだが、この作者のすごい所は、
加害者を最終的に赦していることにある。この前の「ルワンダ大虐殺」を読んだ
時に、加害者を赦すなんで、とてもできたものではないと感じた。
赦すにはものすごい心のエネルギーが必要になると思う。
虐殺を目の当たりにして、心に深い傷を負った人には、難しいと思った。
でも、イマキュレーさん(作者)は、篤い信仰心で、憎しみから自分を解放した。
本当にすごいことだと思う。

憎しみ続けることは、赦すことと同じくらいエネルギーを使うんじゃないかと
思う。だから前に「ルワンダ大虐殺」を読んだ時、憎しみから逃れられずに
苦しんでいる作者に、早く心が安らげる日が来るように祈らずにはいられ
なかった。赦すことで次のステップへ進んだイマキュレーさんのように
なってほしいと心から思う。

この本からも、家族に対する愛情がすごく伝わってくる。彼女の両親は、
困った人達には手を差し出すことを惜しまない人だった。そんな両親と共に
暮らし、深い愛情に包まれて育ってきた作者だからこそ、ここまで強く
生きて来られたんじゃないかと思う。

辛い時や絶体絶命の時でも、笑顔を忘れず、決して諦めないこと。
自分で夢を強く思い描くのを忘れないこと。
生きる上で、とても大切なことをたくさん、この本から受け取った。
普段の生活の中でそのことを忘れそうになったら、またこの本を開こうと思う。

火天の城

2007-02-14 19:42:24 | 歴史・時代小説
火天の城火天の城
山本 兼一

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山本兼一作「火天の城」を読む。

信長の命を受け、安土山に築城することになった岡部又右衛門。
しかし、それは今までにないスケールの大きな城作りであった。
次々と繰り出される信長の無理難題に応えつつ、時に築城を良く思わない
間者達の妨害に合い、自然災害に脅かされながら、多くの人の手で城は
着々と建てられていく。息子の以俊と協力しながら、ついに完成させた城は、
誰も見たことがないような素晴らしい城だった・・・というような話。

建ててすぐに焼け落ちてしまった幻の城・安土城。
この本を読んでいると、焼け落とされてしまったのが残念でならない。
どこまでが史実で、どこまでがフィクションなのかはわからないけれど。
素材にこだわり、これだけは!というところでは妥協せず、時には
臨機応変に城と真っ向から向き合う又右衛門の生き方がかっこいい。

ただ、間者の妨害とか、フィクションとして描くとすれば、
もっと色々派手に何かあっても良かったかも。
本の装丁が素晴らしい。時代小説でこんな凝った装丁をする本があるんだなぁ。

使命と魂のリミット

2007-02-03 20:16:03 | ミステリ・サスペンス
使命と魂のリミット使命と魂のリミット
東野 圭吾

新潮社 2006-12-06
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東野圭吾作「使命と魂のリミット」を読む。

大学病院で研修医をする夕紀は、誰にも言えない秘密を胸に秘めて、医者に
なることを志した。動脈瘤で死んでしまった父の手術に疑問を感じていたのだ。
昼夜問わず、仕事に追われる夕紀だが、ある日、病院に対する脅迫文を発見する。
そこから次々と奇怪な事件が起こる。そして、大企業の社長の大手術の日、
とんでもないことが起こってしまう。夕紀達は、その危機をどう乗り越えるのか、
医者とは、その使命とは・・・?を問う医学サスペンス。

東野さんらしい作品だなぁという印象。
この前の「赤い指」よりは、こっちの方が好きかなぁ。
夕紀と病院を脅す犯人の視点が入れ替わりながら、話が進んでいくのだが、
展開の仕方がスムーズなので読みやすかった。

ただ、もっと悪い人が出てきても良かったかも。
みんな結構お人好し過ぎるかなぁ。犯人にしても。
でも、人間の良心と果たすべき使命についてが主なテーマに
なっていたから、その点から考えると、いい話だったと思う。

家族の肖像

2007-02-02 23:07:43 | 家族もの
佐川光晴作「家族の肖像」を読む。

愛人の元へ行ったまま5年間、自宅に帰って来なかった夫とやり直すことに
なった陽子。娘には、父は単身赴任していると嘘をつき、何事もなかったかの
ように3人で生活を始める。しかし、夫が自分がとってきた行動に対して、
余りにも罪悪感を感じていない様子なので、陽子は複雑な心境に陥る。
そして、ついにそのストレスがピークに達して・・・というような話。

これも芥川賞にノミネートされた作品。雑誌(文學界06年12月号)で読んだ。
今まで読んだ中では、一番自分の好みに合う作品だった。

夫に本音をぶつけたいけれど、家庭を再崩壊させるのではないかという恐れから
何も言えない女性の揺れ動く心境の描き方が上手い。娘と夫がすごく仲良く
なっていくのが、嬉しいような悔しいような、複雑な気持ちが痛い。
私がこの女性の立場だったら、さっさと離婚してるだろうなぁ。
こんなに我慢しない。

最後の方で急展開するので、ちょっとビックリ。ずっと言えなかった本音が、
こういう時にポロリと出るのが皮肉な感じ。でも、救いようのない話では
なかったので良かったと思う。

植物診断室

2007-02-01 21:10:10 | その他
植物診断室植物診断室
星野 智幸

文藝春秋 2007-01
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星野智幸作「植物診断室」を読む。

中年で独身の寛樹の楽しみは、植物診断を受けることと、ブラリと知らない街を
歩くこと。子持ちでない寛樹だが、何故か子どもに好かれてしまうところがあり、
それがきっかけで、離婚したばかりの家庭の子どもの遊び相手を務めることに
なるが・・・というような話。

これも芥川賞にノミネートされた作品。単行本が職場になかったので、
これまた雑誌(文學界06年9月号)で読んだ。

ほのぼのしてるけど、何かが欠けてるような喪失感がある。
それが何なのかを、子どもとの触れ合いで探している気がする。
話の終わり方が好き。診断に行かなくても、満たせるものを見出したのだろう。

この話の中に出てくる植物診断って、本当にあるのだろうか。
自分が植物になるってどんな気分なんだろう。