『宮崎県で起こったこと』を紹介します。
山本正樹さんがメールでいただいた文章で、宮崎の農場の方がお書きになったものだそうです。ひとりの職業人生の、一幕です。
何十人と獣医師が来たけどよ。
かき集められた経験の浅い獣医師たちは、
母豚を怖がってまともに注射も打てんちゃが 急所は首筋の血管なのによ、
柵の外から身を乗り出して、お尻に打とうとするわ、バカじゃねーか!
豚だって生きちょっし痛いから、ひょいとお尻を動かして逃げるわな。
しょうがねーかいよ、俺が柵に入って豚の首をガシって押さえつけてやる始末。
首筋に注射を打つやり方を教えたっちゃけど、ダメじゃわ・・・
もう、豚の首は、突き刺した注射のあとだらけ、痛々しいわ。
豚はギャーギャー暴れるわ 獣医師の免許をもっちょる奴しか、殺したらいかんかいよ。
手がだせん・・・ かわいそうでよ
でもな、みんな目に涙を浮かべながらも作業してくれてるし、
手を合わせてくれる人もいる。 命を救うための獣医師がよ。
今まで、命を助けるために、動物に声をかけ、一生懸命働いてきた獣医師がよ・・・
この注射を打ったら、こいつが死ぬって分かりながら、注射を打ちこむんよ。
そりゃあ、人としてつらいし、心が痛いわなぁ。歯を食いしばるしかないのかよ!
俺はさ、もともと出荷のための豚なら、なんとかあきらめがつくんよ。
出荷だと思えばいいちゃかい。 でも、母豚はよ。俺がこの農場に努めだしてから
ずっと面倒見てきたっと、性格もよく分かる。顔見りゃ名前も、出産した回数も、
病気した時、エサを腹いっぱい食って喜んだ時。悪ん坊や、甘えん坊、気性の荒い奴、
優しい奴、み~んな分かる。共に生活してきた家族やっちゃかい。
蹄疫に感染してしまって痛々しい症状が出てる奴は、鼻や口の水疱が破けて痛いもんやから
エサが食えんなっちょる。それでも腹はへるかい、えさを探すわな。
痛いやろうに・・・ まともにエサが食えんかい。今日まで俺が食べさせてやってた。
鼻も口元も、蹄も乳首も痛々しいのに、俺を見つめる目はやさしくてよ。
なんだか、向こうがごめんよ~言ってるみたいや。ありがとう言ってるのかなぁ(T-T)
注射打たれる姿に耐えられんで離れたところから見てたら、獣医師の腕をふりほどいて、
こっちに走ってくっとよ。 ひずめが炎症起こして血を流してるもんは、
痛いから立ち上がれんでずっと横になってギャーギャー言ってる。
でも、立ち上がらせて殺処分するところまで連れて行かんと、重いかいよ。
まず鎮痛剤打つっちゃわ。したら、痛みが取れるもんじゃかい。ひょいっと立ち上がる。
でも蹄からも血が出て、腐りよっかい 蹄が取れていくとど・・・
赤くなった蹄だけが地面に転がってるんやど・・・ それでも、蹄が無くなった足で、
俺の所に駆け寄ってくる はやくなんとかしちゃれよーーーー!(T-T)
ある程度の大きさの奴は、電気で殺すっちゃわぁ でっかい火ばさみみたいな物で、
まず頭を挟んでな、スイッチを入れると高圧電流が流れ、失神する。
そしてそのあとに、胸の所を挟んで、心臓に電流を流すとガタガタガタとしびれて
心臓を止めて殺すとど・・・かわいそうやんけ。
さっきまで、元気で、震えて泣きよったやつが。突然静かに死体となるんよ。
たださ、時々、その動かなくなった豚を運んでたり、穴の中に落とした時に、
生き返って動き出すやつがおるんよ。気絶してただけなんやろうな。
哀れでなぁ、また殺さにゃいかん・・・。
まだまだ元気な奴らはさ、どんどん穴ん中に落としていく、
みんなで板を使って追いやって穴に落としていく。 一番下に落とされた豚たちは、
熱と重さで圧死ししていくけどよ。後から後から落とされた豚は、
どんどんジャンプして穴から必死に飛び出ようとするんよ。
その生きようとする動物の必死さにまた泣けてくっちゃがぁ(TへT) その上から
ブルーシートをかぶせてよ、コンパネの板を上において、飛び出してこんように、
俺たち人間が上に乗るっちゃわぁ・・・ それでん、下から・・ドンっ!ドンっ!
て必死にぶつかってくっとよ。
ブルーシートの隙間からホースを入れて、中にガスを流し込むんよ・・・
すると、だんだん静かになってきてよ、しばらくするとシーンとなるんよ(T-T)
ちくしょーーーーー! 豚舎の中が、ギャーギャーって今まで聞いた事もないような
泣き声があちこちから聞こえるかいよ。 赤ちゃん子豚が不安な様子でジッとしちょっちゃわ。
病気に感染した奴は、蹄から血を流して痛いし、おっぱいが飲めんかい コロっコロっ死んでいく。
それでも、豚舎が違ってたりで感染していない元気な奴もいっぱいおる。
敷地が一緒やかいて、経営者が一緒だってだけで 殺さにゃいかんとか!
本当に、この子達も殺さにゃいかんとか!
周りの異常な雰囲気を感じちょっちゃろうね ひょいっと両手で掴み上げるわ
すると、身体をグッと堅くして、不安げに身体をブルブル震えてるのが手のひらから伝わってくるとよ。
ごめんなぁ、ごめんなぁ。俺が泣き出してよぉ
その身体に注射針が刺されて、静かに、ぐったりと手の中で重みだけを感じる物体になる
さっきまで硬かった子豚の力が抜けて、何の力も入らない柔らかい物になるんよ。
もうどんだけの涙が流れ出たかわからん
帰ってくる時・・・空気を送り込むファンのスイッチを切ってきた。
家に帰ってよ。風呂に入ってよ。飯はよう食わんかい。
焼酎飲みながらテレビをみてるとよ 俺・・・いつのまにかボロボロボロ泣いてるっちゃわ
今頃、眠るように死んでってるんだろうなぁ・・・・。
お前よ。豚は言葉がしゃべれんけんどよ。もしもよ、お前の子供をよ、「なんで?」って言われながらよ。
国からの指示やかい言うて・・・大好きなのに・・・手の中で殺せるか。
山本さんも愛情を感じていましたが、私も愛情を感じます。