星は月になりたい

このブログは、詩や小説などを載せていきたいと思っています。

キッカケ

2008-04-05 18:30:01 | Weblog
朝の光が差し込む電車の中で、君はいた。
いつも僕の近くに座って、たまにこっちを見ては目を逸らして、顔が赤くなる。

そんな君が好きで、わざとじっと見つめて、いじめたりもしてみた。
君はそんないたずらに、ちょっと困った顔をして、いつも読んでいる本で顔を隠す。
そんな仕草さえ、可愛くて、笑いを堪えるのが大変だったよ。
でも、ちょっとかわいそうだったかな?

でも君は嫌そうではなかったから、構わずに君を目で追っていたよ。

なんのキッカケもないまま、話すのは嫌だから、だから待っていたよ、キッカケを。


「本!君のだろ!!」
「えっ!?」

パシッ……-

「気をつけろよ。じゃな」

電車のドアが閉まってから、微かに聞こえた「ありがとう」が嬉しくて。
君が見えなくなっっても、君のあの笑顔が可愛くて……つい顔が緩んでいた。