彼の怒りの原因が自分だとすぐにわかる。
俺は何も答えないまま、ソファーに座った。
「何もないです」
いつもより低い声で答えた。
いつもと違う雰囲気。
何かが確実に崩れていく音が聞こえて聞こえて気がした。
何かを自分に隠していること。
何かが兄さんの体を蝕んでいるということ。
だから聞いたんだ。
何を隠しているのか。でも答えは思い通りだった。
『なんでもない』
それは、問題ありのサインと俺は勝手に思っている。
「何にもない?そんな分けないだろ」
少し怒り気味に怒鳴ってソファーの前に立った。
兄さんはコーヒーを見つめたまま顔を上げようとしない。
時計の針の音が静かに鳴り響く。
「何にもないと言っているだろ」
いつもと違う口調。
本音ということだ。
でも、眼はコーヒーを見つめていた。何かあったんだと確信に入る。
「いってくれ」
「言ってどうする。お前には関係のないことだ」
静かに立ち上がって俺を通り過ぎようとした。
「待てよ」
肩を強く掴んで呼び止める
「兄さんが目を見ないのは隠し事があるからだろ」
「そんなことない。だから離せ」
「病気とかなんだろ!!」
感極まって怒鳴りつけてしまった。
すると、兄さんの肩から力が抜けるのがわかった。
そして……
「すみません」
沈黙。
長い沈黙。
そして口を開いたのは兄さんのほうだった。
「いつか話すから、お願いだ……もう少しだけ待ってくれ」
そういうと、またいつもの咳をして流しに向かって走った。
「兄さん」
「くっ……俺は……まだ分からない」
ザーっと流れる水の音しか聞こえなかった。
ただ、何かを呟いた気がした。
兄さんの壊れていく何かが、ほんの少しだけわかった気がした。
それは尊くて。
儚くて。
生きていても掴みにくいもの。
それが何かとは確信できるまで、何も言うことはできない。
「兄さん。俺には何もできないのか」
小さく囁いた。
聞こえないくらい小さな声で。
「それじゃ、俺……」
「宮…っ」
聞こえてきたのは何か大きなものが倒れる音。
「えっ」
そこにいた兄さんが床で息もしないで倒れていた。
「兄さん!!」
駆け寄って、抱き上げてみる。
返事がない。
息もない。
青白くなっていく。
冷たくなっていく。
闇へと引きづいりこんでいく。
「兄…さん……嘘だろ……誰か…誰か」
考えが浮かばない。
目の前で何ができるか分からなくなった。
自分が目の前で死んでいくような感覚。
そんなパニックの中インターホンが鳴った。
誰か来たんだと遅れてわかると、兄さんを床に寝かせて走った。
勢いよく開けた玄関ドアには、渚と津森がいた。
「どうしたの、蒼白な顔して」
「兄さんが死んじゃう」
「何!?」
その言葉で渚と津森のの目つきはかわった。
津森はすぐに救急車を呼んで、渚は兄さんの状況をみた。
「宮君、手伝って」
やはり、呼吸はしていないようだ。
慌てて駆け寄り渚を見つめて何をしたらいいか真剣に理解しようとした。
「わかった。」
学校でおぼろげに覚えている心臓マッサージ。
強く、心臓を両手で押し、人工呼吸を俺は兄さんにした。
「光君!!しっかりして!!光君!」
「兄さん!」
外で救急車の音が聞こえてきた。
昔の事を思い出す。
色んな記憶が蘇る。
兄さんが運ばれていくのを見ていることしかできなかった。
「宮君行こう」
そっと優しく背中に手を置いて顔を覗いてきた渚の顔が涙で滲んでいた。
「大丈夫だ。行こう」
津森が自分の肩をしっかり掴み、渚の手を握り救急車に乗り込んだ。
俺は何も答えないまま、ソファーに座った。
「何もないです」
いつもより低い声で答えた。
いつもと違う雰囲気。
何かが確実に崩れていく音が聞こえて聞こえて気がした。
何かを自分に隠していること。
何かが兄さんの体を蝕んでいるということ。
だから聞いたんだ。
何を隠しているのか。でも答えは思い通りだった。
『なんでもない』
それは、問題ありのサインと俺は勝手に思っている。
「何にもない?そんな分けないだろ」
少し怒り気味に怒鳴ってソファーの前に立った。
兄さんはコーヒーを見つめたまま顔を上げようとしない。
時計の針の音が静かに鳴り響く。
「何にもないと言っているだろ」
いつもと違う口調。
本音ということだ。
でも、眼はコーヒーを見つめていた。何かあったんだと確信に入る。
「いってくれ」
「言ってどうする。お前には関係のないことだ」
静かに立ち上がって俺を通り過ぎようとした。
「待てよ」
肩を強く掴んで呼び止める
「兄さんが目を見ないのは隠し事があるからだろ」
「そんなことない。だから離せ」
「病気とかなんだろ!!」
感極まって怒鳴りつけてしまった。
すると、兄さんの肩から力が抜けるのがわかった。
そして……
「すみません」
沈黙。
長い沈黙。
そして口を開いたのは兄さんのほうだった。
「いつか話すから、お願いだ……もう少しだけ待ってくれ」
そういうと、またいつもの咳をして流しに向かって走った。
「兄さん」
「くっ……俺は……まだ分からない」
ザーっと流れる水の音しか聞こえなかった。
ただ、何かを呟いた気がした。
兄さんの壊れていく何かが、ほんの少しだけわかった気がした。
それは尊くて。
儚くて。
生きていても掴みにくいもの。
それが何かとは確信できるまで、何も言うことはできない。
「兄さん。俺には何もできないのか」
小さく囁いた。
聞こえないくらい小さな声で。
「それじゃ、俺……」
「宮…っ」
聞こえてきたのは何か大きなものが倒れる音。
「えっ」
そこにいた兄さんが床で息もしないで倒れていた。
「兄さん!!」
駆け寄って、抱き上げてみる。
返事がない。
息もない。
青白くなっていく。
冷たくなっていく。
闇へと引きづいりこんでいく。
「兄…さん……嘘だろ……誰か…誰か」
考えが浮かばない。
目の前で何ができるか分からなくなった。
自分が目の前で死んでいくような感覚。
そんなパニックの中インターホンが鳴った。
誰か来たんだと遅れてわかると、兄さんを床に寝かせて走った。
勢いよく開けた玄関ドアには、渚と津森がいた。
「どうしたの、蒼白な顔して」
「兄さんが死んじゃう」
「何!?」
その言葉で渚と津森のの目つきはかわった。
津森はすぐに救急車を呼んで、渚は兄さんの状況をみた。
「宮君、手伝って」
やはり、呼吸はしていないようだ。
慌てて駆け寄り渚を見つめて何をしたらいいか真剣に理解しようとした。
「わかった。」
学校でおぼろげに覚えている心臓マッサージ。
強く、心臓を両手で押し、人工呼吸を俺は兄さんにした。
「光君!!しっかりして!!光君!」
「兄さん!」
外で救急車の音が聞こえてきた。
昔の事を思い出す。
色んな記憶が蘇る。
兄さんが運ばれていくのを見ていることしかできなかった。
「宮君行こう」
そっと優しく背中に手を置いて顔を覗いてきた渚の顔が涙で滲んでいた。
「大丈夫だ。行こう」
津森が自分の肩をしっかり掴み、渚の手を握り救急車に乗り込んだ。