『男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW』
(무적자/無籍者)
(2010.09.16韓国公開、2011.02.19日本公開)
日本公式サイト
男たちの挽歌 A BETTER TOMORROW - goo 映画
무적자-CINE SOUL MOVIE
香港ノワール映画『男たちの挽歌』の韓国版リウェーク。
でも、香港のノワールとは、ちょっと違った味わいでした。
Vシネマのような迫力のアクションと、
豪華韓流スターが共演する男の友情と兄弟愛に涙する映画。
でも、私にとっては、ベースにある脱北者の設定が印象深かったです。
以前『クロッシング』と言う映画を見たからかもしれません。
あの映画の男の子が、国境を越えて韓国に渡っていたら…。
この映画の人物たちのように、黒社会に堕ちてしまっていたんだろうか。
必死の思いで、生きるために国境を越えたのに…。
南北分断を抱えた韓国の現実の一面を感じる映画でした。
**** あらすじ&解説-goo映画より ****
脱北の際、生き別れになった兄弟がいた。
数年後、兄のヒョク(チュ・ジンモ)は同じ北朝鮮出身のヨンチュン(ソン・スンホン)と共に
武器密輸組織の幹部にのし上がっていた。
ヒョクは、弟・チョル(キム・ガンウ)との再会を果たすが、チョルは自分を見捨てた兄を許さない。
やがて最後の仕事でタイに渡ったヒョクは、仲間のテミン(チョ・ハンソン)の裏切りで逮捕されてしまう。
出所して帰国したヒョクだが、すでに組織はテミンが牛耳っていた。
そして弟チョルは警察官となり、組織の摘発に乗り出していた。
********
まずは、豪華な韓流スターのキャストをご紹介。
↑こちらの写真の右から。
かっこいい兄貴ヒョク=チュ・ジンモ。
(髭の叔父さんは、脇役で)
真ん中が、組織の社長の甥でありながら、臆病者のテミン=チョ・ハンソン。
左が、銃の腕前も度胸もイケメンぶりもすべて揃ったヨンチュン=ソン・スンホン。
この3人は、こんな風に変わっていきます。
服役し、出所してからはまっとうな道を歩もうとするヒョク兄貴。
ヒョク兄貴の敵を討ったものの、
足を負傷して障害が残り、落ちぶれてしまうヨンチュン。
このキャラクターが、良かった!
兄貴たちを裏切り、組織のトップに立つテミン。
むっちゃ腹立つ裏切り者です。
そして、ヒョク兄貴が北朝鮮に残してきてしまった弟・チョルは、キム・ガンウが演じます。
脱北者の苦悩を見事に表していて、さすがキム・ガンウだ!
キム・ガンウの演技が真に迫っていたからでしょうか?
私は、以前見た映画『クロッシング』の男の子が頭から離れませんでした。
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『クロッシング』は、ごく普通のお父さんと男の子の話です。
学校から帰ったら、仕事を終えたお父さんを待って、一緒にサッカーをする。
本当に、どこにでもいる、普通の家族。
ただ、北朝鮮という国に住んでいるというだけで、父と子が、かなしい運命に翻弄されます。
お母さんが病気になり、お父さんは、国境を越えて薬を調達しに行きます。
そこで、脱北者になってしまいます。
お母さんがなくなり、北朝鮮に残された男の子も脱北を試みます。
南で待つお父さんの所へ向かいます。
死ぬ思いをして国境を超える男の子。
必死で、ただ、生きるために国境を越えたはずなのに。
南に行ったら、そのあとは、
ヒョク、ヨンチュン、チョルのように生きなくてはいけないのでしょうか?
ラスト、テミンの一言で、チョルは最後の行動を決断します。
脱北者は、南に行っても弱者。
やりきれません…。
南北分断を抱える韓国の現実の一面なんですね。
あ、そっか…。
この映画は、『力道山』や『私たちの幸せな時間』ソン・ヘソン監督の作品です。
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韓国では弱者である在日朝鮮人の力道山や、
声を発する権利のない死刑囚の心情を丁寧に描いた2作品です。
hoppenの韓的な日々♪より
『私たちの幸せな時間』:劇場鑑賞(2007.07.28)
この映画でも、ソン・ヘソン監督の丁寧なキャラクターの心情表現が、
印象に残ったのかもしれません。
韓国は、強者と弱者の色分けが、まだ、色濃く残っている側面があります。
韓流ドラマで、
御曹司や、孤児の設定、海外へ養子に出されるという設定などが頻繁に出てくるのも、
その側面が残っているからかもしれません。
障害者に対しても偏見が残っているのか、
この映画の中でも、足の障害を持つヨンチュンに対して、洗車の客が平気な顔で、
「何だ、障害者か」というセリフを吐くシーンがありました。
ソウルの街を歩いても、道路の整備はされていないし、
深く掘られた地下鉄には、エレベーターはほとんどありません。
エスカレーターはありますが、階段だけの個所が多くて、乗り換えも長く歩かなくてはいけません。
お年寄りや障害者の方は、出かけることは困難だろうなぁと感じます。
でも、この映画を見て、こんなことを感じた人って、私くらい?かも?
あれこれ書いたけど、それは参考くらいで。
こんなにあれこれ考えなくても、映画ならではの面白さを感じてもらえればOKな映画だと思います。
韓国映画ならではの迫力あふれるアクションや、韓流スターの力の入った演技を、
公開している間に、ぜひ、劇場で楽しんでください。
余談ですが。
韓国では、北朝鮮のことを『北韓(ぽっかん)』と呼びます。
北の韓国、という意味でしょうか。
映画の中で、確かめてみてくださいね。
北朝鮮では、韓国のことを『南朝鮮』と呼ぶようです。
東京映画祭でみて、その後も何度も見て居るのですが・・
実は一度も泣けなかったのです
が、
先日来日したチュジンモさんのインタビューで
脱北者の今日的課題、南での疎外感を知り、
今回は、・・泣けました。
これはノアールじゃない^^
人間ドラマだ・・
脱北しても、
待ち受ける過酷な環境で
裏社会の手づるでしか弟を捜せない脱北者ヒョク。
キーワードは脱北者でした^^
ラストシーンの監督の選択に、
強烈なメーセージを感じました。
弟チョルの選択に・・ようやく納得が出来・・
泣けました^^
どのレビューを読んでも、
隔靴掻痒でしたが・・
共感出来るレビューにようやく出会えました^^
有り難うございました!!
共感していただけて、とても嬉しいです!
ありがとうございます。
私は香港ノワールも大好きなのですが、
オリジナルの『男たちの挽歌』は見ていません。
香港は、長い期間、中国でありながらイギリスの領土と言う特殊な地域であったため、
独特のノワールが生まれたのだと思います。
オリジナルのファンの方は、韓国版に抵抗のある方も多いかも。
でも、オリジナルに引きづられることなく、
韓国の内面を表現しているところに、
韓国映画のパワーを感じました。
ラストシーン。
チョルの心情を考えると、やはり…と思ってしまいますね。
チュ・ジンモssiもインタビューで語っていたんですね~。
スタッフも、キャストも、同じ思いで作品づくりに臨んでいたんですね。
映画の中で、チョルと先輩刑事の間柄を見ていると、
個人的には互いに信頼し合える仲になれるのに、
社会の中での疎外は、強く残ってしまうんでしょう。
北朝鮮のニュースを聞くたびに、
すぐ近くの国で、人間性を傷つける行為が行われていることに、憤りを感じます。
でも、こうして、映画を通してその事実を再認識することしかできません。
『クロッシング』は、強く心を打つ映画です。
ヒョク、ヨンチュン、チョルが、どうやって国境を越えてきたのか?
それを知ると、一層、『男たちの挽歌』に込められた想いが増すかもしれません。
お時間と心の余裕があれば、ご覧になってみてくださいね。