小池代表の「踏み絵」は当然の行為だ  ダイヤモンド・オンライン

小池代表の「踏み絵」は当然の行為だ  ダイヤモンド・オンライン
 ダイヤモンド・オンラインに上久保誠人立命館大学政策科学部教授の「小池代表の『踏み絵』は政策別政界再編を目指す上で当然の行為だ」が掲載された。

 希望の党に公認申請した民進党出身の候補者に対して、小池代表は独自の基準で選別する「排除の論理」を持ち出した。その結果、公認を得られず路頭に迷った「自称リベラル派」の議員が「立憲民主党」を結成した。衆院選を前にして、野党陣営の分裂という「混乱」を起こしたとして、小池知事・前原代表が批判されていることに対して、上久保教授は、4年前から主張してきた「政策別野党再編」という「政界の創造的破壊」の実現であるとして、高く評価している。

上久保教授は、国民の野党に対する根強い不信感は突き詰めると政策志向がバラバラな政治家が集まっている「寄り合い所帯」(私は保守・左翼の混在と言っている)が原因であったと指摘し、1993年に、「55年体制」成立後初めての「非自民政権」だった細川護熙政権と羽田孜政権が混乱の末に退陣した時から「寄り合い所帯」というのが、常に付きまとってきた深刻な問題であると述べている。

2009年から約3年間の民主党政権も、「寄り合い所帯」(保守・左翼混在)が原因で、憲法、安全保障、財政・税制など基本政策を巡って、党内が分裂して足を引っ張り合うような醜態を晒し続けた。そのために国民の不信感は頂点に達したと上久保教授は述べている。
もし、小池代表が「排除の論理」を持ち出すことなく、全ての民進党出身の候補者を希望の党の公認候補としていたら、小池代表が民進党を丸ごと受け入れることは、小池代表が「民進党代表」に就任するのと同じことになり、選挙で敗色濃厚な党が、人気のある大衆政治家を代表にして、なりふり構わず生き残ろうとしているという「究極的な大衆迎合」だとマスコミの批判が巻き起こったはずだと上久保教授は予想する。

上久保教授は、小池代表が改憲や安全保障政策といった基本政策の一致で、民進党候補者を「選別」したことは、間違っていないと述べ、国民には根強い「寄り合い所帯」に対する不信感があるのだから、それを払拭することが、政権を担当する政党たり得る資格を得る第一歩なのであると述べている。

上久保教授はリベラル派批判も展開する。
 マスコミでは小池代表が厳しく批判されて、「希望の党」への期待が次第に萎んでいる一方で、排除された「自称リベラル派」が結成した「立憲民主党」の支持が高まりつつあるという。小池代表の「踏み絵」を踏まなかったことが、「筋の通った行動」とマスコミが評価していることについて批判する。
「自称リベラル派」のほとんどが「希望の党」の公認を得るつもりだった。前原代表が「みんなで希望の党に行きましょう!」と演説した時、みんな拍手喝采していた。小池代表が「保守色」が強い政治家であることは、百も承知であったはずなのに、「基本政策の違いなんか、大したことない。とにかく小池代表の人気にあやかって、当選することだ」とリベラル派が考えていただろうと上久保教授は指摘して、
「リベラル派は『基本政策の不一致』を理由に、希望の党から公認を得られないことがわかってから、慌てて騒ぎ出したのだ。「筋が通っている」というならば、前原代表が最初に『合流案』を提案した時に、反対すべきだったではないか。この過程を時系列的に整理し直してみれば、『自称リベラル派』の行動こそ、実は筋が通っていないのである」
と、リベラル派のほうが筋は通っていないと述べている。
 リベラル派の多くは旧社会党系であり、北朝鮮を理想国家と考えるチュチェ思想家も多い。彼らはチュチェ思想家であることを隠している。リベラル派は左翼であるのに民進党では左翼であることを隠して保守派と同居していたのだ。

立憲民主党の立候補者62人のリストを見て上久保教授は、
「正直、厳しい状況だと思った。小選挙区で勝てるのは、枝野幸男氏、荒井聰氏、赤松広隆氏、近藤昭一氏くらいではないだろうか。長妻昭氏、辻元清美氏、菅直人氏は難しい。他は正直、勝てる感じが全くない。要は、政治家個人としての魅力がない人ばかりなのだ」
断じている。

 上久保教授は、民進党のリベラル派を「自称リベラル」と称しているが、その理由は彼らが実は本物のリベラルではないと考えているからであり、本当の「リベラル」は、中道勢力であるからだと述べ、リベラルについて説明している。
「英国で『リベラル』といえば、かつての自由党、今の保守党左派、マーガレット・サッチャー元首相のようは思想信条の政治家と(ちなみにテリーザ・メイ首相やディビッド・キャメロン前首相は、保守党右派=保守主義である)と、トニー・ブレア元首相に代表される「ニューレイバー」、つまり労働党右派のことである。これを日本のリーダー級の政治家に当てはめると、自民党の岸田文雄政調会長、野田聖子総務相、そして民進党右派の前原代表らではないだろうか」
と述べ、立憲民主党や共産党、社民党は、英国でいえばジェレミー・コービン党首率いる労働党左派ということになるが、労働党左派は「左翼」であり、日本の「自称リベラル派」は左翼である。しかし、「左翼」ではイメージが悪く、選挙で票にならないので、「リベラル」という呼称を必死に確保しようとしていると上久保教授は述べている。
そして、
「『自称リベラル派』で正直、小選挙区で勝てるのは、枝野幸男氏、荒井聰氏、赤松広隆氏、近藤昭一氏くらいではあり、長妻昭氏、辻元清美氏、菅直人氏は難しい。他は正直、勝てる感じが全くない。要は、政治家個人としての魅力がない人ばかりなのだ」
と厳しい状況であると予想し、前原代表の「希望の党合流」が 表面化した時点で勝負はついていたと述べている。

一部のメディアや識者が「リベラル勢力の結集」と強調しているのを、いまだに古臭い東西冷戦期の「保守・革新の対立」という構図のまま、物事を考えていると上久保教授は批判し、小池代表・前原代表が起こしたことは、古臭い「保革対立」を超えた、「新しい政治勢力」の誕生という「政界の創造的破壊」だと述べている。その一例として「安全保障政策を争点にしない」という、欧米の自由民主主義国では当たり前である政治を日本で実現したことをあげている。
英国では野党は国内のさまざまな政策課題で激しく政府・与党を批判していても、政府・与党が海外への軍隊の派遣を決定する時は、「首相の偉大なる決断」を称賛する演説を行う。欧米民主主義諸国では、野党は安全保障政策では対立を挑まないし、たとえ政権交代となっても、政策の継続性を重視する。国民の生命と安全がかかっている最重要政策を政争の具にはしない。
欧米の議会でも安全保障政策を巡る議論が行われないわけではない。しかし、日本の、2015年の安全保障法制を巡る与野党の激突のような、とにかく法案を潰すためにありとあらゆる方向から反対するようなことはあり得ない。強固な安全保障体制を確立し、抑止力を強化するためにはどうすればいいかという観点で、建設的な議論が行われる。小池代表と前原代表は、故意犯的に安全保障政策を争点にしないという、欧米の自由民主主義国では当たり前の政治を実現しようとしたと上久保教授は考えている。
そのために前原代表は、最初から小池代表の蛮勇を使って、自ら手を汚さず「自称リベラル派」を追い出すつもりだった。それは立憲民主党が立ち上がった時、『想定の範囲内だ』とコメントしたことからも理解できる。

 小池代表と前原代表は欧米の自由民主主義国のような「安全保障政策を争点にしない」議会をつくるために左翼リベラル派を排除した希望の党をつくった。それは当然のことであると上久保教授は断じている。
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