教育相談室 かけはし 小中連携版

ある小学校に設置された教育相談室。発行する新聞「かけはし」が、やがて小・中3校を結ぶ校区新聞に発展しました。

「奇跡の判定勝」?~亀田人気を考える

2006年08月03日 | スポーツ
8月2日の夜、多くの人の目はリングに釘付けになりました。亀田選手の勝利の瞬間を一目見ようと、横浜アリーナで、テレビ前で、熱い視線がその瞬間に向けられていました。27歳のファン・ランダエダは、今まで一度もダウンしたことがないと言われる実力・経験を備えたベテランボクサー。「亀田は盛りを過ぎた相手としか組んでいないじゃないか」と言われた過去を払拭し、世界に通用する実力を持っていることを示すには申し分のない相手でした。父親を先頭に3兄弟が連なるグレーシー一族のまねをした入場に15000人の観客は沸き返っていました。(息子は「パクッてる」と叫んでましたが)

しかし第1ラウンド終了間際のダウンで亀田の表情は一変します。いつもの「強面(こわもて)」「ビッグマウス」と言われた自信に満ちた表情は吹き飛び、19歳のひ弱な子どもの顔に変わっていました。中盤で連打を浴びせる場面が2回ほどありましたが、手数の割に相手はぐらつかず、逆に終盤の11回・12回は、立っているのがやっとという有様でした。試合終了直後、コーナーに戻った亀田の口は、音声こそ流れなかったものの、「負けた?負けた?」父親トレーナーに尋ねていました。後の結果はご存じの通りです。

亀田兄弟ほどマスコミで取り上げられた選手はいませんでした。亀田興毅がテレビで紹介されたのは、アマチュアデビュー前の中学時代から。亀田興毅選手は卓球少女愛ちゃんに続きテレビ局が作り上げたスタースポーツ選手でした。ローソン・サントリー・京楽産業(パチンコメーカー)はいち早くスポンサー契約を結び(試合中パチンコCMが多かった)ました。特にローソンは、亀田選手と共同開発した弁当など6品目を「亀田の夏祭り」として発売し、試合終了後の3週間で売り上げ50億円を目指していました。中学時代から取材し続けたTBSもこの試合で亀田選手が勝つことを前提に、大晦日恒例のレコード大賞発表を30日にずらし、亀田選手の「世界王座初防衛戦」の放映権獲得に向け動き出していると言われます。勝利を前提として世の中は動いてしまっていたのです。この大人たちの欲望が渦巻く中で、「奇跡の判定勝ち」があったのです。

見る人が見れば勝敗の行方はわかります。耐震偽装・ライブドアー・村上ファンドと続く一連の事件で、「もうかれば何をしても良い」という風潮への批判が高まりました。しかし、またしても金儲け主義が「奇跡の判定勝ち」を生み出し、19歳の子どもをさらし者にしたのです。こんなことが許されるのでしょうか。元WBCライト級チャンピオンのガッツ石松さんは「日本人は立っていれば、チャンピオンになれるの?これがまかり通るなら、僕はボクシング関係の肩書きは何もいらない」と判定に怒り、放映したTBSには一日で抗議電話が4万件も殺到しました。

8月3日に発表された試合当日の平均視聴率は42.4%、瞬間最高視聴率は52.9%という驚異的な数字が空しく響きます。


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