機会があって、5月24日に、評論家の竹村健一さんが毎月1回開いている朝食会に出席して、麻生太郎外務大臣の講演を聞くことができました。演題は「自由と繁栄の弧」。講演のポイントを書いてみます。(※は私のコメントです。)
・この数年で、海外における日本への評価が大きく変わった。昨年、BBCが行なった世論調査で、日本はカナダと並んで、世界に最もよい影響を与えている国と見なされた。一昨年の調査でもそうだった。
※このアンケート調査については、私も2007年3月7日に書いています。
・日本のGDPはアメリカに次いで世界の10.2%をしめる。1400兆円の個人金融資産を持つ。その半分は70歳以上の人々が所有している。
・金は目的ではなく、手段。ところが、日本人はその金をどう使うか知らない。ひたすら黒字をため込む。世界から見ると、薄気味悪いキャラ。
・1990年の冷戦終結以来、世界には新しい国が生まれた。国づくりの最中。日本は60年前の敗戦で、ゼロから立ち直り、ここまで来た。この経験を伝える。
・自由と法の支配という共通の価値観を共有する。
・冷戦以後の日本の経済協力への評価は非常に高い。ポーランドやハンガリーへの民主化支援。紛争後のユーゴへの経済支援。アジア経済危機の時の金融支援。日本の援助を受けた国はよくなり、日本に感謝している。
・アフガニスタンはいま世界の麻薬(ヘロイン)の75%を生産している。その麻薬の密輸を防ぐための洋上オペレーションに日本は協力している。日本は給油艦を出し、イギリスやフランスなどの軍艦に給油援助している。洋上給油は非常に難しいが、海上自衛隊の技術は高く、God's Hand(神の手)とまで言われている。
※NATOはタリバン勢力を制圧するためにアフガニスタンに軍事介入していますが、日本は直接戦闘はしないものの、NATOの軍事活動を背後から支援しているわけです。これは、イラクにおける米軍支援と同じ構造です。
しかし、このような軍事的介入でアフガニスタンが安定するとは思えません。日本の軍事的援助はNATO諸国には喜ばれますが、アフガニスタン国民の幸福にはつながりません。
アフガニスタンの農民がケシ栽培するのも、それが手っ取り早い金稼ぎの手段だからです。アフガン農民が昔のように、通常の農作物で生活できるような基盤をつくってやらなければなりません。干魃に見舞われている土地に灌漑用水を引き、小麦の栽培を支援しているのは、中村哲医師を中心とする民間のペシャワール会です。日本政府はこのような民生支援にこそ力を注ぐべきだと思います。
NATOはいずれアフガニスタンに手がおえなくなり、アフガニスタンから撤退せざるをえないでしょう。
・イラクでは、地上部隊は撤退したが、航空自衛隊はいまも残っている。これに対する評価も高い。
※航空自衛隊は米軍支援の輸送活動に従事しています。航空自衛隊の活動を高く評価しているのは、主にアメリカです。
・イラクでは、アメリカ軍は帰れ、日本は残れ、という声が高かった。なぜ日本だけがイラク人に愛されたのか。フランスがそれを分析して、報告書を出している。それによると、日本は人道復興支援に徹した唯一の軍であったことが理由だ。そして最も規律が高かった。ほかの国の軍隊と違って、無銭飲食ゼロ、婦女暴行ゼロ、脱走ゼロだった。
※ということは、米軍をはじめ、その他の国の軍では、こういう規律違反が生じているということのようです。こんなことをされたら、イラク人は外国軍を憎むはずです。自衛隊がイラク国民から肯定的に迎えられたのは、戦闘は断念し、あくまでも人道復興支援に徹したからです。これはやはり現憲法の歯止めがあったからでしょう。もし自衛とか秩序回復とかの名目で、自衛隊も「テロリスト」を武器で攻撃してよい、ということになったら、自衛隊も他国の軍隊と同じに見られることでしょう。他国軍の規律違反は、テロリストと民間人との区別がつかない状況で「敵」を殺さなければならない心の荒廃から生まれているものと思われます。
・イラクに行った自衛隊員の歓迎式に出たことがあるが、みな実にいい顔の持ち主だった。親や兄弟の顔とはどこか違う。明らかにイラクに行って立派になったのだと思う。
※それは自衛隊員が困難な状況の中で、困った人々のために献身的に働いたからだと思います。もし彼らが、イラクで大勢のイラク人を殺してきたら、決して立派な顔にはならなかったでしょう。日本の役割はあくまでも人道復興支援活動であるべきだと思います。
・自衛隊がやれることは、道路、電気、水道しかない。しかも全部はできない。そこで、人々を集めて議論させ、何をしてもらいたいかをその場で決めさせた。そして、彼らに「This is democracy.」と言った。
・イラク人を労働者として雇ったときには、必ずその日1日分の労賃を、中間に人を入れず、一人ずつ直接手渡した。それは公正さの教育になった。こういうことが、フランスの報告書にちゃんと書かれている。
・そして、やる気のありそうなイラク人がいると、「お前もやってみるか」と言って、ブルドーザーの運転をさせる。仕事を手伝わせる。つまりそれは技術指導で、技術屋を育てることになる。
※自衛隊のこのような活動は本当に素晴らしいと思います。民主化や近代化は、爆弾を落として「テロリスト」を殺してできるものではありません。
・現地の人と一緒に働くというのが、日本人のやり方だと思う。私(麻生)はアフリカで仕事をしたことがあるが、アフリカ人と一緒に働いているアメリカ人やイギリス人は見たことがなかった。
・日本人と一緒にいると、自分が向上する。よくなる。儲かるようになる。
※ここで竹村氏が、「グローバルNATO」について話してくれ、と口を挟んだ。竹村氏は、安倍首相が訪欧のとき、NATO本部を訪れ、講演したことを高く評価している。麻生氏は、日本がNATOに接近したことにより、ロシアは危機感を持ち、日本との関係を改善したがっているように感じる、と答えた。
・この数年で、海外における日本への評価が大きく変わった。昨年、BBCが行なった世論調査で、日本はカナダと並んで、世界に最もよい影響を与えている国と見なされた。一昨年の調査でもそうだった。
※このアンケート調査については、私も2007年3月7日に書いています。
・日本のGDPはアメリカに次いで世界の10.2%をしめる。1400兆円の個人金融資産を持つ。その半分は70歳以上の人々が所有している。
・金は目的ではなく、手段。ところが、日本人はその金をどう使うか知らない。ひたすら黒字をため込む。世界から見ると、薄気味悪いキャラ。
・1990年の冷戦終結以来、世界には新しい国が生まれた。国づくりの最中。日本は60年前の敗戦で、ゼロから立ち直り、ここまで来た。この経験を伝える。
・自由と法の支配という共通の価値観を共有する。
・冷戦以後の日本の経済協力への評価は非常に高い。ポーランドやハンガリーへの民主化支援。紛争後のユーゴへの経済支援。アジア経済危機の時の金融支援。日本の援助を受けた国はよくなり、日本に感謝している。
・アフガニスタンはいま世界の麻薬(ヘロイン)の75%を生産している。その麻薬の密輸を防ぐための洋上オペレーションに日本は協力している。日本は給油艦を出し、イギリスやフランスなどの軍艦に給油援助している。洋上給油は非常に難しいが、海上自衛隊の技術は高く、God's Hand(神の手)とまで言われている。
※NATOはタリバン勢力を制圧するためにアフガニスタンに軍事介入していますが、日本は直接戦闘はしないものの、NATOの軍事活動を背後から支援しているわけです。これは、イラクにおける米軍支援と同じ構造です。
しかし、このような軍事的介入でアフガニスタンが安定するとは思えません。日本の軍事的援助はNATO諸国には喜ばれますが、アフガニスタン国民の幸福にはつながりません。
アフガニスタンの農民がケシ栽培するのも、それが手っ取り早い金稼ぎの手段だからです。アフガン農民が昔のように、通常の農作物で生活できるような基盤をつくってやらなければなりません。干魃に見舞われている土地に灌漑用水を引き、小麦の栽培を支援しているのは、中村哲医師を中心とする民間のペシャワール会です。日本政府はこのような民生支援にこそ力を注ぐべきだと思います。
NATOはいずれアフガニスタンに手がおえなくなり、アフガニスタンから撤退せざるをえないでしょう。
・イラクでは、地上部隊は撤退したが、航空自衛隊はいまも残っている。これに対する評価も高い。
※航空自衛隊は米軍支援の輸送活動に従事しています。航空自衛隊の活動を高く評価しているのは、主にアメリカです。
・イラクでは、アメリカ軍は帰れ、日本は残れ、という声が高かった。なぜ日本だけがイラク人に愛されたのか。フランスがそれを分析して、報告書を出している。それによると、日本は人道復興支援に徹した唯一の軍であったことが理由だ。そして最も規律が高かった。ほかの国の軍隊と違って、無銭飲食ゼロ、婦女暴行ゼロ、脱走ゼロだった。
※ということは、米軍をはじめ、その他の国の軍では、こういう規律違反が生じているということのようです。こんなことをされたら、イラク人は外国軍を憎むはずです。自衛隊がイラク国民から肯定的に迎えられたのは、戦闘は断念し、あくまでも人道復興支援に徹したからです。これはやはり現憲法の歯止めがあったからでしょう。もし自衛とか秩序回復とかの名目で、自衛隊も「テロリスト」を武器で攻撃してよい、ということになったら、自衛隊も他国の軍隊と同じに見られることでしょう。他国軍の規律違反は、テロリストと民間人との区別がつかない状況で「敵」を殺さなければならない心の荒廃から生まれているものと思われます。
・イラクに行った自衛隊員の歓迎式に出たことがあるが、みな実にいい顔の持ち主だった。親や兄弟の顔とはどこか違う。明らかにイラクに行って立派になったのだと思う。
※それは自衛隊員が困難な状況の中で、困った人々のために献身的に働いたからだと思います。もし彼らが、イラクで大勢のイラク人を殺してきたら、決して立派な顔にはならなかったでしょう。日本の役割はあくまでも人道復興支援活動であるべきだと思います。
・自衛隊がやれることは、道路、電気、水道しかない。しかも全部はできない。そこで、人々を集めて議論させ、何をしてもらいたいかをその場で決めさせた。そして、彼らに「This is democracy.」と言った。
・イラク人を労働者として雇ったときには、必ずその日1日分の労賃を、中間に人を入れず、一人ずつ直接手渡した。それは公正さの教育になった。こういうことが、フランスの報告書にちゃんと書かれている。
・そして、やる気のありそうなイラク人がいると、「お前もやってみるか」と言って、ブルドーザーの運転をさせる。仕事を手伝わせる。つまりそれは技術指導で、技術屋を育てることになる。
※自衛隊のこのような活動は本当に素晴らしいと思います。民主化や近代化は、爆弾を落として「テロリスト」を殺してできるものではありません。
・現地の人と一緒に働くというのが、日本人のやり方だと思う。私(麻生)はアフリカで仕事をしたことがあるが、アフリカ人と一緒に働いているアメリカ人やイギリス人は見たことがなかった。
・日本人と一緒にいると、自分が向上する。よくなる。儲かるようになる。
※ここで竹村氏が、「グローバルNATO」について話してくれ、と口を挟んだ。竹村氏は、安倍首相が訪欧のとき、NATO本部を訪れ、講演したことを高く評価している。麻生氏は、日本がNATOに接近したことにより、ロシアは危機感を持ち、日本との関係を改善したがっているように感じる、と答えた。