平和エッセイ

スピリチュアルな視点から平和について考える

リーパーさんのインタビュー

2007年08月08日 | Weblog
毎日新聞2007年8月6日にリーパーさんのインタビューが載っていました。

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/heiwa/ima/news/20070806ddf012070007000c.html

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今、平和を語る:広島平和文化センター理事長、スティーブン・リーパーさん
 ◇世界を後ろ盾に「核兵器廃絶」を

 広島市の平和行政の一翼を担う財団法人・広島平和文化センターの理事長に今春、米国籍のスティーブン・リーパーさん(59)が外国人として初めて就任した。母国の戦争文化に厳しい目を向けるリーパーさんに、平和をいかにして紡ぐかを語ってもらった。<聞き手・広岩近広>

 ◇自分のことばかり考えるリーダーは、弱者に本気で強烈に反発されると、暴力的な解決法を選ぶ危険性が高い

 ◇競争原理より協力原理を、都市が結束しよう

 --被爆62年の「8・6」が巡ってきましたが、核兵器廃絶の道は遠のいているようでなりません。日本政府にしても米国の核の傘の下にいるため、はっきりもの申せていません。22年前から広島を拠点にして日米両国で平和運動をしてきたリーパーさんは、この点をどう思われますか。

 リーパー 日本が本気になってアメリカに「絶対に核兵器を使うな」と言えば、アメリカは使えないはずです。日本が本当にそういう態度をとったら、他の国はすべて日本を支持すると思います。日本の後ろに世界が立っていれば、アメリカは無視できません。もっともアメリカだって、本当に核兵器を使おうとする人たちはほんの一握りです。

 --それはいかなる人たちですか。

 リーパー 核兵器がなくなると、とても損をするグループがアメリカには存在しているのです。そのグループは「核兵器は使うものだ」と世界に示したがっており、政府に影響力を持っているからとても危ない。つまり、今のアメリカ政府は軍事産業とつながりが深いのです。大きな力をもっているグループが核兵器を使いたがっているのだから、これは危険です。

 --核兵器を使えば地球環境がどうなるかわかっているのではないでしょうか。

 リーパー 私が心配しているのは小型核兵器です。大都市を破壊するためではなく、たとえばアフガニスタンでウサマ・ビンラディンを殺すために限定的に使う。あるいはイランが核兵器をつくるかもしれないので、事前にその種の施設だけを破壊する目的で、小型核兵器を使うのです。私はこの5年間がもっとも危ないとみています。

 --5年以内とは切迫しています。もう少し説明していただけますか。

 リーパー 現在の世界のリーダーたちはアメリカを筆頭に戦争文化に浸っている人たちがほとんどです。極端に自分のことばかり考える人間、あるいは非常に攻撃的とか、非常に競争的な人間ですね。そうしたリーダーが自分の富や地位や成功ばかり考えていると、貧富の差が大きくなっていきます。その結果、弱い者が反発します。本気で彼らが反発したら、その人数はあまりにも多いので、トップを倒す力が生まれます。そうなると戦争文化のリーダーは暴力的な解決方法を選びます。だから私は戦争文化に侵されている人たちが退場する前に小型核兵器を使うかもしれない、そういう危機感をもっているのです。それでも--この5年の間に小型核兵器が使われなければ、だんだんリーダーの質が変わってくると信じています。というのは地球温暖化の問題など、お互いの協力がないと解決できない人類の課題が迫ってきているからです。悲惨な将来にしないために、次のリーダーは協力しあうことを避けては通れません。

 --その協力関係を築くためには。

 リーパー 平和文化を構築することです。平和文化とは何かというと、勝ち負けの競争原理ではなく、みんなが幸せになれるように協力原理を働かせることです。私は都市の役割が大きいと思います。都市と都市の関係は国と国の関係より現実的で平和的ですからね。なかでも広島と長崎は平和文化の原点ではないでしょうか。スペインのゲルニカや中国の重慶もそうですね。戦争でダメージを受けた都市は、戦争のない平和な世界をつくろうと発信しています。まず、こうした都市が協力しあっていくのです。広島市長が会長を務める「平和市長会議」(8月3日現在、122カ国・地域の1698都市)を拡充、強化していくことも大事です。戦争文化から平和文化へ切り替えていかないと人類の明日はありません。

 --ところで、リーパーさんのお父さんはある日本人少女の命の恩人として語り継がれています。1954年9月に起きた死者1155人を出した青函連絡船「洞爺丸」の海難事故で、乗船していた青年牧師のディーン・リーパーさん(当時33歳)が救命胴衣のヒモの切れた少女に自分の胴衣を与えて、自らの命と引き換えに少女を助けました。このとき6歳の長男だったリーパーさんら4人の子どもと妻であるリーパーさんのお母さんが残されました。人類愛というのでしょうか、お父さんの影響をうけていますか。

 リーパー 連絡船は岸壁からあまり離れていなかったし、父は泳ぎが得意だったので、自分が死ぬとは思わなかったはずです。ただ、自分だけが助かろうと思えば真っ先に海に飛び込めたのに、父は船が転覆するまで女性や子どもたちの救助に当たっていたそうです。自己を犠牲にしてでも、他の人を手伝う態度ですね。自分のために何かをつかむより、人のため世界のために何かをするほうが大事だという教えは、私たち家族のなかに残っていると思います。

 --世界がリーパーさんのお父さんのようになれば核兵器はなくなるのでは。

 リーパー (笑って)パラダイスになります。

 --全米50州での原爆展を計画するなど、息子のリーパーさんへの期待も高まっています。

 リーパー 来年秋の大統領選に向けて、核兵器廃絶の運動をアメリカで盛り上げたいのです。そのためには向こうの活動家たちの協力が必要ですし、一過性のイベントにしないためにはどう発展させていくか、そうしたことを考えて推し進めたい。大事なことは我々が、どうやって世界の反核運動を手伝うことができるか、大きなグローバルなうねりをつくるかです。

 --平和は地球レベルでみないといけないですね。

 リーパー もちろんです。平和な世界をつくろうとしたら、お金持ちの日本やアメリカが、飢えて死んでいく人たちのいる貧しい国をなくすために膨大な援助をしなければいけません。そのためには今、使っている消費エネルギーをぐんと減らさないと、温暖化の問題を含めて、みんなが幸せになれる世界はつくれないと私は思います。暮らしを質素にすることなので、それは抵抗が大きいでしょうが、世界の平和を考えるには、そうした視点が大切ではないでしょうか。(専門編集委員)


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