9月23日 曇りのち晴れ
ホールの床板下調べ、段ボール箱10購入。照明ショック。
B部屋の二度塗り、居間の幅木除去、釘切断に床まで切る失敗。
マスキングの不手際、床貼り準備。
ローマ カピトリーノ美術館へ。
ここでローマパス2度目を使う。
多少は行列があって、時間の節約にはなった。
コンスタンティヌスのバカでかい顔面像、腕、足がばらばらに陳列されて目を引いた。
それほどの印象は受けない。
カピトリーノのビーナスが有名なのだが、どこにあるかわからなかった。
それほど強い関心がなかったので、まあいいかとあきらめた。
代わりにいくつか面白い彫像を見た。
ひとつはメドゥーサ。ベルニーニの作。
表情がよかった。
ヘビになった頭髪のくねくねした動きもさすがだが、目が素晴らしい。
ペルセウスに殺される直前なのか。
眉をしかめ、悲哀漂う目の色に感嘆した。
もしかしたら、こんな風に生まれた運命を呪っているのではないか、とも思わせる。
ベルニーニは裸婦の滑らかさ、死に行く女性の恍惚の表情に打たれるが、このメドゥーサ
では別の一面を見せているように思った。
たしか東京北区の志茂にベルニーニという名の喫茶店があった。
豆を引きサイホンでコーヒーをたてる。本格的な珈琲屋という雰囲気。
ご主人がベルニーニの熱烈なファンで、写真集が置いてあったように思う。
唐突にそんなことを思い出した。
ひとつはエスクリーナのビーナス。
ミロのビーナス同様、両手がない。
しかし、こちらは全裸で、容貌はミロほど優れているとは思えない。
洗練されていないような感じがする。
そりゃミロのほうが数段上品な顔つきだ。
ミロが貴婦人なら、こちらはガールズネクストドアだろう。
しかし肉体の現実味、というか本物度というか、豊満な感じはこちらが強いように思う。
ふーんなるほどねと、わけもなしに感慨にふける。
少しエロチカルな視線で、像をぐるりと一回りして写真をとる。
臀部は横幅がなく、後ろに盛り上がっている。
こういうのが、とにかく良い形だと、ずーっと前に聞いた記憶がある。
そうだよなと、この像を見て思った。
着飾った美人より、しこめでも全裸の勝ちと聞いた記憶もあるが、こちらは同意できない。
それは違う。
ひとつはアマゾン。
これは頭部だけ。
陰鬱そうな顔で何考えているんだと思わせる。
紀元前400年ころのギリシャ・エフェスで、コンテストに出品されたと説明にあった。
それで、ちょっと変わった感じがするのかと思った。
古代ギリシャでは、苦痛は罪悪、美術とする価値はない、というようなことを前に書いた。
フランス人評論家の本で仕入れた知識だ。
それに照らせば、このアマゾンの表情は異常かもしれないと思った。
その異常さは、作家の個性から生まれたのではないか。
コンテストに出品するための作品なので、作家の感覚が表に出たのではないかと。
だとすれば、現代にも通用する普遍性を持つ作品、といえるのではないか。
あるいは、ただ、ギリシャ人に負けたアマゾネスの悲哀を表現した、というだけかもしれない。
ギリシャ神話からのエピソード。
だとすれば、作家の個性というほど過大評価すべきではないかもしれない。