瘋癲北欧日記

第二の人生 つれづれなるままに

戻り雪

2014年03月16日 | 人々の暮らし

3月15日 雪のち晴れ



朝、午前10時ころ窓の外を見ると、わずかに雪が残っていた。昨夜おそく、部屋の
暖房システムが音をたてていたので、外は寒いのだろうとは思っていた。
一軒家の暖房は、外気の温度によって自動的に室内温度が決まる。中途半端な10
度前後では、暖房に聞きが悪くて寒いときがある。3時くらいまで起きていたのだが、
雪が降っていたとは知らなかった。
週末の新聞、一面に冬が戻ると言うタイトルがあったので、気にはしていた。

とはいえ、雪はまだらな残雪、いや残雪とも言えないほど。ひるすぎにはすべて溶け
てしまった。「朝、私が起きたときは真っ白でした」と連れ合いは言った。
が、寒風は残って、松や白樺の梢を襲い、轟音たてて走り抜ける。雪が積もれば防音
効果もあるのだろうが、裸樹では逆に音の強さが倍加するのかもしれない。
初めて聞く風の音だった。
昔、ラーゲルクヴィストの本で読んだ、祖父の葬式の場面を思い出した。なるほど、彼
も少年時代に、この林間を揺るがす轟音を聞いて、死を恐れたのかと思った。



ストリンドベリの翻訳は残り2編を残して日本へ行くことになった。
多少のごたつきがあって、思うように時間がとれなかった。また帰ってからのお楽しみ
にしよう。


友人に依頼されてストリンドベリの「Svenska Folket」(和訳はスウェーデン人の日常生活)
を購入した。原題は、スウェーデン人民になるだろうか、副題に1000年の歴史、とあった。
ストリンドベリ博物館の2軒となり、「ストリンドベリの古書や」という古本屋。1882年の
初版が2冊組で500クローネ(およそ8000円)だった。
新刊本は800クローネくらいで、初版より高値と言うのは、何だか違和感を覚えた。
ハードカバーでA4変形サイズ。100年以上たつのに、装丁はしっかりしている。上質紙
でなぜてみると、活字の手触りがする。素晴らしいと思う。
「新刊より、こっちの方がお値打ちです」と、若い店員が言った。

イラストはカール・ラーション。
日本にもコアなファンがいる。スウェーデンの田園風景、家庭の日常をモチーフにした
作品が有名で、おそらく日本でも目にした人は多いだろうと思う。
しかし、この本ではエッチングのみ。モチーフは無論、歴史ものなので、牧歌的な風景
画などはない。当時の社会をデューラーのようなタッチで、精緻に彫りあげている。
1520年の大広場、ストックホルムの血浴の場面、魔女狩りの水責めの場面など、あ
らたなラーションの表現力が知れて興味深い。
友人も、このイラストに魅せられているようだ。



実はロンドンの、最終日の話を書いておこうと思って、まったく別の話になってしまった。
ナショナルギャラリー再訪での発見と、ノッティングヒルゲイト、ホーランドパークのレコ
ード屋でみた、ビートルズやストーンズ、ボブ・ディランのEPの値段など、書いておこうと
思っていたが、また別の機会にしよう。


あと2,3日で日本。鹿児島・伊集院・麦生田の山桜が見られるか。これは絶品だ。


 


クロッカス

2014年03月11日 | 人々の暮らし

3月10日 雨のち晴れ


いま美空ひばりのCDを聞いている。
リンゴの唄がいいな、と思う。越後獅子は、その出だしを現役時代転用させてもらった。
卓球女子の原稿だったのに。なんで越後獅子か、なんでタイトルに鞍馬天狗が出てくる
のか、自分でも笑ってしまう。この歌を聞くとそのときのことを思い出す。
西条八十先生にはびた一文払わなかったが、問題はなかった。


ところで、4、5にちまえ、夜半に激しい風が吹き荒れた。
翌日も朝、いや昼すぎからしか知らないが風が吹いていた。前夜ほどではなかったが、
かなりの強風だった。そのとき「これは、ひょうっとして春いちばん」かと、思った。
この国に、そういう呼び方があるかは知らない。調べてもいないが、日本人の感覚で
言うと、そう思えた。


そんな気になったのは、花芽を見たからだ。
強風の吹く2,3日前だったか庭に、白い花が咲きはじめた。スノードロップという、リン
ドウに似た花で、日本名は度忘れした。



そして、その2、3日後、強風の去った後に、別の花が咲いた。
クロッカスである。
庭の隅、緑の芝生の中に可憐な花が開きはじめた。それがきょうは、もう咲き誇ってい
る。ウサギに食い荒らされるまえに写真を撮った。


ついに、ほんとうに春になってしまったか、と言う気がした。
これまでは、どこかでまだ雪が降る、湖も氷結するのではないか、と期待する気持ちが
あった。まだ3月じゃないか、へたすりゃ5月にだって降雪のある北欧で、こんなに早く
春がくるわけがない、と。


しかし、もうだめである。
雪が完全に溶け、スノードロップが黒い土に白い花をつり下げ、青と黄色のクロッカスが
緑の芝生に顔をそろえた。きのうは昼に10度を超して、近場の林を散策したら熱くなって
コートを脱いだ。




昼の湖は明るい陽光を反射して輝き、午後5時には見事な夕焼けが見えた。
夜半の強風は春いちばんだったのだろうと、思うほかなくなった。


ひばりのCDは3枚組。一枚目はデビューのころの録音なので、レコードのチリチリいう音
もするが、これは雑音には聞こえない。むしろ懐かしさを覚えてよい。
春いちばんが吹いて、花が咲きはじめる北欧で、昔の美空ひばりの歌が聞きたくなった
のはどうしてだろうか。

きょうメールでおつなの例会が、今年7月を持って終了する、と報せを受けた。3月は、日
本滞在中で出席できると思うが、それが自分には最後になる。
そういうこともかんけいするのかもしれない。


ストリンドベリのサーガは面白い。つい熱中して時間を忘れるときがある。
日本に行くまでに完訳しようと思うから、いよいよ時間に追われる。そのせいでブログがお
ろそかになった。いくらか問い合わせをいただいたが、そういう状況です。