3月15日 雪のち晴れ
朝、午前10時ころ窓の外を見ると、わずかに雪が残っていた。昨夜おそく、部屋の
暖房システムが音をたてていたので、外は寒いのだろうとは思っていた。
一軒家の暖房は、外気の温度によって自動的に室内温度が決まる。中途半端な10
度前後では、暖房に聞きが悪くて寒いときがある。3時くらいまで起きていたのだが、
雪が降っていたとは知らなかった。
週末の新聞、一面に冬が戻ると言うタイトルがあったので、気にはしていた。
とはいえ、雪はまだらな残雪、いや残雪とも言えないほど。ひるすぎにはすべて溶け
てしまった。「朝、私が起きたときは真っ白でした」と連れ合いは言った。
が、寒風は残って、松や白樺の梢を襲い、轟音たてて走り抜ける。雪が積もれば防音
効果もあるのだろうが、裸樹では逆に音の強さが倍加するのかもしれない。
初めて聞く風の音だった。
昔、ラーゲルクヴィストの本で読んだ、祖父の葬式の場面を思い出した。なるほど、彼
も少年時代に、この林間を揺るがす轟音を聞いて、死を恐れたのかと思った。
ストリンドベリの翻訳は残り2編を残して日本へ行くことになった。
多少のごたつきがあって、思うように時間がとれなかった。また帰ってからのお楽しみ
にしよう。
友人に依頼されてストリンドベリの「Svenska Folket」(和訳はスウェーデン人の日常生活)
を購入した。原題は、スウェーデン人民になるだろうか、副題に1000年の歴史、とあった。
ストリンドベリ博物館の2軒となり、「ストリンドベリの古書や」という古本屋。1882年の
初版が2冊組で500クローネ(およそ8000円)だった。
新刊本は800クローネくらいで、初版より高値と言うのは、何だか違和感を覚えた。
ハードカバーでA4変形サイズ。100年以上たつのに、装丁はしっかりしている。上質紙
でなぜてみると、活字の手触りがする。素晴らしいと思う。
「新刊より、こっちの方がお値打ちです」と、若い店員が言った。
イラストはカール・ラーション。
日本にもコアなファンがいる。スウェーデンの田園風景、家庭の日常をモチーフにした
作品が有名で、おそらく日本でも目にした人は多いだろうと思う。
しかし、この本ではエッチングのみ。モチーフは無論、歴史ものなので、牧歌的な風景
画などはない。当時の社会をデューラーのようなタッチで、精緻に彫りあげている。
1520年の大広場、ストックホルムの血浴の場面、魔女狩りの水責めの場面など、あ
らたなラーションの表現力が知れて興味深い。
友人も、このイラストに魅せられているようだ。
実はロンドンの、最終日の話を書いておこうと思って、まったく別の話になってしまった。
ナショナルギャラリー再訪での発見と、ノッティングヒルゲイト、ホーランドパークのレコ
ード屋でみた、ビートルズやストーンズ、ボブ・ディランのEPの値段など、書いておこうと
思っていたが、また別の機会にしよう。
あと2,3日で日本。鹿児島・伊集院・麦生田の山桜が見られるか。これは絶品だ。