はちみつブンブンのブログ(伝統・東洋医学の部屋・鍼灸・漢方・養生・江戸時代の医学・貝原益軒・本居宣長・徒然草・兼好法師)

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No.62 幻肢痛と薬物

2008-12-03 21:16:03 | 幻肢痛など

鍼灸治療は幻肢痛に効果があるようです。しかし効果があるのは鍼灸治療だけではありません。もしかしたらなぜ効果があるのかという問題は、そこを考えていくと見えてくるのかもしれません。


幻肢痛には薬物治療が主に行われます。たとえばオピオイドと呼ばれる麻薬性の鎮痛薬や非ステロイド性の鎮痛薬があります。また抗うつ薬やカルバマゼピンのような抗てんかん薬が使われることもあります。最近ではガバペンチン(抗てんかん薬)も使われるようですね(ただし日本では健康保険の適応ではありません)。


てんかんはなぜ起こるのかはよく分かっていないようです。てんかん発作の時には脳神経に異常な電気パルスが発生するらしいのですが、なぜなのかは判っていません。なぜということが判らなくても発作の条件が分かると、脳に電極を埋め込み、発作に対処できるようになりました。また抗てんかん薬もなぜ効果があるのかがよく判っていません。脳神経細胞のイオンチャネルに作用するらしいのですが、それがなぜ効果を持つのかは明らかではありません。


このよく判らないということは、それだけ人の身体が複雑でよく判っていないということも意味していますが、実は「生きている」ということは何なのかもよく判っていません。生物学的な生命の定義(呼吸をするとか繁殖をするとか細胞から成り立っているとか)がありますが、それは生物学という学問の中だけの定義です。なぜならこれらの定義は我々が生きていると感じているものである動物や植物を集めてそれらを抽象化したものだからです。例えば2千年前の人が「この人は細胞からできているから生きているのだ」と思わないように、この抽象に基づいてそれが生きていると感じた訳ではありません。そこには直観が働いています。


すこし脇道にそれましたが、メマンチンというアルツハイマーの薬(日本ではまだ臨床試験中で未承認です)も幻肢痛に効果があるらしいですね。先日、サンディエゴの海軍医療センターでのことですが、さまざまな薬が無効であった幻肢痛の患者さんにメマンチンを投与した時に、幻肢痛が軽減したとの発表がありました。(註1)


てんかんの薬やアルツハイマーの薬で幻肢痛が改善するとは興味深い話ですね。これらの薬の共通点はというと、どちらも脳に働くと考えられていることです。幻肢痛に効果がある(と考えられている)ものはそれだけではありませんので続きは次回にしたいと思います。


(註1)Hackworth RJ, Tokarz KA, Fowler IM, Wallace SC, Stedje-Larsen ET.2008."Profound pain reduction after induction of memantine treatment in two patients with severe phantom limb pain."Anesthesia and Analgesia. 2008 Oct;107(4):1093-4.


(ムガク)


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