変わった人たちの日常

ブログを新装しようかな。。。

桜木の下でサヨナラを。

2008-08-05 14:36:46 | Aの作品集
―“桜の木の根元には人が埋まっている"
   そんなことを言い出したのは果たして誰だろう―
と、考えながら僕は歩いていた。
目的地は、桜の木。
時は5月の終わりごろ。もう桜の季節はとっくに過ぎている。
―だが、なぜか一本だけ、この時期に咲いている桜があるらしい。
そう友達に聞いて、この週末の暇つぶしにはぴったりだと思った僕は、現在そこに向かっている。
狂い咲き、というらしい。
僕は寡聞にして、その言葉を先日母親に指摘されるまで知らなかったわけだが、
しかしどうだろう。高校生にもなって親からそんなことを教えてもらうというのはいささか恥ずかしいような気がする。
まあ、そんなことはどうでもいいわけだが。

先ほどいったとおり(僕はいったい誰に話しているんだ?)、今は暇つぶしに桜の木へ向かっている。
暇つぶしに花見なんて、お前は平安時代の貴族かというかもしれないが、この町には本当に何もない。
まだまだ公衆電話が各地にあるような町だ。
この間、失踪者が二人連続で出たというだけで、1週間学校はその話題で持ちきりになっていた。
失踪者の一人が僕の通っている高校の同学年の生徒とはいえ、いったいどれだけ田舎なんだよとつい思ってしまった。
結局、その生徒はおそらく家出したということで片付いている。
ああ、また話がそれてしまった。

桜の場所は話を聞いた段階でわかっていたので、
何も持たずに僕は歩いていた。
そこは確か小さな丘に1本だけ桜の木が植えてある場所で、
小学生は待ち合わせによく使っている。
僕も昔はよく行っていた場所だ。
場所は覚えているので、迷うことなくいけるはずだ。
とすると、桜までの道のりが暇になる。
そんなわけで、さっきから下を向いてぶつぶつ呟きながら歩いているわけだ。

―しかし、何で桜の木に人が埋まっているんだ?
勝手に埋まっていると決め付けているが、それはおいといて僕は考える。
なんで桜だろう?
梅や桃じゃだめなのか?
いっそ銀杏とかのほうがいいかもしれない。
誰か詳しい人とかいないのかな?


と、そこで、


袋小路についてしまった。
ふむ、どうやら道を間違えてしまったらしい。
どこに来てしまったんだろう?
そう思って、顔を上げると、

そこには満開の桜の木。
桃色の花弁。
いや、桃色より赤い。
まるで、そう、
血のような紅さ。

「・・・えーと、ここじゃ、ないよな?」

最近噂の桜があるのは、こことは違う場所のはずだ。
しかし、ここにある桜も、なぜか満開。
どういうことだ?

そのとき初めて、僕は自分がどこにいるのか気づいた。
―そうか、この桜のある場所は・・・。
そして僕は、すべてを理解した。
理解した瞬間、僕は歩み始めていた。
ただし、噂の桜の木があるほうを目指してではない。
僕は家に帰っていた。
その日は夜までずっと家にいた。


その晩、草木も眠る丑三つ時。

僕はこっそりと家を抜け出した。
持ち物は、軍手にシャベル。
向かう先は、今度こそ、あの桜の木のあるところ―

今回は迷わずに桜の木へたどり着けた。
駆け足気味だったので、少し休憩。
休憩後、作業を開始する。
その前に桜の周辺を見る―やっぱり。ここだけ芝があまり生えていない。
僕はその土の見えてる部分を掘っていた。

どれくらい時間がたったか。
結構な深さまで穴を掘っていた。
―いくらなんでもそろそろだろ。
そう思った時、
僕のシャベルは、今までと違う感触に出会った。
「・・・」
僕は無言で、今度は慎重に、慎重に、掘り始めた。

もうしばらくの時間の後。
僕は掘り終わった穴を見下ろしていた。
時期が時期だけに、多少傷んではいるが、
そこに埋められていたのは、紛れもない、
屍体だった。
傷み方がそこまで激しくないので、殺された(自殺者が地中に入るはずがない)のは、ついこの間といったところだろうか。

そう。つい、この間。


次の日。

結局死体はもう一度埋めた。
何故って、それは怖かったからね。
だいたい、その死体の人と僕は面識があったわけではない。
僕は赤の他人のためになにかをするようなお人よしではないんだ。

さて、今は学校帰りなわけだが、
どうしよう、少し寄り道でもしようか。
そう思って、僕は歩き始める。

“桜の木の根元には、人が埋まっている”
そう言い出したのは誰かはわからない。
でも、その言い伝えは僕がしっかりと受け継いだ。
僕は袋小路に立って、
満開の桜の木、その根元の、土が少し周りと違う場所を見ていた。
いづれはここも町の話題になるだろう。
何しろこんな田舎だ。
でも、大丈夫だろう。本当のことを知っているのは二人しかいない。

丘の桜の根元に人を埋めた誰かと、
この袋小路の桜の根元に同級生を埋めた僕。

僕はもう一人の罪を告発するつもりはない。
そんなことをしたら必ずここも見つけられてしまうから。
もう一人もきっとそうだろう。
いや、もう一人は告発するかもしれない。
そのときは、逃げ切ればいい話だ。
証拠なんて残っていない。

でも、せっかくこんなにきれいに桜が咲いているのに、
それを誰かが墓荒らしするなんて、

ちょっと、 もったいないよね。



そして、6月のある日
また1本、桜が花開いた。
場所は、僕の家の庭――


****************************************************************

読んでくれた方、ありがとうございます。
今回のテーマは、伏線を張ってみようだったのですが、
なんか張れていないような気がします。
まあ、2000文字程度の文章に伏線なんてあったもんじゃない気もしますが。。。

なんといいますか、僕は比喩、特に隠喩が致命的に苦手なんで、
T君みたいな婉曲な表現ができないんですよね。
というわけで、叙述トリックまがいに挑戦しても、
うまくいきませんね、すいません。

この話は時間があるときにちょこっとずつ書いていたので、
そのときそのときで文の調子がだいぶ違いますね、はい。

タイトルが悩んでいます。T君に相談とかして、結局勝手に決めてしまいました。
Tすまん。
内容と合っているかどうかかなり微妙ですが、タイトルつけるのが苦手なんです。
勘弁してください。

以上、言い訳でした。

この話は構想はだいぶ前からできていたので、
今回やっと書くことができてよかったです。
はい、自己満足ですね。わかっています。

とりあえず、書けて良かった。
風評は気にしない!!

ショータイム

2008-08-03 18:29:57 | Aの作品集
僕は今、最高のショーの舞台に立っていた。
観客はみんな僕に注目している。
僕は今ステージに一人だった。
ほかの出演者はすでに自分の役目を終えていた。
今は僕が主役。

僕は緊張して、手が震えていた。

僕は一人で、さまざまなショーを行った。

炎の中を駆け抜けたり、
高いところを自在に飛びまわったり、
一人で虎に立ち向かったり。

ショーの最後は、脱出マジックだった。
爆発の中心から、僕は忽然と姿を消し、そのままショーは終了する。

はずだった。

僕は脱出マジックに失敗して、そのまま命を落とした。
そのとき、観客から聞こえたのは、
悲鳴ではなく、「あ~あ」という、溜息だった。


彼は今、最悪の“ショー”の舞台に立っていた。
安全圏から高見の見物をしている“観客”の注目は、彼に集まっていた。
彼は単身戦場にいた。
ほかの仲間はすでに途中で命を落としていた。
残すところ、彼のみ。

戦闘機の操縦桿を握る彼の手は、震えていた。

彼はたった一人で戦い続けた。

戦火の中を駆け抜け、
雲の上で空中戦を繰り広げ、
「虎」の異名を持つ名将と戦った。

そして彼の機体は攻撃を受ける。
使えない機体は敵戦艦に向けて体当たりし、彼はその前に脱出する。

はずだった。

彼の機体はすでに動作していなくて、そのまま彼ごと爆発した。
“観客”達は、失敗に終わった“見世物”に、
「あ~あ」と、溜息をついていた。


では、「僕」でも、「観客」でもないこの私は?
私こそ、このショーを行うサーカスの団長。
そして、観客の中でも、VIPと呼ばれる身。

私は、「僕」であり、「観客」であり、そのどちらでもない。

そう、私はこの国のトップに立つ者だ。

***************************************************************

えー、スカイクロラのCM見て、適当に思い立って書きました。

いや、スカイクロラがどんな話かは知らないケド。

とりあえず、原作書いてる森さんの小説はかなり面白い・・・という話です。
まだ読んでいません。すいません。
「すべてがFになる」が、代表作です。
今だったら、「ηなのに夢のよう」とかですかね。
今度読みます。

ではでは。

※名乗っていなかった。。。わかってると思いますが、某観者でした。

fortune panic

2008-03-06 12:30:09 | Aの作品集
俺の朝は、パソコンをつけるところから始まる。
目的はたった一つ。
占いを見るためだ。
12星座占いを見る。
 おうし座 今日の運勢・・・87点
 交通事故に注意しましょう。
 ラッキーカラーは銀色

うん。小銭でも持っていこう。
続いて、血液型。
 2位 B型
 今までにないことが起きるかも。
 ラッキーアイテムは鍵

家の鍵はちゃんと持っていこう。
さらに、タロット。
 今日のあなたは、物事に消極的になりがちです。
 ですが、それでは何も進展はありません。
 今の自分に起きている事をすべて受け入れて、
 前向きに進んでいってください。
 
うーん、難しそうだな・・・。

時間があれば風水も見るのだが、今日はもう学校に行かなければならない。
残念だ。


学校に行きながら一人考える。
占いとか、あんな大雑把なものは信じないという人が多いと思う。
しかしこれだけたくさんの占いを見ていればだいぶ対象となる人数が絞れるんじゃないのだろうか。
そんな理由で、俺は今日も、占いを見ているわけだ。
学校が見えてきた。


学校に行っても、あまり友達と話したりはしない。
というか、友達自体が少ない。
別に嫌われているわけではないが、親友と呼べるような人物もいない。
話しかけられたら話しか返すけど、自分から話しかけるようなことは、授業道具を忘れたときぐらいしかしない。
つまりは、浮いている。
俺は変わったやつなのである。


帰り道。
人気(ひとけ)のない場所。
あたりに家はない。
―交通事故に遭うとしたら、今しかないな。
などと不吉な事を考えている。
しかし、学校の行きと帰りでは帰りのほうが長く感じるのは、なぜだろう。
やっぱり帰りは疲れているのだろうか。
だとしたら、徹夜したら行きも長いのだろうか。
昼寝と見学ばかりで体力使わなかったら、帰りも早く感じるのだろうか。
なんて、余計な事を考えなければよかった。
さっきの予想通り、スピード違反の鑑のようなの車が来ていた。
色は銀色。
「どこがラッキーカラーだっ!!」
と叫ぶ暇もなく、俺は車とぶつかり、車の持っていた力学的エネルギーなんかをもろに受けた。
なす術もなく俺の体は吹っ飛び、地面にたたきつけられた。



(ってあれ?)
唐突に俺の意識は目覚めた。
(俺は確か車にはねられた・・・割にはどこも痛くない。)
そのとおり、全く痛みを感じていなかった。
(もしかしてこれは天国みたいなところに行っちゃたのかい?)
幸いな事に、そうではなかった。
が、幸いなのは死んでいないという事だけだった。
(そういえば、声がでない!さっきからセリフが括弧だ!)
さらにいうと、まっくらで光を感じないし、何の音も聞こえない。
そこでやっと、俺は、目覚めているのが俺の意識だけだと気づく。
(おいおい、俺の体は何で動かないんだよ?)

そのとき。ふいに。
目の前が明るくなった。


地面に横たわっている僕の体が見えた。
出血多量で、いい感じに悲惨な現場だった。
付近に人はいなかった。しょうがない、ここはもともと余り人がいない場所だ。
だからこそ俺はこの道を選んでいて、車もアクセル全開だった。
と、そんなことを考えている場合ではなかった。
(あれは俺の体。てことは今の体は?もしかして幽体離脱?)
自分の体を見ようとした。が、出来ない。
今となっては、見えないほうがよかったと思う。
そのまま見るのをあきらめていたら、どうだったのだろう。
・・・いや、きっとただ問題を後回しにして、現実から目をそむけていただけだろう。
結局は、同じことだったのだろう。
そして、見えた。


前方に、乗り捨ててある車が見えた。
その車のフロントガラスに、俺の体は映っていた。

全部は映っていなかった。
でも、そこに映る銀色のそれは、俺に何が起きたのかを知らせるには、十分過ぎる情報だった。

俺の体は、先ほど俺をひいた車だった。
(んな・・・おい、ちょ、ちょっと!!)
やっぱり声はでなかった。
(こんな、こんなの、どんな不条理小説の筋書きだーーーーー!!)
声にならない叫びだった。


(は!そういえば、これの運転手は!?救急車とか呼んでいないのか?)
車内の様子が見たかった。
そう思ったら、見えた。
運転席に、ぶっ倒れている人が一人見える。どうやら、人を轢いたことへのショックや、俺のもとの体の無惨さ、それらのものからか、気絶していた。
(え、ちょっと、俺一人じゃ動けないし。早く目ェ覚ませよ!俺の体が死ぬって!)

と、そのとき。
何か動くものの気配を感じた。
どうやら前方のようだ。
(誰かが駆けつけてくれたのか!?誰だろう?)
俺は再び前方を見る。
そこにいたのは、俺一人だった。
が、何も変化がなかったというわけではない。
なぜなら、

俺の体は立ち上がっていた。

虚ろな目で、ふらふらと立ち上がって、そして、

歩き始めた。

(おい!俺の体!どこに行ってんだ!てかあの怪我でどうして歩けるんだよ!)
疑問に答えてくれる人はいなかった。
そのまま、俺の体は去っていった。
車の俺は、運転手がいないと、動けなかった。
(あー畜生!運転手さっさと起きろ!起きて俺を追っかけろよ!!)

彼が意識を取り戻したのは、30分後。
もうとっくに俺の体は消えていた。
(よし、目が覚めたな。早く気づいてくれ!)
「う、う~ん。あれ、確か僕はここで人とぶつかって・・・。」
(そうそう。ほら、おかしいって気づけ!何で轢いた人がいないんだとか思ってくれ!)
「あれ、でもぶつかった人が見当たらない・・・。血はあるのに・・・。」
(よし!あとはこのまま追いかけろ!)
「もしかして・・・」
(うんうん。そうだそうだ。)
「あれは夢だったのか!そうか、きっとそうだな。多分この血みたいなのもペンキかなんかだろう。」
(そうそう・・・ってちがーーーーーーーーう!!)
「多分僕は疲れていたんだな。ここんところ仕事も忙しかったし。」
(・・・・・・・・。)
もはや絶句。もとから声でないけど。
それにしてもこの運転手、独り言の多いやつである。
「んじゃ、家に帰るか!」
(だめ~~~~~~~~~~~!!)


******************************************************


どうも、いーちゃんです。
後半セリフ多いな~と思います。
もっと風景とか人物とかの描写入れないと辛いっすね~。

とりあえず長々と書いてみました。
この続きは漠然とだけ考えております。
というか回収してない伏線あるし。
いつか書くかもね?

この主人公は占いをずいぶんと見ていますけど、
僕はそういう類のものは信じていません。
そこんとこ、ヨロシクです。

小鳥と男

2007-08-07 16:11:07 | Aの作品集
森の中に、一人の男がいました。木の下に座って、ずっと黙っています。
「おーい、君は何をしているんだい?」
そこを通りかかった1羽の小鳥がたずねました。
けれど彼は黙ったままです。
(息はしているから死んではいないよな)
そう思った小鳥は、なぜか彼のことが気になり、観察することにしました。

それから10分後。そろそろやめようかな、と小鳥が思った頃でした。
「ふふっ、はははっ、ははははは」
男は急に笑い出しました。
小鳥はちょっとびっくりしたけど、再び観察を始めました。
すると突然、男は笑うのをやめてまた黙りました。

「今度は何をしてるんだい?」
もう1度、小鳥は聞いてみました。
すると、ほんの少し男の口が開いて、
「何をしようか考えている。ちなみにさっきは笑ってみることにしたんだ。」
と言いました。
「あとどのくらいで考えがまとまるんだい?」
小鳥が聞きました。
「3分。」
男は言いました。
そこで小鳥は、あと3分待ってみることにしました。

5分たちました。でも男は黙ったままです。
「ねえ、もう5分もたったよ。君は何をするんだい?」
待ちきれなくなった小鳥が聞きました。
「何をするかは決めた。」
「じゃあ、なんで決めたことをしないの?」
当たり前の質問を小鳥はしました。
「どうやってするかを考えている。あと5分ぐらいかかるよ。」
「ふーん。」

また5分たちました。けれども男は黙ったままです。
「今度は何を考えているんだい?」
ちょっとイライラしながら小鳥は聞きました。
「本当にそれでいいのか考えている。」
彼はそう答えました。
「時間は?」
「あと5分。」
「あっそ。」

やっと5分たちました。すると、男は立ち上がりました。
「何をすることにしたんだい?」
小鳥はうれしそうな顔で聞きました。
「うん。僕はここから出て行くよ。歩いてね。」
彼はそう言いました。
小鳥は、ちょっと残念そうな顔で、
「そうか。でもそうするのがいいって考えたんだよね。じゃあ、僕は止めないよ。」
と言いました。
「ありがとう、話し相手になってくれて。それに、止めないでくれて。止めたらまたずっと考えるところだったよ。」
彼は少し笑いながら言いました。
「またここに来るときは話し相手になってくれよ。」
「そう言ったからには、ちゃんとまた来てね。」
こうして、彼は森から出て行きました。

男は、軽やかな足取りで森から出て行きました。
しかし、森から出たとたん、急にゆっくり歩き始めました。
そして、その辺の木の下に座って、ぽつりと言いました。
「さて、今度は何をしようか。そうだな、ずっとこのまま考えていようか。」
その言葉を聞いたのは、彼だけでした。


**************************************************************************

えー、わたしには、K君のような文章力はありません。ご了承ください。
長くて邪魔だ!というような苦情等ありましたら、コメントしてください。もっと長いの書きます。←おい!

未完成の国の話

2007-08-03 22:32:44 | Aの作品集
ある星の、ある所に、小さな国がありました。
その国の人たちは、悲しんでいました。
なぜって?それは、壊れてしまうからです。
その国で、いや、世界には、完成したものはいつの日か壊れる運命にあったのです。
そのことに気づいたある若者が、こういいました。
“壊れるなら、創らなければいい”
その人の話を聞いた人たちは、口々に、そうだ、そうしよう、などといいました。
その日から、国は法律を作り、その国は何も創らなくなりました。

だんだん、食べ物が少なくなっていきました。でも誰も食べ物のもととなる穀物や、野菜を作りません。
発展中だった国は、人口が増えていきました。でも、家を建てないので住む所を追われる人が出てきました。
ある日、その国の偉い人は、結婚して、家庭を持つことを禁止しました。
結婚して家庭を築くのも、一つの完成されて形だという意見が出たからです。
今度はだんだん人口が減っていきました。
その国は、崩壊への道を進んでいました。

法律ができてから50年以上たったころ、いい加減みんなも、この政策が間違っていることに気づいていました。でも、誰も何も言いませんでした。どうすればいいか分からなかったからです。
創らないのはよくない、でも完成させると壊れてしまう。
“だったら、未完成にすればいいじゃないか”
ある若者が言いました。
誰も思いつかなかったその意見を聞いて、国はすぐさまそれを採用しました。
その国は崩壊をまぬがれました。
しかし、時代の流れには逆らえず、その国は他の国に吸収され、その国では革命が起き、戦争が起き、滅びていきました。

こうした出来事など、誰もが忘れてしまったぐらい後。何人かの人たちが、この国の跡を訪れました。
“この遺跡、ちょっと変だぞ” “何でこの建物は、これだけ頑丈なつくりをしているのに屋根だけないんだ?” “どの人型の人形も、足や腕が1本だけないぞ”“何でどれも中途半端なんだ?”
けれども彼らは知りません。かつてこの国で何があったかを。

そしてその中の若者が、言いました。
“そうか、この国は未完成の国だったんだ!”