―“桜の木の根元には人が埋まっている"
そんなことを言い出したのは果たして誰だろう―
と、考えながら僕は歩いていた。
目的地は、桜の木。
時は5月の終わりごろ。もう桜の季節はとっくに過ぎている。
―だが、なぜか一本だけ、この時期に咲いている桜があるらしい。
そう友達に聞いて、この週末の暇つぶしにはぴったりだと思った僕は、現在そこに向かっている。
狂い咲き、というらしい。
僕は寡聞にして、その言葉を先日母親に指摘されるまで知らなかったわけだが、
しかしどうだろう。高校生にもなって親からそんなことを教えてもらうというのはいささか恥ずかしいような気がする。
まあ、そんなことはどうでもいいわけだが。
先ほどいったとおり(僕はいったい誰に話しているんだ?)、今は暇つぶしに桜の木へ向かっている。
暇つぶしに花見なんて、お前は平安時代の貴族かというかもしれないが、この町には本当に何もない。
まだまだ公衆電話が各地にあるような町だ。
この間、失踪者が二人連続で出たというだけで、1週間学校はその話題で持ちきりになっていた。
失踪者の一人が僕の通っている高校の同学年の生徒とはいえ、いったいどれだけ田舎なんだよとつい思ってしまった。
結局、その生徒はおそらく家出したということで片付いている。
ああ、また話がそれてしまった。
桜の場所は話を聞いた段階でわかっていたので、
何も持たずに僕は歩いていた。
そこは確か小さな丘に1本だけ桜の木が植えてある場所で、
小学生は待ち合わせによく使っている。
僕も昔はよく行っていた場所だ。
場所は覚えているので、迷うことなくいけるはずだ。
とすると、桜までの道のりが暇になる。
そんなわけで、さっきから下を向いてぶつぶつ呟きながら歩いているわけだ。
―しかし、何で桜の木に人が埋まっているんだ?
勝手に埋まっていると決め付けているが、それはおいといて僕は考える。
なんで桜だろう?
梅や桃じゃだめなのか?
いっそ銀杏とかのほうがいいかもしれない。
誰か詳しい人とかいないのかな?
と、そこで、
袋小路についてしまった。
ふむ、どうやら道を間違えてしまったらしい。
どこに来てしまったんだろう?
そう思って、顔を上げると、
そこには満開の桜の木。
桃色の花弁。
いや、桃色より赤い。
まるで、そう、
血のような紅さ。
「・・・えーと、ここじゃ、ないよな?」
最近噂の桜があるのは、こことは違う場所のはずだ。
しかし、ここにある桜も、なぜか満開。
どういうことだ?
そのとき初めて、僕は自分がどこにいるのか気づいた。
―そうか、この桜のある場所は・・・。
そして僕は、すべてを理解した。
理解した瞬間、僕は歩み始めていた。
ただし、噂の桜の木があるほうを目指してではない。
僕は家に帰っていた。
その日は夜までずっと家にいた。
その晩、草木も眠る丑三つ時。
僕はこっそりと家を抜け出した。
持ち物は、軍手にシャベル。
向かう先は、今度こそ、あの桜の木のあるところ―
今回は迷わずに桜の木へたどり着けた。
駆け足気味だったので、少し休憩。
休憩後、作業を開始する。
その前に桜の周辺を見る―やっぱり。ここだけ芝があまり生えていない。
僕はその土の見えてる部分を掘っていた。
どれくらい時間がたったか。
結構な深さまで穴を掘っていた。
―いくらなんでもそろそろだろ。
そう思った時、
僕のシャベルは、今までと違う感触に出会った。
「・・・」
僕は無言で、今度は慎重に、慎重に、掘り始めた。
もうしばらくの時間の後。
僕は掘り終わった穴を見下ろしていた。
時期が時期だけに、多少傷んではいるが、
そこに埋められていたのは、紛れもない、
屍体だった。
傷み方がそこまで激しくないので、殺された(自殺者が地中に入るはずがない)のは、ついこの間といったところだろうか。
そう。つい、この間。
次の日。
結局死体はもう一度埋めた。
何故って、それは怖かったからね。
だいたい、その死体の人と僕は面識があったわけではない。
僕は赤の他人のためになにかをするようなお人よしではないんだ。
さて、今は学校帰りなわけだが、
どうしよう、少し寄り道でもしようか。
そう思って、僕は歩き始める。
“桜の木の根元には、人が埋まっている”
そう言い出したのは誰かはわからない。
でも、その言い伝えは僕がしっかりと受け継いだ。
僕は袋小路に立って、
満開の桜の木、その根元の、土が少し周りと違う場所を見ていた。
いづれはここも町の話題になるだろう。
何しろこんな田舎だ。
でも、大丈夫だろう。本当のことを知っているのは二人しかいない。
丘の桜の根元に人を埋めた誰かと、
この袋小路の桜の根元に同級生を埋めた僕。
僕はもう一人の罪を告発するつもりはない。
そんなことをしたら必ずここも見つけられてしまうから。
もう一人もきっとそうだろう。
いや、もう一人は告発するかもしれない。
そのときは、逃げ切ればいい話だ。
証拠なんて残っていない。
でも、せっかくこんなにきれいに桜が咲いているのに、
それを誰かが墓荒らしするなんて、
ちょっと、 もったいないよね。
そして、6月のある日
また1本、桜が花開いた。
場所は、僕の家の庭――
****************************************************************
読んでくれた方、ありがとうございます。
今回のテーマは、伏線を張ってみようだったのですが、
なんか張れていないような気がします。
まあ、2000文字程度の文章に伏線なんてあったもんじゃない気もしますが。。。
なんといいますか、僕は比喩、特に隠喩が致命的に苦手なんで、
T君みたいな婉曲な表現ができないんですよね。
というわけで、叙述トリックまがいに挑戦しても、
うまくいきませんね、すいません。
この話は時間があるときにちょこっとずつ書いていたので、
そのときそのときで文の調子がだいぶ違いますね、はい。
タイトルが悩んでいます。T君に相談とかして、結局勝手に決めてしまいました。
Tすまん。
内容と合っているかどうかかなり微妙ですが、タイトルつけるのが苦手なんです。
勘弁してください。
以上、言い訳でした。
この話は構想はだいぶ前からできていたので、
今回やっと書くことができてよかったです。
はい、自己満足ですね。わかっています。
とりあえず、書けて良かった。
風評は気にしない!!
そんなことを言い出したのは果たして誰だろう―
と、考えながら僕は歩いていた。
目的地は、桜の木。
時は5月の終わりごろ。もう桜の季節はとっくに過ぎている。
―だが、なぜか一本だけ、この時期に咲いている桜があるらしい。
そう友達に聞いて、この週末の暇つぶしにはぴったりだと思った僕は、現在そこに向かっている。
狂い咲き、というらしい。
僕は寡聞にして、その言葉を先日母親に指摘されるまで知らなかったわけだが、
しかしどうだろう。高校生にもなって親からそんなことを教えてもらうというのはいささか恥ずかしいような気がする。
まあ、そんなことはどうでもいいわけだが。
先ほどいったとおり(僕はいったい誰に話しているんだ?)、今は暇つぶしに桜の木へ向かっている。
暇つぶしに花見なんて、お前は平安時代の貴族かというかもしれないが、この町には本当に何もない。
まだまだ公衆電話が各地にあるような町だ。
この間、失踪者が二人連続で出たというだけで、1週間学校はその話題で持ちきりになっていた。
失踪者の一人が僕の通っている高校の同学年の生徒とはいえ、いったいどれだけ田舎なんだよとつい思ってしまった。
結局、その生徒はおそらく家出したということで片付いている。
ああ、また話がそれてしまった。
桜の場所は話を聞いた段階でわかっていたので、
何も持たずに僕は歩いていた。
そこは確か小さな丘に1本だけ桜の木が植えてある場所で、
小学生は待ち合わせによく使っている。
僕も昔はよく行っていた場所だ。
場所は覚えているので、迷うことなくいけるはずだ。
とすると、桜までの道のりが暇になる。
そんなわけで、さっきから下を向いてぶつぶつ呟きながら歩いているわけだ。
―しかし、何で桜の木に人が埋まっているんだ?
勝手に埋まっていると決め付けているが、それはおいといて僕は考える。
なんで桜だろう?
梅や桃じゃだめなのか?
いっそ銀杏とかのほうがいいかもしれない。
誰か詳しい人とかいないのかな?
と、そこで、
袋小路についてしまった。
ふむ、どうやら道を間違えてしまったらしい。
どこに来てしまったんだろう?
そう思って、顔を上げると、
そこには満開の桜の木。
桃色の花弁。
いや、桃色より赤い。
まるで、そう、
血のような紅さ。
「・・・えーと、ここじゃ、ないよな?」
最近噂の桜があるのは、こことは違う場所のはずだ。
しかし、ここにある桜も、なぜか満開。
どういうことだ?
そのとき初めて、僕は自分がどこにいるのか気づいた。
―そうか、この桜のある場所は・・・。
そして僕は、すべてを理解した。
理解した瞬間、僕は歩み始めていた。
ただし、噂の桜の木があるほうを目指してではない。
僕は家に帰っていた。
その日は夜までずっと家にいた。
その晩、草木も眠る丑三つ時。
僕はこっそりと家を抜け出した。
持ち物は、軍手にシャベル。
向かう先は、今度こそ、あの桜の木のあるところ―
今回は迷わずに桜の木へたどり着けた。
駆け足気味だったので、少し休憩。
休憩後、作業を開始する。
その前に桜の周辺を見る―やっぱり。ここだけ芝があまり生えていない。
僕はその土の見えてる部分を掘っていた。
どれくらい時間がたったか。
結構な深さまで穴を掘っていた。
―いくらなんでもそろそろだろ。
そう思った時、
僕のシャベルは、今までと違う感触に出会った。
「・・・」
僕は無言で、今度は慎重に、慎重に、掘り始めた。
もうしばらくの時間の後。
僕は掘り終わった穴を見下ろしていた。
時期が時期だけに、多少傷んではいるが、
そこに埋められていたのは、紛れもない、
屍体だった。
傷み方がそこまで激しくないので、殺された(自殺者が地中に入るはずがない)のは、ついこの間といったところだろうか。
そう。つい、この間。
次の日。
結局死体はもう一度埋めた。
何故って、それは怖かったからね。
だいたい、その死体の人と僕は面識があったわけではない。
僕は赤の他人のためになにかをするようなお人よしではないんだ。
さて、今は学校帰りなわけだが、
どうしよう、少し寄り道でもしようか。
そう思って、僕は歩き始める。
“桜の木の根元には、人が埋まっている”
そう言い出したのは誰かはわからない。
でも、その言い伝えは僕がしっかりと受け継いだ。
僕は袋小路に立って、
満開の桜の木、その根元の、土が少し周りと違う場所を見ていた。
いづれはここも町の話題になるだろう。
何しろこんな田舎だ。
でも、大丈夫だろう。本当のことを知っているのは二人しかいない。
丘の桜の根元に人を埋めた誰かと、
この袋小路の桜の根元に同級生を埋めた僕。
僕はもう一人の罪を告発するつもりはない。
そんなことをしたら必ずここも見つけられてしまうから。
もう一人もきっとそうだろう。
いや、もう一人は告発するかもしれない。
そのときは、逃げ切ればいい話だ。
証拠なんて残っていない。
でも、せっかくこんなにきれいに桜が咲いているのに、
それを誰かが墓荒らしするなんて、
ちょっと、 もったいないよね。
そして、6月のある日
また1本、桜が花開いた。
場所は、僕の家の庭――
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読んでくれた方、ありがとうございます。
今回のテーマは、伏線を張ってみようだったのですが、
なんか張れていないような気がします。
まあ、2000文字程度の文章に伏線なんてあったもんじゃない気もしますが。。。
なんといいますか、僕は比喩、特に隠喩が致命的に苦手なんで、
T君みたいな婉曲な表現ができないんですよね。
というわけで、叙述トリックまがいに挑戦しても、
うまくいきませんね、すいません。
この話は時間があるときにちょこっとずつ書いていたので、
そのときそのときで文の調子がだいぶ違いますね、はい。
タイトルが悩んでいます。T君に相談とかして、結局勝手に決めてしまいました。
Tすまん。
内容と合っているかどうかかなり微妙ですが、タイトルつけるのが苦手なんです。
勘弁してください。
以上、言い訳でした。
この話は構想はだいぶ前からできていたので、
今回やっと書くことができてよかったです。
はい、自己満足ですね。わかっています。
とりあえず、書けて良かった。
風評は気にしない!!