週末ソウル

見てきた夜を全て教えて。

『愛の渦』 三浦大輔

2006年10月30日 | 読書
ポツドールが去年上演し、第50回岸田賞を受賞した作品の戯曲です。
あたしはこれを見ていません。とてもとても、後悔しています。。。
で、来月のポツの公演「恋の渦」を観る前に読んでおこうかな、と。
なんせポツのHPで「渦シリーズ」って書かれてたんで。

乱交パーティを商品とする風俗店を舞台に、そのお客さん男女10人を描いたもの。
2時間くらいで一気に読みきりました。面白い!観たかった~!
ト書きとか、興味深く読みました。ものすごく緻密。
状況や俳優の仕草など、ものすごく細かく細かく書かれている。
前に三浦さんが「役者の動きに一切アドリブはない。全部演出した動き」と言っていて、
更にポツの安藤玉恵は、三浦さんを「病的な神経質」と称していた。
この戯曲を読むと、ほんとにそうなんだろうなーということがよくわかる。
彼の台詞や仕草、舞台セットへの神経質なほどのこだわりが、よくわかります。
これに応えなきゃいけない俳優たちは大変だろうなぁ。設定も設定だし・・・。

お客さん役の男が「考えてることの80%はスケベなこと」と言っていました。
ウソ~!?と驚きました、あたしは。だってあたしは違うから。
というか、スケベなことなんか全然考えてないから、最近。(いやほんとに)
なんかあたし淡白・・・?もしかしてオットに悪いことしてるのか?
などなど、ちょっと心配になってしまったよ。
まぁ、こういうことってなにが「普通」かよくわからないからね・・・。

12月の「恋の渦」が楽しみ!2回くらい観にいこうかな。


愛の渦

白水社

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『きいろいゾウ』 西加奈子

2006年10月26日 | 読書
わりと話題になっていたので読んでみました。
先に読んでいた彼がやたら「面白くない」と連呼するうえ、
かなり読みきるのに時間がかかったようで、なかなか回ってこない。
評判いいはずなのに…と思いながら急かすこと数日、やっと回ってきました。

ムコさんとツマさんという夫婦。そのネーミングのセンスが趣味じゃない。
でも、暮らしぶりは結構好きでした。途中までは、微笑ましい。
田舎に引っ越して、近所の人や動物などと密に接して暮らす姿。
こういうのは嫌いじゃありません。暢気な感じも、大好きです。

で、そんな暮らしが続く話?そりゃ退屈だわ、と思いつつ。
中盤に大地君が登場するあたりからあたしは面白くなりました。
すこしセクシャルな匂いもしつつ。そしてあの可愛い二通の手紙!
あんな手紙をもらったら…すごく自慢だろうな、愛読しちゃうなー。

と、結構いい話じゃん、と面白く読んでいましたが…
最後の方で雲行きが怪しくなり…最後は「ふーむ」という感じでした。
やっぱり、暢気に暮らしてるように見えて苦しい事を抱えてたのね。
苦しい事を抱えてるのは、すごく普通だ。それじゃ普通の夫婦じゃん。

でも、夫婦ってやっぱり恋人同士とは違う、と再認識しました。
結びつきや愛の深度が、やっぱり違うの、それは絶対的に違うのよ。

小説のいいところは、今の大切な人を更に大切に思えること。
読んでいる時、読み終わった後、いとしい気持ちになれること。
焦燥と混じり合っていても、愛憎であっても、「会いたい」と思う。
あたしの気持ちは、読書によってどんどん育っていく。


きいろいゾウ

小学館

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『祝福』 野中柊

2006年10月24日 | 読書
あまり記憶に残らない…短編集でした。
こういう雰囲気の小説はもうあまり読みたくないのかもしれない。
キレイな女じゃなきゃ成立しないような夢見がちな世界観。
女!って感じの小説は大好きだけれど、もっとドロドロしてほしい。
江國香織の残酷さや狂気を排除した残りの小説のようだ。

「遊園地」が中では好きでした。

祝福

角川書店

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『初恋温泉』 吉田修一

2006年10月19日 | 読書
実在の温泉と宿を舞台に書いた短編集。
以前から行きたいと思っていた那須の二期倶楽部も出てきました。

好きだったのは「白雪温泉」と「純情温泉」かな。
「白雪温泉」のカップルは、まるであたしたち夫婦のようだわ~と、苦笑。
だけれどそれをオットに言ったら「え?ボクは主役だけど」と返された。
いや、主役は感性が鈍い人がなるものなんだよ?(って書いてあるもん)
脇役でいいな。横でゴチャゴチャ言って共感して発見して喜ぶ二人でいたい。
この小説のカップルほどあたしたちはお喋りな二人じゃないと思うんだけれど、
でも、この二人はこれから幸せになるだろうなー、って自分のことのように思った。

それと「純情温泉」の最後がめちゃくちゃ微笑ましい。
17歳で、この女の子以外を好きになる想像が全くつかない男の子。
ふふ。でもね、あと10年も経ったらそんなこと忘れちゃうんだよ。
もっと大きな愛を知って、今よりずっと大切な人が隣にいる。
そして、それは、今その隣にいる彼女ではないんだよ。
意地悪なあたしは、この男の子に言ってしまいたいような気持ちになった。

初恋温泉

集英社

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『砂の王国』@三鷹市芸術文化センター

2006年10月19日 | 演劇
MITAKA"Next"Selection 7thの最後の公演、明日図鑑を観に行ってきました。
それにしてもMITAKA"Next"Selectionはいいなー、8thも楽しみ!

明日図鑑は、美術が田中敏恵さんと知って興味をもった劇団。
前作のチケットも取っていたのだけれど、無念にも行けませんでした。
なので今回は初の明日図鑑。楽しみにしていたのです。

駅からかなり歩く場所のため、開演ギリギリ(2.3分前)に到着。
で、入ってビックリ、お客さん少ない!ガラガラ!
やっぱり三鷹だからかなぁ?なんだか気の毒になってしまった。。

三鷹芸術文化センターの星のホールは、かなり大きいです。
客席数はそれほどじゃないのだけれど、ステージはかなり広い。
なので、小劇場系の劇団がお芝居するには難しい部分があるのかも。。
(ここでポツドールも田中敏恵さんの美術で公演しているけれど、どうだったんだろう?見たかったー)

で、今回の明日図鑑ですが、その大きいステージを生かした美術。
工場や事務所兼自宅があり、玄関前の庭先や自宅横の小道、階段など、広がりのあるセット。
見た瞬間「おぉ立派」と思い、そのリアルな作りにも「やっぱりね」と感心しました。
ただ、役者の人数や天井の高さも関係しているのか、どうしてもスカスカした印象。
ちょっとここ広すぎるなー、と思ってしまった。

ですが、肝心のお芝居は面白かった。脚本が面白い。
それぞれの人間関係の説明がなく、会話から探っていく感じ。
表と裏が少しずつ見えてきて、なるほど~と引き込まれました。
大久保佳代子が最初はよくいるおばさんになりかけの主婦に見えたのが、
だんだん何を考えているのかわからない不気味な女に見えてきます。
妹の髪の毛をガッと鷲掴むシーンや、ダサいエプロンやスカートなどなど、
なにこの人ー、こわいー・・・ってジワジワくる感じ。うまいなー。
そして客演の中坪さん、初めて見たけれど、うまいー、そして面白い。
美人なのに妙に笑える芝居をするというか・・・とにかく巧いと思った。

「明日図鑑」、好きなタイプでした。ここは次も行く。

三鷹はステージの空間といい、立地といい、難しい劇場ですな。
あたしは近いし嬉しいけど。


『遭難、』@青山円形劇場

2006年10月15日 | 演劇
追加公演の発売でようやく取れたチケット。
発売30分で全公演完売したんじゃないかしら。。。
今最も注目されている若手演劇人になった本谷さんの新作です。

チケットの席番号を見て、こんなブロックあったけー?と思っていました。
でもまぁ、深く考えずに行ってみたら、なんと、特設アリーナの最前列でした。
今年あたりから席運が良いのよねぇ、あたし。ついてるなぁ、相変わらず。

役者は五名。
おなじみの吉本さんと、ナイロンの松永さん、猫のホテルの佐藤真弓さん、
そして舞台出るんだ?と意外なつぐみ、文学座の反田くん、です。
もう最初の3名だけで、面白いに決まってるー!って感じですよね。
はい、もうこれは面白かったです。わりと王道の本谷節。
前回の本公演の「無理矢理」がそれほど・・・だったので心配していましたが、
これは文句なしに面白かった。モロにあたしの好みでした。

本谷さんらしいギャグがそこここにちらばめられた会話劇。
もう思わず笑っちゃうシーンが多くて、場内でもやたら受けてる人がいました。

そしてもちろん、笑いだけじゃなく、
気持ちの悪い人間関係、自意識やエゴの露出などがこれでもか!と。
自分大好き、悪いことはすべてトラウマのせい、
人の気持ちなんてわかるわけない、だからわかろうともしたくない、
そんな里見先生の常軌を逸してコミカルですらある身勝手なもがき、
それに巻き込まれたのか引きづられたのか、奇妙な職員室の人間模様。
人の気持ちなんてわかるわけないからわかろうとする努力もしない、
うーん。。。なんというか、この着目はさすがという感じ。
最後のシーンの松永さんの欠伸。あらー、と思わず脱力。
でもそうだよね、こんなことで改心する里見先生じゃないはずよ。

松永さんの役柄とカーテンコールのピース姿のギャップがすごい。
あ、この人可愛いんだなって思った。すごく可愛いのよ。
というか、里見先生時がすごくブスに見えてたから、芝居ってすごい。

それにしてもツボにはまる素敵な台詞の数々。
本谷有希子さんのセンスの良さには脱帽です。

「グバイ」そして「秘密のお菓子をあげましゅねー♪」

『風が強く吹いている』 三浦しをん

2006年10月13日 | 読書
さいこう!
最高に面白かったー。三浦しをんイイネ。

熱くなる胸と、目頭を押さえ、読み終えました。
読み終えてすぐ、また最初から読み始めていました。

スポ根好きです、あたしは。
この小説の面白いところは、「箱根駅伝」を扱っているところ。
サッカーとか野球とかの純団体競技は、漫画でもよく扱われるよね。
でも駅伝っていうのは、団体競技と個人競技の中間だと思う。

元々、箱根駅伝の密着ドキュメンタリとかは好きだし、
もちろんお正月の風物詩として、だいたい毎年見ている箱根駅伝。
それが益々興味深くなって、今年もほんと楽しみになった。

三浦しをんはボーイズラブ系が好きだと聞いたことがあるけれど、
それがすごくよくわかる。前作の「まほろ駅前~」もそうだったけれど、
男子がすごくいいのよ!思わず女子が萌える男子が描かれています。
それぞれのキャラもたっているし、ほんとに面白い。

六年かけて取材して書いた小説だそうです。
本当に駅伝のことが面白く描けているし、すごいなーって思いました。


風が強く吹いている

新潮社

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『書く女』@世田谷パブリックシアター

2006年10月12日 | 演劇
想像していたのと違って、すこーしだけガッカリしました。
でもあたしは寺島しのぶが好きなので、彼女を観られただけでもいいの。
コメディエンヌぽい寺島さんも素敵だなー。声が好きだ。

樋口一葉の人生を、彼女の日記を土台に描いたお芝居。
永井愛演出の舞台は、実は初めてです。
恥ずかしながら、樋口一葉について明るくないあたしです。
知っていたらもっと楽しめたんだろうなー、と思いました。

客層は驚くほど年齢高め。
そして、不快なほど観劇マナー悪し。
だからおじさんおばさんは嫌なのよー。
携帯がなったり、体が古いからか無闇に咳き込んだり、イビキかいたり・・・
ほんっとーにうるさい客席で、台詞も聞き取れなかったり。頭にきます。

イマドキの若い人は~なんて中年以降の人はよく言うけれど、
あたしがいつもいく若い劇作家のお芝居を観ている若い人たちは、
みんな息を詰めて舞台を見つめていますよ?見逃すまい、聞き漏らすまい、と。

“大人”の劇作家(演出・主宰・座長)の舞台を観にいくとこうなのか、
オジサマオバサマのマナーに驚いたあたしでした。

帰りは三茶から下北まで歩いて帰る。

『アジアの女』@新国立劇場

2006年10月04日 | 演劇
初めて新国立劇場へ行って来ました。
規模がわからないし、席番からいっても遠そう・・・と思ってオペラグラスも用意。
オペラグラスなんて久々に使うよーと思いながら劇場についてみれば。
会場も小さくて好み。そしてなんと、前から3列目の良席。
というのも、今回の舞台、ステージを劇場の中央に持ってきてあったのです。
(野田さんがよくやるタイプ。舞台を中心において客席が挟む感じ)
圭史の舞台でこういうのってなかったから、入った途端驚いてしまった。

お芝居自体も今までの圭史にはないタイプ。
グロいシーンはほとんどなく、全然雰囲気が違う!って思った。
(あたしはこちらのタイプの戯曲の方が好みかも。。。)

岩松了、近藤芳正のおじさん二人がとても素敵。
お芝居も存在感もチャーミングでありながら狂っている感じ。
そこに富田靖子と峯村リエがなんとも不気味で美しい雰囲気。
菅原永二も良かったです。それぞれ少しずつ狂い、でもそれが普通な。

「アジアの女」というタイトルは最初につけたんだろうけど、
なんかうまく着地できなかった感じ。つけたはいいが、落とせない、みたいな。
かなり無理矢理な感がありました。最後の方で台詞で出てきたけど。
それに、ストーリー自体もちょっと未完成な感じが否めなかった。
圭史忙しいからしょうがないのかなーって思わせちゃうような。

お芝居の中で「心が折れるんだよ!」という台詞がありました。。
あたしも『心』に関しては、この表現が好きです。
あたしは、心は壊れるものでも傷むものでもなく、折れるものだと思っています。
なのでこの表現が使われたことが嬉しくて、心をつかまれました。

カーテンコールはなし。これもまた珍しい。
暗転して、夢みたいな舞台セットに変わり、そのまま終演。
しばらく拍手が続いたけれど役者陣は出てきませんでした。

なんか観終わった後も、長塚圭史の舞台を観たって感じがしない。
それくらいいつもと全ての雰囲気が違うように、あたしは感じました。
でも、やっぱり好きです。うん、やっぱり好き。

小笠原先生

2006年10月04日 | ニュース
あたしが学生時代に習った先生で、好きな先生の一人だった小笠原先生。
三年半前に学校を卒業して以来、お会いすることはなかった。
あたしが最後にお会いしたときは、退院されたばかりだったのを覚えている。

さっき、いつものように新刊チェックをしていた。
九月の新刊情報に「小笠原賢二小説集」とあるのを見付けた。
あっ小笠原先生だ!とちょっと嬉しくなり、書誌情報を見る。
筆者の他に、編者がいる・・・・・・すごくすごく、嫌な予感。
慌ててそのままネットで調べると、やはり、亡くなられていた。
知らなかった・・・・・・。いま少し、ショックを受けている。

そしてどういう偶然なのか、今日は奇しくも先生の命日だった。
二年も知らずにいて、今更ですが・・・・・・先生のご冥福をお祈りしています。

http://ja.wikipedia.org/wiki/