武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

103. セトゥーバルからリスボン往復の立ち寄り処(マヨルカの旅プロローグ)

2012-10-20 | 独言(ひとりごと)

 セトゥーバルからリスボンに行くには必ず4月25日橋かヴァスコ・ダ・ガマ橋の何れかでテージョ河を渡らなければならない。橋は高速から繋がっているが、高速はあまり好きではない。急いで行く必要もないので、往きは国道10号線を通り、4月25日橋で行くことが多い。

 帰りにはたいていヴァスコ・ダ・ガマ橋を渡る。セトゥーバルからは大きく時計回りに円を描く様な格好だ。
 距離的にも時間的にも同じくらいで片道約1時間。どちらを通っても良いのだが、橋の長さは違い、微妙に橋の通過料金が異なる。
 4月25日橋は2キロと短く1,55ユーロとこちらの方が安い。それに4月25日橋からのリスボンの眺めが良い。橋は高くリスボン全体を南西上空から俯瞰できる格好だ。ことさら夕方などリスボンの夕陽に映える町並みは赤瓦と白い家並がサーモンピンクに染まり筆舌では尽せない素晴らしさだ。

 どちらの橋でも、リスボンに入る時だけ料金がかかるが帰りは無料だ。と言うよりリスボンに入る時に往復料金が取られていることになる。だから往きにヴァスコ・ダ・ガマ橋を使うより、4月25日橋を通過する方が安上がりに往復できる。
 帰りはどちらでも無料だから渋滞もなく道幅が広く気持ちの良いヴァスコ・ダ・ガマ橋を走る方が何となく得した気持ちになる。全長17キロのヨーロッパで一番長い橋だそうで、橋を渡りきったあたり、モンティージョの塩田にはフラミンゴの姿も見ることができる。但し、そのあたりではスピードは110キロ程が出ているから一瞬だ。それを更に猛烈な速さで追い抜いていくクルマもいる。片側3車線で1車線の幅も広く、事故が起こることもあまりないのかも知れない。

 最近は歳を取ったせいで、前立腺の影響か小用が近い。情けのないことだが、筋肉が低下し、全てが下がり、膀胱を圧迫し小水の蓄債容量が少なくなっているのだ。
 リスボンに入って渋滞などに巻き込まれる前に小用を済ませておきたい。往きはその間、サービスエリアがないので僕もいろいろと考えている。

 先ずは最近出来たばかりのコイナ・ショッピングモールのトイレ。これは国道から少し入って、ロータリーを2つも通過しなければならないし、駐車スペースに停めてからもショッピングモール内をかなり歩く。でもここは綺麗だし誰に気兼ねをすることもなくトイレが使える。トイレの手前に赤い提灯が掛かったたぶん中国人が経営する寿司店があるが勿論入ったことはない。

 もう少し先にイズィという日曜大工の大型店がある。ここは国道からすぐで、店に入って入り口の側にトイレがあり誰でも使える。でもそこではまだ一度も買い物をしたことがなく何となく気が引ける。

 もう一つはトータ・デ・アゼイタオンのアンテナショップだ。ここではトイレだけ、という訳にはいかない。トータ・デ・アゼイタオンの4個入りか6個入りの1パックを買う。自分で食べても良いし、お土産にしても良い。小さなロールケーキだが、卵がたっぷりでシナモン味が利いてポルトガルのお菓子としては甘すぎもせず美味しく、お土産としては手頃だ。ただそのアンテナショップでなくてもどこのスーパーででも手に入るから珍しくはない。
 そのアンテナショップはたいていいつも他の客の姿はなく、がらんとして、またトータ・デ・アゼイタオンが入ったショーケースは店の一番奥にあるから、入店からそのショーケースに辿り着くまでに従業員たちから注目されて何となく居心地が悪い。
 トータ・デ・アゼイタオンは日本へのお土産にもしたいくらい美味しい物だが生菓子なのでそれ程は持たない。
 トイレはモダンで掃除も行き届いていて明るく気持ちが良い。コーヒーを飲むことも出来る店だが、コーヒーを飲むとまたトイレが近くなるのでそこでは飲んだことはない。

 日本に比べて欧米ではどこでもだが、案外と公衆トイレが少ないのに困る。
 最近はポルトガル国内至る所に大小のスーパーが出来たので、地方ではそんなところのトイレを利用することが多くなった。

 一方リスボンに着いてからは小用の出来るところがなかなかない。
 カフェやレストランに入れば出来るが、駐車の問題もあるし、リスボンに行ってカフェに入ったり、食事をしたりはあまりしない。画材を仕入れたり、何かの買い物をしたりで、そういったところにはトイレはない。急いで帰ることになる。

 帰りはヴァスコ・ダ・ガマ橋を渡る。ヴァスコ・ダ・ガマ橋を渡りきって塩田を過ぎたところにはサービスエリアがありトイレだけでも使えるし、時々はそこでサンドイッチを食べることもある。温かいベーコンやソーセージのバゲットサンドイッチとポテトフライと飲物がセットになって案外と美味しくて安い。

 或いはもう少し走って高速から外れモンティージョのショッピングモールに入ることもある。大型スーパーと映画館、色んなブランドのアパレルも入った総合モールだ。いつも行くスーパーの大型店舗が入っているのでついでに買い物をすることもある。

 そのスーパーの通路手前に絨毯屋があった。通路からガラスを通して店内が全て見渡せる。ペルシャ絨毯などの良い物がいつも掛かっていて、それらを眺めるのも楽しみの一つだった。先日そこを通ると閉店していてガラスには紙が貼られ、次の店舗、ドラッグストアに改修中と書かれていた。楽しみが一つ減ったことになる。

 そのショッピングモールには当然ながらトイレは数箇所にある。
 その入り口付近のドーム屋根になったところは吹き抜けになっていて、エスカレーターを上がった2階にセルフサービスのファーストフード店が20軒程もある。ハンバーガーやピッツァ、アイスクリームは勿論、スープ専門、中華、パスタ、ケバブ、鶏の炭火焼、ポルトガルの郷土料理のファーストフードまで。早くて安くて手頃だし、そのあたりのビジネスマンや家族連れなどでいつも賑わっている。まあまあ悪くはないので我々も時々は利用する。

 その日はリスボンに用事で出かけ、食事もリスボンで済ませ、小用とちょっとした買い物だけで立ち寄った。いつも買う牛乳、ヨーグルト、肉類、野菜程度の買い物だ。
 絨毯屋が閉店し改修工事中だったので、買い物の帰り、駐車場まではショッピングカートを押しながらいつもと違う別の通路を引き返すことにした。斜めに通る通路ではなく、直角にある通路で、子供の遊び場と子供服の店舗があり、我々にはあまり用事がないのでいつもはあまり通らない。
 それにその通路にはいつも携帯電話やケーブルテレビ、カード会社などの勧誘員が立ってこちらを伺っているのでどうしても敬遠がちになる。

 その子供服店の隣に今までは気が付かなかったのだが、旅行エージェンシーがあった。表のガラスに張り紙が幾つかある。カートを押しながら何となく見てみると 『マヨルカ、7泊8日、3星ホテル、2食付、往復航空券、保険、税金サービス料全て込み、360ユーロ』 の文字が目に入った。

 マヨルカ島には以前から1度は行ってみたいという気持ちがあったので、いっきに触手が動いた。早速、店に入ってパンフレットを貰うことにしたが、パンフレットはないという。ガラスに貼ってある紙を外してコピーをしてくれた。

 家に帰って丹念に検索をしてみた。航空会社、出発、到着時刻、ホテルの口コミ評価、場所も悪くはない。天気予報も徐々に崩れそうだが今のところは良い。行くなら早いほうが良さそうだ。

 翌日早速、エージェンシーに戻り「明日からはないですか」と聞いてみた。「明日は満席で、2日後の土曜日出発ならあります。」とのことだったので、それで申し込んだ。
 小用で立ち寄っただけがひょんなところでマヨルカ島に行くこととなった。

 

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