武本比登志の端布画布(はぎれキャンヴァス)

ポルトガルに住んで感じた事などを文章にしています。

141. 税金  Imposto predial

2016-12-31 | 独言(ひとりごと)

 先日、クリスティアーノ・ロナウドが4度目となる『バロン・ドール』を受賞した。テレビで試合などを見ているとしょっちゅうゴールを外しているし、僕にはそれ程優秀な選手には思えないのだが優秀なのだろう。サッカー自体の契約金も年俸もとても使いきれないほどになるのだろうと思う。調べてみるとクリスティアーノ・ロナウドの年収は275億円だという。1日に直すと~。まぁ、ええかっ。

 ポルトガルテレビにはうんざりするほどコマーシャルに登場する。最近は母親同伴でコマーシャルに出ている。コマーシャル収入も相当なものなのだろう。そのコマーシャル収入に対する納税義務を怠っているのではないのか?スイスやバージン諸島に回避してのタックスヘイブンではないのかと捜査対象になっているとか。

 少し前にはアルゼンチンのメッシも脱税容疑で取調べを受けた。何でも大金6億円もの追徴課税を支払ったという。本来なら拘束されるところだが、初犯ということで、執行猶予扱いになっている。結構厳しい内容だ。

 ポルトガル代表でクリスチャーノと同様、リアル・マドリ在籍のコエントロンも捜査の対象になっているし、セトゥーバル出身の監督、ジョゼ・モウリーニョも捜査の対象になり、既に追徴課税を支払い済みだとか。とにかく一般庶民には想像もつかない金額を手にする。毎週宝くじに当っている様な金額で、とても使い切れないのだからすんなり税金など払えば良いと思うのだが、少しでも節税を考えるものなのか、そういった方法を教授する人たちがいるものだからそんな話は後をたたない。

 さてそんな大きな金額の話から一転して、些細な金額の税金のはなし。

 僕たちは毎年、春に日本へ一時帰国する。だいたいその頃に個展があるからだが、今年も2月中旬から5月中旬まで日本ということになる。今年は例年に比べても少し長い。

 昨年も5月初旬にポルトガルに戻ってきた。戻ってくると郵便受けにはぎっしりとダイレクトメールなどが押し込まれている。電話代、電気代、水道、ガス、などの銀行引き落とし通知書が殆どだが、そんな中に車検の期日を知らせるはがき、そして固定資産税の振込用紙なども混ざっている。固定資産税は銀行引き落としでは出来なくて、ATMから支払うか、直接税務署の窓口に行かなければならない。だから毎年、ポルトガルに戻った次の日に税務署の窓口に支払いに行く事にしている。そして固定資産税とクルマの税金を一緒に支払う。

 それが昨年はその郵便受けに固定資産税の振込用紙は入っていなかった。「遅れているのかな」と思いつつ、ポルトガルに戻った次の日にはクルマの税金だけ支払って、その足で車検を済ませた。

 そしていつまで経ってもその固定資産税の振込用紙は送られてこなかった。これは何処かで紛失していて、「その内、莫大な追徴課税と共にやってくるのかも知れないぞ。」と思い始めていた。重い腰を上げたのが半年以上たった12月である。

 先ずいつもの窓口に行った。ここでは順番札を取ってもそれ程待たされることはない。以前なら待っている間に奥のほうに座っているアナモニカが我々を目ざとく見つけて挨拶にやって来る。それが2年ほど前からセトゥーバルの支局に移ったらしく姿は見えない。以前、母親のマダレナおばさんがそう言っていた。

 すぐに順番が来て、昨年の領収書を見せ「今年の分を支払いたい」と言うと、パソコンを操作して調べてくれたが「ここでは判らない。隣の部屋のAの札を取りなさい」と言ったものだから、隣の部屋のAの札を取って順番を待つことにした。前には15人もの人が待っていることになる。でもそんなに人は居ない。札だけ取って頃合を見計らって戻ってくる人も居るのかも知れない。

 待合場所の椅子はちぐはぐなのが置いてある。ビニール貼りのベンチは背が高く奥行きが長くとても座り心地が悪そうだ。その他に事務所で余ってしまったのか、古い事務椅子が2つ、そして向こう側にも1つ。MUZはその座り心地の悪そうなベンチに座った。僕がきょろきょろしているとベンチの隣の事務椅子に座っていた男が別の事務椅子に移り直し、僕にその今まで座っていた椅子を勧めてくれた。そして僕の番号札『38』番を見て、「恐らく今から1時間半は待つことになると思うよ」と教えてくれた。その男の番号札は『30』でもう既に1時間も待っているとのことであった。お昼にかかってしまうし、職員も交代で昼食に出かける時間だし、1時間半どころか、もっと待つことになるのかも知れない。その日は金曜日であった。こういった場所は概して金曜日と月曜日は混みあう。「そうだ、来週水曜日に出直そう」と思いたち、その男に挨拶をして外に出た。

 クルマはいつも古い水道橋のあたりに駐車する。税務署からも歩いて10分はかからない。いつも何台分かは空いているし無料路上駐車である。古い水道橋の向こう側には広い石畳があっていざという時のヘリポートになっていて、一箇所救急車が出入り出来るスペースだけは駐停車禁止だ。そのあたりにも牧場などとは違う野の花が咲いていて、要チェックである。

 途中中央郵便局の前は全面通行止めにして大掛かりな道路工事をやっている。必要があるのだろうか?という工事だがポルトガルは税収が少なくあまり公共工事などに使えない筈なのにあちこちを掘り返している。いつも行くロツンダのレストラン周辺の歩道工事もやっているが、今までそのあたりを歩いている人は見たことがない。

 税金を支払いに行こうとしているものだから、税金の使い道については敏感になっている。その日はそのままスーパーに買物に行き家に帰った。買物については日本の消費税にあたる物品税を多額に支払っていることになる。でも日本に比べると物価は格段に安い。

 さて、次の水曜日には忘れずに再び税務署に出かけた。水曜日といえどもあまり先週の金曜日と変らない。やはり番号札は10人ほども待つことになる。その日は最初から座り心地の悪そうな背の高い奥行きの深い、緑色のビニール貼りのベンチに二人並んで座った。座ってみると思ったほど座り心地は悪くはない。少なくともこの待合室の椅子に関しては税金の無駄使いはなさそうである。

 Aの番号札で呼ばれても別のカウンターで何ごとか相談事をしていて「ちょっと待ってくださ~い」などと叫んでいる人もいる。やはり早くに番号札を取って頃合を見計らって戻ってくる人もいる。そして居ない番号もある。5回ほど呼び出して居なければ次の番号を呼び出す。僕たちの前は10人の内半分程が居なかった。

 やはり水曜日。それ程も待たされずに、やがて僕たちの番がやってきた。カウンターで対応してくれたのは、まるでサンタクロースの様な白髪混じりの立派な髭を生やし、鼻眼鏡を掛けた、定年間近といった感じの男性職員であった。先日と同じ様に昨年の領収書を見せて「今年の分を支払いたいのですが」と言った。カウンターからパソコンのところに引き下がって調べている様子である。そしてすぐに戻ってきた。「このあなたの住まいは古くなって資産価値が落ちています。昨年は払い過ぎていますので今年はその調整で無料です。来年はまた支払いして頂く事になるでしょう。」という僕たちにも判りやすいポルトガル語での明快な答えであった。支払い過ぎているといっても気になるほどの金額ではない、僅かな金額である。

 セトゥーバル出身の2010年世界最優秀監督ジョゼ・モウリーニョがすんなり追徴課税を支払ったものだから我家の固定資産税が無料になった。などと言う事は絶対にない。きっとサンタクロースからの贈り物に違いない。VIT

 

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1 コメント

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Unknown (Unknown)
2017-01-02 20:11:29
税金がないとはなんとらっきいですね、
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