衣裏珠の八葉蓮華 ≪創価学会 仏壇≫

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「日本の船を守る」海賊(近代的武装集団)を甘く見ている・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-31 | 産経抄(コラム)

 昨日の本紙政治面に載った市原すぐるさんの漫画がおもしろかった。ソマリア沖の海賊対策で自衛隊の艦船を派遣することに社民党など野党が反対している。だがそのイメージは時代からずれているのではと、麻生首相がクレームをつけている図である。

 その海賊とは、ひげ面に独特の服を着て帽子をかぶり、片手に剣を持った姿だ。それがドクロの印の帆を張った小さな舟に乗っている。まさか、野党の方々がそんなイメージを抱いているわけではないだろうが、日本人の多くが真っ先に思い浮かべる海賊だ。

 恐らくは、明治時代から日本の子供たちが好んで読んできたスティーブンソンの『宝島』の影響が大きい。海賊が離れ島に隠した宝物を、少年たちが探しにいく冒険小説だ。あるいは戦後の「海賊もの」の映画のイメージがしみついているのかもしれない。

 だが今、ソマリア沖などに出没する海賊はそんな物語風のものではない。ロケット砲などの武器やIT機器も備えた近代的武装集団だ。通航する船を奪い船員の身代金を要求するのを生業(なりわい)としているから、海賊には違いないのだが、その脅威は海上テロリストのものに近い。

 だから、その海賊から日本の船を守るには、訓練を積んだ自衛隊の船を派遣するしかないと海上警備行動の準備に入った。この海域で結束して海賊退治に当たろうとしている国際社会の一員として、当然のことに思える。ところが野党側はこれに異を唱えているのだ。

 社民党は例によって「自衛隊はダメ」のようだ。民主党は「なぜ海上保安庁ではいけないのか」と言う。こちらも例によって政局優先からのようだ。だがもし、海賊の古いイメージでこれを甘く見ているのだとすれば、その罪は大きい。

産経抄 産経新聞 1/31
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着々と生活の基盤を固め、島を返還する気持ちなど毛頭ない・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-30 | 産経抄(コラム)

 平成14年6月、上坂冬子さんは、いわゆる「ビザなし交流」に参加して、国後島と択捉島に上陸した。帰りの船で旧島民の一人が漏らしたこんな言葉を記録している。「日本の支援や仲良し交流の匙(さじ)加減でロシア人をなびかせようというのは考えが甘すぎる。むしろ支援をいいことに島の乗っ取りを助長させている気がしてならん」。

  島に住むほとんどのロシア人は、交流に伴う支援には感謝していた。一方で、着々と生活の基盤を固め、島を返還する気持ちなど毛頭ないことを、上坂さんも痛感した(『「北方領土」上陸記』文春文庫)。

  支援事業を行うために、国後島に上陸しようとした外務省職員らが、ロシア側から「出入国カード」提出を求められて、拒否した。自国領土なのだから、当然のことだ。平成4年から始まったビザなし交流は、ロシア側の提案で始まった。首脳同士の合意を平気で破るこの国の体質は困ったものだ。四島訪問を楽しみにしていた元島民の落胆を思うと、胸が痛む。

  もっとも、「友好交流」のあやうさを、上坂さんはとっくの昔に指摘していた。今回のロシア側の横暴は、2月7日の「北方領土の日」に向けて、改めて国民の間に返還への機運を高める、絶好のチャンスではないか。

  ロシアのメドベージェフ大統領は、ロシア極東のサハリン州で、首脳会談を行いたいと、麻生太郎首相に要請している。向こうの狙いはさだかではないが、ロシア当局に拿捕(だほ)されたカニかご漁船の乗組員のことも心配だ。

  首相は外相時代、4島という数にこだわらず、面積で2分する案を口にして、関係者をあわてさせたことがある。ご自身の好きな言葉である「日本人の矜持(きょうじ)」をもって、領土問題に当たっていただきたい。

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名優たちの汗と涙がしみこんだ「幸せ劇場」・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-29 | 産経抄(コラム)

 大阪・道頓堀にある大阪松竹座から、いっせいに出てきた観客がみんなうれしそうな顔をしていた。そんな光景を目にした大阪本社文化部の亀岡典子記者が、劇場には、「人々を幸せにする力」がある、と数日前のコラムに書いていた。

  歌舞伎座(東京・銀座)は、かつてお見合いの名所として、文字通り「幸せ」の後押しをしてきた。お正月でなくても、着物姿のお嬢さんでにぎわったものだ。最近は軽装で観劇を楽しむ人が増えたとはいえ、独特の祝祭感を醸し出していることには変わりがない。

 明治22(1889)年に開業し、関東大震災や戦災で焼失、現在は4代目に当たる建物は、国の登録有形文化財に指定されている。建て替えが昨年決まったとき小欄は、ささやかな“異議申し立て”をした。親会社の松竹が東京都に提出した計画案によると、やはり高さ150メートルのビルとの複合施設となるようだ。

  さぞ、快適な劇場に生まれ変わることだろう。瓦屋根など外観の和風のデザインをなんとか残そうとした、関係者の努力にも頭が下がる。それでも、名優たちの汗と涙がしみこんだ柱や壁が、失われるのはいかにも惜しい。

  平成19年3月、パリ・オペラ座での歌舞伎初公演に参加した市川段四郎さんが、記者会見で語っていた。「歌舞伎座には、歌舞伎の神様が住んでいると思っています。オペラ座には、演劇の神様が住んでいるようです」。伝統を誇る劇場には、神様や怪人が付きものだが、高層ビルの劇場では、居心地も悪かろう。

  演劇評論家で作家の戸板康二によれば、近くの、やはり壮麗な名建築で知られる築地本願寺と間違えて入ろうとするあわて者が、昔はいたそうだ。そんな逸話もやがて忘れられていく。

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国会中継を見ていると靴を投げつけたくなる・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-28 | 産経抄(コラム)

 読者のみなさんからのはがきやメールでのご叱責(しっせき)や励ましは、漫然と日々をやり過ごしている小欄にとって何よりのクスリだが、当方ではいかんともしがたいご意見も少なくない。「国会中継を見ていると靴を投げつけたくなる」「麻生首相以下、国会議員全員をクビにしろ」などなど。

 米国発の大不況があっという間に太平洋を渡り、土足であがりこんでいるのに、政治はあまりに無力だ。第2次補正予算はきのう成立したが、両院協議会での不毛な論議に2日も費やしたのは意味がなかった。「時はカネなり」という格言を国会議員はご存じないらしい。

 民主党が2兆円の定額給付金に反対なのは、それなりに筋が通っている。だが、衆院の議決が優先する予算のルールは、民主党議員の大好きな憲法にちゃんと書いてある。かつての牛歩戦術を思い出させる戦法は、政権党を目指すにしては志が低い。

 安全保障政策も心配だ。ソマリア沖の海賊対策では、社民党は海上保安庁の巡視船はオーケーで、自衛隊の護衛艦はダメという世にも不思議な理屈を振りかざしているが、民主党も同調しようとしている。

 連立政権樹立には、野党の結束が第一なのだろうが、国民の安全や国益という視点が欠落している。「海賊というのは漫画で見たことはあるが、イメージがわかない」と参院幹事長が平然と言ってのけたのは、ブラックジョークにしても寒すぎる。

 だから民主党には政権担当能力がない、とはいわない。衆院選までまだ日数がある。経済対策にせよ、安保政策にせよ、党内で活発に論議し、世に問えばいい。問題なのは、そういった議論がほとんど伝わってこないことだ。「民主」の看板に偽りなきことを堂々と示してほしい。

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「融通無碍」努々人気にあやかろうとすることなかれ・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-27 | 産経抄(コラム)

 NHK放送文化研究所が、平成19年に「日本人の好きなもの」と題した世論調査を行っている。昭和58年の前回調査と比べると、たとえば「見るスポーツ」では、「プロ野球」「高校野球」が、1、2位を占めることは変わらない。

  「フィギュアスケート」「サッカー」の台頭が目立ち、相撲が順位を大きく下げた。その大相撲が、久しぶりに活気を取り戻している。横綱朝青龍(28)の優勝で終わった大相撲初場所では、チケットを求めて、徹夜組まで出た。

  左ひじの故障のために3場所連続で休場し、ろくにけいこもしていなかった。引退さえ取りざたされていた横綱が、千秋楽の土俵の上でガッツポーズを披露するとは、誰が予想しただろう。それ以上に驚いたのが、朝青龍に吹きつけていた風の変化だ。

  土俵で相手をにらみつける。勝負がついた後にだめ押しをする。果ては、ネット掲示板で殺害予告をしていた男が逮捕されたニュースを聞いて「おれが殺しちゃうよ」と報道陣に毒づいた。横綱の品格など、どこを探しても見つからないのは、以前と同じ。そんなヒール(悪役)が、いまやヒーロー(英雄)扱いだ。

  もっとも相撲協会は、朝青龍人気に過大な期待をかけない方がいい。世論調査の結果を分析した放送文化研究所によると、日本人には、「融通無碍(ゆうずうむげ)」や「付和雷同」の傾向が強まっている。好みや価値観があっても、その時々の状況に応じて変える、あるいはそもそも好みがはっきりしていない人が増えているというのだ。

  世論はますます移ろいやすくなっている。表彰式で、朝青龍に内閣総理大臣杯を手渡した麻生首相は上機嫌だった。支持率の下落が続くからといって、努々(ゆめゆめ)人気にあやかろうとすることなかれ。

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道徳の裏付けのない経済は罪悪に連なる・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-26 | 産経抄(コラム)

 二宮尊徳といえば、薪を背負って本を読みながら歩いている少年の姿が思い浮かぶ。日本人の特質だった、質実と勤勉の象徴だった。その尊徳が中国で注目されていると、「日経ビジネス」新年号が伝えていた。

 世界同時不況の引き金となった金融危機は、市場経済の暴走がもたらしたものだ。特に中国に蔓延(まんえん)する拝金主義は、さまざまな社会のひずみをもたらしている。多くの学者が、「道徳の裏付けのない経済は罪悪に連なる」と書き残した尊徳の思想を、解決の糸口にしているというのだ。

 結構なことだが、冷凍ギョーザ中毒事件をめぐる中国のでたらめぶりを知ったら、尊徳も肝をつぶすだろう。千葉県と兵庫県で、3家族10人が「メタミドホス」入りの冷凍ギョーザを食べて中毒症状を起こした事件が発覚したのは、1年前の今ごろだった。

 日本の警察当局が、国内で混入された可能性は非常に低いという結論をすでに出しているのに、中国政府はいまだ公式には認めていない。それどころか、河北省にある製造元の国有企業「天洋食品」が、省政府の指示で売れ残ったギョーザを横流しして、新たな中毒事件を引き起こしていたというから、開いた口がふさがらない。  

 全国各地の農村復興に力を注いだ尊徳は、幕末の騒然とした時代を生きながら、政治に口を出すことはなかった。貧困にあえぐ農民が不平を爆発させることを何より恐れる中国政府にとって、都合のいい人物かもしれない。

 しかし、尊徳は唯々諾々(いいだくだく)と、領主の命令に従ったわけではない。年貢に見合わない贅沢(ぜいたく)を見つけたときは、身長182センチ、体重94キロの巨体を揺さぶって怒りを示したという。為政者が、襟を正さなくては、尊徳の思想も生かしようがない。

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「思いこみ」自分だけが苦しみ、自分の政府だけが・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-25 | 産経抄(コラム)

 土曜と日曜、本紙オピニオン面に掲載している「昭和正論座」は、30年以上も前「正論」欄に書かれたものを再録している。それなのに、どれもこれもみずみずしく読める。現代社会に対する警鐘として、少しも輝きを失っていないからだ。

 ドイツ文学者、西義之さんの論文にも胸がすく思いだ。例えば昨年8月31日再録されたのは昭和48年12月「石油危機」の最中に書かれた。日本の大新聞のコラムが産油国との関係など日本の外交姿勢を嘲笑(ちょうしょう)、無策を非難していることを取り上げ、これを「マト外れ」と断じている。

 西さんによれば、当時の西ドイツなど欧州各国もつぎはぎ外交を強いられている。複雑な利害の錯綜(さくそう)する世界で一国だけがうまく立ちまわることはできなかった。だから日本外交が米国追随だったために危機に陥った、という説など意味をなさないと批判する。

 中でも、米国の金融危機に始まった不況の今耳が痛いのは次の指摘だ。「私たちはややもすれば世界中で自分だけが苦しみ、自分の政府だけが無策で…あるように思いこみやすい」。もっと世界に目を広げ、冷静にみんなで考えたらいいと教示されているようだ。

 その西さんが昨年亡くなっておられた。10月というから金融危機が発生した直後である。日本人の対処の仕方についてぜひ話をうかがいたいところだった。同時に「正論」がこれほどお世話になっていながら、すぐ読者にお知らせできなかったことをおわびせねばなるまい。

 享年86。昨年5月に始まった「昭和正論座」への登場は6回におよんだ。昭子夫人によれば、生前それを見ては「自分の論理が今も通用するのか」と、目を細めておられたという。熱いものがこみ上げてくるような話であった。

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支持率が80%に達するほどにオバマ氏の輝き・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-24 | 産経抄(コラム)

 1963年11月22日、凶弾に倒れたケネディ米大統領の葬儀は3日後、ワシントンの教会で行われた。このとき、ジャクリーン夫人に手を引かれて参列した2人の遺児が世界中の涙を誘った。幼気(いたいけ)な姿が「ケネディ神話」を増幅させたといってもよかった。

  そのうち長女、キャロラインさんの名前が久しぶりに、マスコミに登場した。ヒラリー・クリントンさんの国務長官就任に伴うニューヨーク州選出上院議員の後継指名争いに名乗りをあげたからだ。当時6歳の少女も今や51歳、有力な候補の一人に数えられていた。  ところが、そのキャロラインさんが突如指名争いから撤退を表明した。叔父、つまり元大統領の弟のエドワード・ケネディ氏の健康が悪化したためだという。だが世論調査などから、ケネディ家というだけでは支持が得られそうもないと分かったことも理由のようだ。

 オバマ新大統領は選挙戦の最中から、ケネディ元大統領に比せられることが多かった。同じ民主党で、ともに就任時40代の若さ、米国の変革を唱えるなど共通点は多い。オバマ氏自身も支持者たちも多分に意識していたことは間違いないだろう。

  しかし中国の国共対立当時、国民党の蒋介石総統が述べたといわれるように、空に二つの太陽はない。支持率が80%に達するほどにオバマ氏の輝きが増せば、半世紀近く前の「ケネディ神話」は色あせてくる。キャロラインさんもそんな「悲哀」を味わっているのかもしれない。

 外交面でもケネディ政権はキューバ危機をはじめ強硬路線が多かった。これに対しオバマ政権は、うまくいくかはともかく、国際協調路線を打ち出している。キューバとの関係改善もささやかれる。米国政治の変幻自在さなのだろうか。

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人生を謳歌するには、何より体力が欠かせない・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-23 | 産経抄(コラム)

 死語というほどではないけれど、近ごろ使われなくなった言葉のひとつに「お転婆(てんば)」がある。木登りが好きだったり、かけっこが男の子より速かったり。一昔前のNHK朝のドラマのヒロインには、こんなタイプの少女が多かった。

  茶道家の塩月弥栄子さんは、「裏千家のお転婆少女」だったと、明治大学教授の斎藤孝さんとの対談で語っている(『女性に必要な12の力』アシェット婦人画報社)。小さいころから、スケートや水泳に親しみ、近所の男の子とけんかしても負けたことがない。

  裏千家の向かいの寺には、男の子が腹いせに、ろう石で書いた「ヤエコのバカ」の落書きが、いまでも残っている。文部科学省が、初めて全国一斉に行った体力テストと運動習慣の調査によれば、そんなお転婆とはほど遠い、女の子が増えているようだ。中学2年の女子生徒の3割が、体育の授業以外はほとんど運動していないという。

  都道府県別の結果では、学力テストで成績のよかった県が、体力テストの合計点でもやはり上位を占めていた。全国学力調査と同様に今回の調査に対しても、「国が口を出す問題ではない」「強制はかえってスポーツ嫌いを増やす」といった批判がある。果たしてそうだろうか。

  塩月さんは、波乱に富んだ私生活を送る一方で、茶道を広げるために世界を飛び回り、シリーズ全体で700万部を超えるベストセラーとなった『冠婚葬祭入門』の著者でもある。70歳をこえてからも、自らを「お転婆ばぁ」と称して、ゴルフや乗馬、フラダンスを楽しんだ。

  恋をして、仕事に励み、育児に追われる。盛りだくさんの女性の人生を謳歌(おうか)するには、何より体力が欠かせない。それを教え込むのが、教育ではないか。

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「新しい責任の時代」 自分が国に対して何ができるか・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-22 | 産経抄(コラム)

 トマス・ペインといえば、アメリカ独立の機運を高めた『コモン・センス』の筆者として知られる。1776年に独立宣言が発布されると、ワシントン将軍のもとでイギリス軍と戦った。ところが、敗走につぐ敗走で士気が下がるばかり。

 そんななか書き上げた論文が『危機』だ。その年の暮れの吹雪の夜、ワシントン将軍は兵士たちを集めて、朗読するよう命令した。「酷寒のなか、希望と良識しか生き残れないとき…」。まもなくアメリカ軍は反攻に転じる。

 バラク・オバマ第44代大統領(47)も、就任演説の結び近くで『危機』を引用した。演説の名手は、100年に1度どころか建国以来の危機に際して、国民にあらためて団結の必要を訴えた。史上初の黒人大統領の演説集が人気を呼ぶ日本では、未明に放映された生中継の視聴率が6%近くに達するほど、演説の内容に関心が高まった。

 もっとも、「新しい責任の時代」を見出しに取った新聞各紙は、キャッチフレーズ探しに苦労したようだ。おなじみの「イエス・ウイ・キャン」も「チェンジ」も省かれていた。ワシントン駐在経験のある同僚記者は、「意識的に地味にしたのでは」との見方を示す。

 新大統領が直面するテロとの戦いや経済の立て直しといった問題は、いずれも成果が挙がるのに時間がかかる。期待が大きすぎると、仕事がやりにくいからだ。就任式の名演説といえば、誰もが故ケネディ元大統領を思い浮かべる。

 「自分が国に対して何ができるかを問え」と国民に呼びかけた本人は、自国をベトナム戦争の泥沼に引き入れたまま、2年10カ月後に凶弾に倒れた。「名演説だけが残る大統領にはならない」。新大統領は、こんな意志を示したのかもしれない。

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練り上げた見事な政治ショーの連続に舌を巻かざるを得ない・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-21 | 産経抄(コラム)

 心がけというほどのものではないが、小欄を書くに当たって少しばかり気をつけていることがある。一つは「タラレバ」料理を極力出さないことである。

 もし桶狭間で織田信長が負けていた、真珠湾を日本軍が波状攻撃していれば、といった類(たぐい)の話は我々の好奇心を大いにくすぐってくれる。ただし、現実にはほとんど意味がない。残念ながら歴史は非情で、結果がすべてだからだ。

 もう一つは、「引換」券をなるべく発行しないようにすることだ。欧米や中国は素晴らしい。それにひきかえ日本は、という論法である。歴史や風土、社会システムといった環境や条件が違えば、単純に物事の善悪を比較できないはずだからだ。

 とはいえ、オバマ米大統領の就任イベントを見るにつけ、引換券を乱発したくなる誘惑にかられる。古き良き時代への郷愁をかきたてる列車でワシントン入りし、ホームレスのための避難所でペンキ塗り。27歳のスピーチライターと練り上げた就任演説と、見事な政治ショーの連続に舌を巻かざるを得ない。

 こちら東京。自民、民主両党大会の党首演説は心打つ言葉がまるでなかった。国会では、定額給付金や税制関連法案の付則の話ばかりで、日を追って厳しさを増す大不況に右往左往するばかり。何よりこの国の政治家の言葉には人を動かす力が決定的に欠けている。

 こんな政治にした責任は、この程度の政治家しか送りだせなかった有権者の側にも大いにある。無論、政党の怠慢は責められるべきだが、党員はもとより、政党に1000円でも献金した経験のある人は少数派だ。政治は別世界のものではない。国民が参加し、政治を動かす気概を持たねば、いつまでも引換券ばかりつかまされるはめになる。

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「画家デビュー作品1億円」サインは、はしっこに小さく記されているものだが・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-20 | 産経抄(コラム)
 キャンバスのほとんどを占める大きな窓の向こうに、雪がちらついている。きのうの「SANKEI EXPRESS」紙に、ロシアのウラジーミル・プーチン首相(56)の「画家デビュー」作品の写真が大きく載っていた。

 絵心のない小欄には、「これが1億円?」という疑問しか浮かんでこない。首相の故郷サンクトペテルブルクでチャリティーオークションが開かれ、モスクワの画廊の女性経営者が、激しい競り合いの末3700万ルーブル(約1億円)で落札したという。

 落語の演目のひとつ「寝床」には、義太夫を語るのが好きでたまらない大家の旦那(だんな)が出てくる。あまりに下手なので、長屋の店子(たなこ)は誰も聞きに来ない。旦那はごちそうを用意して、なんとか呼び寄せようとする。

 昔はこんな旦那がたくさんいたようだ。日本演劇史の生き証人といわれる長岡輝子さんが、ある対談で女優の十朱幸代さんの祖父のことを話題にしていた。自宅に舞台をつくるほどの義太夫好きだったが、息子久雄が俳優の道に進むことには大反対だった。

 自分はちゃんとごちそうして聞いていただいているのに、「おまえは、お金をとって下手っぴいの芝居をやるとは何事だ!」というのだ。さすが、プーチン氏となると、ごちそうするどころか、下手っぴい(かもしれない)作品に、大金を投じる人がいる。

 絵をよくみれば、もうひとつ特徴があった。普通画家のサインは、はしっこに小さく記されているものだが、この絵の上部には大きく「プーチン」とある。人気の秘密がわかった。将来大統領に返り咲くともうわさされる実力者の歓心が得られるなら、安いものだ。画廊には、1億円を超える価格で購入の申し込みがすでに来ているのかもしれない。

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それぞれの家の「おふくろの味」 ・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-19 | 産経抄(コラム)
 「卵が一番好きなんだ いりたまご うでたまご めだまやき おかあさんの匂いがするんだもん おかあさんがつくってくれるんだもん ほんとだよ」。サトウハチローは、日本一、いや世界で一番多くの母の詩を作った詩人といわれる。

 作品のなかには、大好物の卵料理のほかにも、さまざまな「おふくろの味」がちりばめられている。かるめやき、おこげのおむすび、とんがらしを入れないきんぴらごぼう…。

 「母親の肉ジャガです」。エチオピアで昨年9月に武装集団に誘拐された日本人医師の赤羽桂子さん(32)が、先週9カ月ぶりに帰国した。到着した空港で「食べたいものは?」と聞かれて、笑顔で答えていた。監禁中に何度も思いだして、心のなかで味わっていたのに違いない。

 ニューヨーク市のハドソン川で、不時着事故を起こしたUSエアウェイズ機の搭乗者の、その日の晩餐(ばんさん)の様子を想像してみる。いまや英雄となったチェスリー・サレンバーガー機長と、救助に当たった人たちに感謝しつつ、家族や恋人、友人と「奇跡の生還」を喜びあったに違いない。

 アメリカにもそれぞれの家の「おふくろの味」があるはずだ。そのアメリカで放映されたドキュメンタリー映画「めぐみ-引き裂かれた家族の30年」=原題「アブダクション」(拉致)=が、放送ジャーナリズム分野のピュリツァー賞とされる「デュポン賞」の受賞作品に決まった。

 小欄でも紹介したことがあるが、在米のカナダ人夫妻が、北朝鮮に拉致された横田めぐみさんの救出活動を懸命に続ける、父親の滋さんと母親の早紀江さんの姿を追ったものだ。30年以上も「おふくろの味」から引き離された日本人がいることを、世界はもっと知ってほしい。

産経抄 産経新聞 1/19
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炎のような全共闘運動の陰には何倍もの「被害者」 ・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-18 | 産経抄(コラム)
 「あの東大がこれほど国民に身近なものになったことはない」。そんな皮肉が聞かれたのは昭和44年のことである。1月18日と19日東大の安田講堂などを占拠した全共闘の学生たちと、排除しようとする機動隊との間で激しい攻防戦が繰り広げられた。

 催涙ガス弾や火炎瓶が飛び交う攻防戦は、最後の安田講堂の「落城」まで35時間近くに及んだ。テレビ各局はニュースや特番で生中継し、視聴率は最高で約45%に達した。だから東大に縁もゆかりもなかった人でも、学部や建物の配置に詳しくなってしまったのだ。

 結局この年の東大の入試は中止になる。2日間の攻防で逮捕された630人余りのうち、東大生は40人足らずだった。全国の全共闘運動にとってここが「決戦場」となったのである。「落城」を機に、運動はまるで潮が引くようにして沈静化していったのだ。

 その決戦からちょうど40年、有名語化した「全共闘」世代の大半も企業では定年を迎えている。そんな節目のせいかテレビなどで運動を振り返り、総括しようという動きが盛んだ。だがノスタルジアに浸ってみたり、自らを正当化したりというのなら興ざめな思いがする。

 というのも、嵐のような運動の陰には何倍もの「被害者」がいたからだ。入試中止で浪人生活を強いられた受験生はまだしも、暴力的に勉学の場を奪われた学生や、貴重な本や資料を損壊された教官も数多い。東大の攻防戦でも多くの警察官が傷ついている。

 だが、そのことをまず謝ってからという全共闘世代にはあまり出会わない。昨日、40年後の「戦場」を確かめようと本郷の東大を訪ねると、ちょうどセンター試験の最中だった。正門の前には、あの時とまったく異質の緊張感が漂っていた。

産経抄 産経新聞 1/18
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仕事熱心で偉ぶらない人の中に「動物園の珍獣」 ・・・ 産経抄 八葉蓮華

2009-01-17 | 産経抄(コラム)
 キャリアという言葉は、本来は職業の経歴や熟練を要する技術を意味する。新聞記事では、国家公務員試験I種試験に合格した官僚を指すことが多い。小欄が知る限りでは、仕事熱心で偉ぶらない人がほとんどだ。

 数百人にインタビューした横田由美子さんによると、「動物園の珍獣」のような人もいるらしい。政界進出を決意したある外交官は、横田さんに大まじめで聞いた。「俺は総理大臣になる男なんだ」「そのときは何大臣がやりたい?」(『私が愛した官僚たち』講談社)。

 昨年12月24日、警察庁キャリアの30代の警視が成田空港で、手荷物検査の女性検査員にトレーを投げつけた振るまいは、笑ってすませるわけにはいかない。私用でドイツに向かっていた警視は、制限基準を超える液体容器を機内に持ち込もうとした。制止する検査員に、「千葉県警本部長を呼べ」などと暴言も吐いた。

 近い将来避けられない消費税の増税は、公務員制度改革を進めて、行政の無駄を徹底的になくすことが前提となる。もともと法的根拠があるわけではない、キャリア制度も見直さないと、こんなゆがんだエリート意識をふりかざす官僚の絶滅は難しいだろう。

 といっても、彼らの仕事が今後も日本を支えていくことには変わりがない。本当の意味でのエリートがいてくれなくては困る。警察庁でいえば、自宅前で銃撃され、瀕死(ひんし)の重傷を負いながら、2カ月半後に公務に復帰した国松孝次元警察庁長官のような人物だ。

 謦咳(けいがい)に接したわけではないが、先輩記者の葬儀に参列していた姿が印象に残る。まだ傷が癒えていないにもかかわらず、関係者が見つけて控室に案内するまで、炎天下長い列の最後尾に、ステッキ姿で平然と立っていた。

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