みなりんの紀行文

写真とともに綴る、旅の思い出を中心としたエッセイ。
主に日本国内を旅して、自分なりに発見したことを書いています。

川口の旧田中家住宅(田中徳兵衛氏宅)見学

2013年05月07日 22時52分51秒 | アート・文化


埼玉県の川口に、昔、味噌などの製造業・木材業などで大成功した資産家で、貴族院議員まで務めた、四代目田中徳兵衛氏の旧宅があり、その旧宅は今では文化財に登録されて、見学可能であった。

用事があって川口へ行く途中、見学することになった。

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建築費用は現在で言うところの二憶五千万円と言われる。

洋館建築は、当時一級の宮大工棟梁(京都の東本願寺本堂を建築した)に建築法を学んだ櫻井忍夫。これに関わった多くの棟梁が、川口の職人さんである。

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011外壁はヨーロッパにあるのと同じく煉瓦造り。

材木業もしていて、屋根には屋久スギなどもふんだんに使用されて、床細工も見事だった。

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005_2さりげなく、そう目立たないところに、ステンドグラスがあって、綺麗で印象を深くする。

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006正面の玄関からは、店先になる。

洋館なのに、左のような神棚がある。(照明の部分の棚)

奥の和館の和室には、仏壇もあった。

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027昔の頑丈そうな金庫。

四代目の徳兵衛さんは、19歳で家督を継ぎ、非凡な商才があったようだ。

二階の和室へ行くと、人柄が徐々にわかっていく。

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029二階で、二重窓になっている造りに感心する。

丁寧に造られていて、大正10年の建築物ということを忘れるほどであった。

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021二階の和室に、「三省」という額字を拝見。

これは多分、「われ日にわが身を三省す」という論語の中の有名な言葉。

忠義を尽くしていなかったのではないか、朋友に対して誠意はなかったのではないか、習いもしないこと述べて言動に無責任ではなかったか、と自分に猛省をするということだったと思う。

政治家としての素質が問われる。

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201部屋の板目に、彫り物がなされて、漢詩が謳われている。

蘭のことを書いていて、君子の心得ではないかと推察したが、詳細はよくわからなかった。

しかし、家主のかなりの向学心と教養が部屋からも考察できた。

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007_2ガラスの透かし彫りも美しく、部屋は上品な雰囲気で、どの部屋も気品がある。

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013グランドピアノのある客間。

明るくて、清潔感のある優雅なお部屋。

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論語を読んでいて、さぞ頭の固い人だろうと思うかも知れないが、やはり多才な実業家で、アールデコ調の装飾の照明器具などがいたるところに見られて、オシャレな感性の持ち主だったようだ。

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019一階の和館へ移動する。

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010_2ちょうど時期は五月だから、端午の節句が飾ってあった。

男子の本懐とは、逆風にあっても怒らず泰然自若として前進し、目的を果たすのみ、という感じ。

要は芯があって凛としている。

べらべらしゃべらないが、やることは果たす。

人形の様子を見て、武士とはこういうイメージかなと想像した。

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002最後に、お庭を歩く。

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004奥にはお茶室があり、集会所にもなっていて、そこで驚く。

大勢が集まる部屋に、スチール製ではなく、木彫りの素朴な椅子がずらりと並び、来てくださった人をどんな人でも大事にする雰囲気を感じた。

中の茶室は、身分相応の簡略ながらも清潔感あるもので、懲りに凝ったものではないが、きちんとしつらえてあって、礼儀や作法にかなってみんなで楽しめそうなお茶室のようだった。

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018お庭には池もあり、菖蒲の花が綺麗に咲いていた。

一方で・・・。

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003枯山水のお庭にもなっていて、ぐるっと歩いて十分楽しめて興味が尽きなかった。

財力があれば政治家になれるというだけではなく、高い教養やセンスの良さや人脈や穏やかな物腰など、すべてが社会では評価されていたのかもしれない。

世の中には各地に名士と言われる方々がいるが、なるほどなあと思って、つくづく建築物を感心して見学した次第である。



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