ドライブにて

コマーシャルドライブに行くこと、このあたりの人は「ドライブを歩く」というような言い方をする。日本語的な感覚だとすごく矛盾な言い方だけど。。。

ここへは、フィルという男の子がワーホリ時代に初めて連れて来てくれたんだった。ある日突然電話してきて、「コマーシャルドライブ行かない？」
「それってどこ？」と訊くと、
本当にダウンタウン以外の場所、全然知らないんだね。面白いところだよ、きっと気に入ると思う、と言い、電車の乗り方を電話口で説明してくれて待ち合わせた。
秋だか冬だか決めかねているような肌寒い曇り空の午後、2人でぶらぶらと店を冷やかし、カフェで温かいものを飲んでおしゃべりして休み、また歩いた。それがドライブとの始まりだった。

ドライブに住みたいとおぼろげに考え始めた頃から、ネックはその最寄の駅だった。
その駅の周辺は治安がよくない。イヤーホンをしたまま夜道を帰る女性が次々襲われたりしていたし(そもそも夜道で音楽など聴かなければいいんだけど)、朝のラッシュアワーはホームに人がいっぱいで積み残しは茶飯事。
いくら住みたくったってこれじゃあね、、、といつも電車から眺めていた。
今住んでいるのはドライブの外れ。駅からは遠いけれど、急行のバス停の近くで、運が良ければ10分で職場に着く。しかも終点は職場のまん前。「まるでリムジンサービスみたい」と友達は皆笑う。そんなわけでドライブの近くに住めて、通勤の悩みも解決してしまったアパートに偶然出会えたのだった。
家に帰るのにも、いくつも選択肢があるっていうのもいい。全て交通機関が止まってしまっても、歩いて帰れないこともないし。。。


ドライブでは知らない人同士がおしゃべりするのをよく見かける。果物を選びながら、犬の散歩中に飼い主同士が、バス停にて・・・私もつい数日前はジプシーみたいな男の人と(見かけはちょっと怖かったけど話せば普通で、人は見かけによらないもんだという認識を新たにした)、よくあるのはお年寄りと、それ以外では韓国人留学生と(とても多いんです)。。。もうどのくらいここでバス待ってる？と訊かれ、答えた後もここのバスはなかなか来ないよね、来るときは3台とか一気にきちゃうのに、と言い合った後は天気の話になったりする。
花を持ってバスに乗り込めば、運転手さんは大概コメントしてくるし、乗客もどんなに混んでいてもお花をつぶさないように気を配ってくれる。
つい先だってのこと。乗れなかった車椅子の人がすでに乗り込んでいた乗客を罵倒していた。そりゃ、んも、すごい迫力で、ネガティブパワー炸裂…楽しい場面ばかりに出くわす訳じゃないってこと。。。
あまりの悪意に度肝を抜かれてたら近くのお姉さんに「ふふふ、公共交通機関ってすっごくentertainingよね？」と笑いかけられ、まったくホントにね…と賛同したのだった。余談ながらこちらの車椅子の人、アグレッシブな人多いんです。「私が先に乗るのが当然でしょ！」って雰囲気まんまんなんすから。なんであんなに威張ってるんだろう、って思うこともあるくらいで。。。大きな声では言えないけど。




この前まで、ドライブはアジア系が少ない気がして目立つのを怖れてびくびくしていた。さすがに2ヶ月経てば慣れてきたようで。
そういえばね、いつかこの近くに一軒家の一室貸します、猫ＯＫというところがあってその下見に行った時のこと。
うろうろと番地と道の名前を追いながら歩いていると、昼間っからワインボトルを持ってご機嫌の初老の男性3人が道路にぺったりと座ってあーでもないこーでもないと議論してた。
特に気に留めず通り過ぎたら、「Hey! How are you, smartie？」
…突然のことで、え、私のこと？スマーティー？
と見ると皆にっこにこしてこちらを見てる。感じが悪いわけじゃないから、こちらもにっこり。そしてきちんと返事をしたら拍手喝采だった　
後日カナダ人に事情を話し、スマーティーって？って訊いてみた。彼らは、
「そうだねぇ・・・メガネ掛けてた？」
「ううん(やっぱりガリ勉、みたいな意味か)」
「じゃ、本でも読んでた？」
「あ！本を持ってた」「それだよ」ということに。
この街に住んで11年。いまさらながら(って感じだけど)外国に住んでるっていうような手探り感覚の生活を送ってます。