これは何でしょうね?
これは、組紐の高台で使う 「汽車」 というものです。
15匁くらいのおもり玉を使うために、小さく、そしてボッチの間隔も狭くなっています。
一般に、ミニ汽車、と呼ばれています。
先般、普通サイズの汽車を20個制作して納品しましたが、写真を撮り忘れたので、ミニ汽車の記事を書くことにしました。 作り方は全く同じです。
汽車は高台の腕の部分に置いて、糸を掛けておくために使います。 高台では汽車の上に置いた糸を、前のほうから順次、反対側の後ろに持っていくので、前が空き、後ろのポジションがなくなってきます。
これは昔の日本人が考案したすぐれた発明だと思います。
後ろのポジションがいっぱいになったら、前にある空きポジションの汽車を外して、一番後ろのポジションにおくことができます。 そのために腕には溝が切ってあり、汽車の底には溝にあう凸がついています。 汽車は腕の上をスライドするようになっているのです。 これを繰り返して組紐は長くなっていきます。
ミニ汽車製作の手順はというと、
最初に30x40mmの角材を購入。
扱いやすいように40㎝くらいづつにカットします。
幅40mmを34mmにバンドソーで縦切りします。 (ちょっとだけ大きめに)
かんなで縦30mm、幅34mmちょうどになるように整形します。
さらに、これから長さ80mmの角材を切り出します。 最終サイズは78mm長です。
高台のほぞに合うように、角材の底中央に高さ10mm、幅10mmのスライド用の凸を作りこみます。 XYクロステーブル付のミニフライス盤で、メタルソーでカットしました。 まっすぐきれいな直線と直角が出せます。 底面に=の形に切り込みを入れ、横面から切り込みを入れると12mmx10mmの角の部分が切り取れます。
汽車のボッチ用の穴を等間隔に開けます。 ミニ汽車なので5mmφの穴をあけました。 一番端の穴は角材の端から1.5mmで接します。 角材を仕上げサイズに先にカットしてしまうと、穴あけ時に木の端が欠けて飛んだりするので、2mm程度で接するように穴あけし、最後に角材の端を落として調整します。 穴の深さは同じになるようにフライス盤またはボール盤を調整しておきます。
次に、汽車の屋根にあたる部分を丸く削るわけですが、都合の良い機械がないので、手カンナで削ります。 まず標本となる1個目の汽車を丁寧に作ります。 両断面に目標となる円を描き、手カンナで削っていきます。
標本ができたら、その断面を次の角材に写し取り、標本を手前に、次の角材を前方に密着させて、かんなを標本に沿わせて削っていきます。 かんなの刃が当たる限り、標本のほうが小さいわけですから、刃が当たらなくなるまで削っていけば、同じサイズの同じ形のものができる、という寸法です。
かくして同じ形の汽車20個の荒削りができました。 次は、#400の耐水ペーパーで表面をサンディングします(から砥ぎです)。 角材は赤松の垂木を使用していますが、#400でサンドしただけでも、絹糸は引っかかりません。 これで仕上げとしてもいいのですが、最後は#1000でサンドします。
次は、汽車のボッチ、ダボの作成です。 5mmφx30mm長のダボを120本こしらえます。 歩留りも考慮して130本切り出します。 切り出したダボの端をU字型のバイト(刃物)を使って旋盤で1個1個丸く削ります。 そして断面をサンドペーパーできれいにしておきます。 他の端もバリがありますのできれいにしておきます。 ここでダボの表面(側面)にもサンドペーパーを当て、絹糸が引っかからないように滑らかにしておきます。 ここで手を抜くと使用時に絹糸が引っかかり糸にほつれができてしまいます。
汽車同士がぴったりと密着するように断面をサンドペーパーなり、フライスでエンドミルなどを使って90度の断面にしておく必要があります。
いよいよ汽車にダボを接着していきます。 ダボを穴よりほんの少し小さめにサンドし、木工ボンドを少量塗り、穴に入れ接着します。 ここでの注意点は、すべてのダボが同じ高さになるようにすることです。 そのため、19mm高の高さ調節板に同間隔の穴をあけておき、ダボをいれたら高さ調節板をかぶせてダボの頭の高さを合わせるわけです。
かくして出来上がったものがこの写真です。
ダボの間にくっついた接着剤は、上の写真のようにサンドペーパーでこすり落とします。
まだこれで完成ではないのです。
ダボは旋盤で削り、サンドしても、木の繊維が縦に走っているためにダボの頭に絹糸に引っかかるのです。
さてどうしよう・・・
そこで思いついたのが、先般リールシートに使えないか実験したUVレジンです。 UVレジンが硬化するとツルツルの表面になり、ルアーの目玉などを作るのに適しています。 ダボの頭がツルツルであれば絹糸も引っかかることがないでしょう。 それに、硬化までに時間は塗ってから数分という手軽さ。 打ってつけではあ~りませんっかっか。
だから塗りましたよ~・・・120本。
UVレジンは塗ってから放っておくと垂れてきます。 だから塗ってはすぐ硬化させる、という風に段取りしたほうがいいでしょう。 最初全部UVレジンを塗ってから日光に当てたところ、液だれしたり木が吸い込んだりして、硬化しても先端がツルツルにならなかったのです。 縦に走った木の繊維の先端がレジンから飛び出していてせっかくUVレジンを塗ったのに絹糸に引っかかるのでした。
再び頭をサンドして、UVレジンの2回目に塗布を行いました。 そして今度は20年前に買っておいた紫外線照射器を使ってみました(日が陰ってしまったので)。 紫外線照射器の寿命は1年くらいだとネットに書いてありましたが、この紫外線ランプは旧式のせいなのか、いまだに紫外線を照射できました。 目には悪いので紫外線を見ないように注意が要ります。
3分程度照射すると表面は触ってもべとつきませんが、脇の方に液だれしたものはまだ手にくっつきます。 紫外線が上からしか当てていないためです。
じゃによってお天道様の助けもかりました。 横からも斜めからも紫外線が当たるように、箱に入れて窓際に置いて直射日光に当てました。
そしてミニ汽車がついに完成したのです。
作るのは意外に面倒な小道具です。 ハイ