場末の雑文置き場

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「笑傲江湖」の岳霊珊

2013年06月16日 | 小説

金庸の武侠小説、笑傲江湖。この小説には三人の全くタイプの異なる美少女キャラクターが登場する。幼馴染あり、ツンデレお嬢様あり、尼さんあり。

人気度で言えば、ラストで令狐冲の妻になる任盈盈が圧倒的だろう。40年以上前の作品の登場人物なのに、現代のオタクの萌えツボをつきそうな見事なツンデレぶりを発揮してくれる。
戦闘能力が非常に高く、聡明で、優しさと残酷さを併せ持つ女性。うまい人物設計だと思うし、人気があるのも納得できる。

それに対して、幼馴染キャラの岳霊珊はあまり人気がない。岳霊珊は、最初は主人公と仲が良かったが、途中から他の男性に惚れてしまう。萌えオタが見たらビッチ扱いしそうなキャラだけど、私は彼女が結構好きだ。

一番の理由は、主人公に都合のいい女性キャラばかりいてもつまらないから。
最近、主人公一人がモテモテで他の男の影が薄すぎる話をよく見る。たとえ主人公に魅力があっても嘘くさい話なのに、大して取り柄のない主人公でそれをやられてしまうとげんなりしてしまう。

確かに「笑傲江湖」の主人公、令狐冲はとても魅力的な人物だ。器も大きい。複数の美少女から想いを寄せられるという描写にも違和感はない。そうであっても、主人公を盲目的に持ち上げるばかりではない女性キャラが一人は欲しい。

岳霊珊は作中でも、令狐冲の支持者から散々な評価を受ける。男を見る目がないとか、心変わりをしたひどい女だとか。心変わりは人間だからありえることだし、そこまで責められることではないとも思うが、岳霊珊のそれは心変わりとも違う。

岳霊珊は本人も言っているように、令狐冲のことをはじめから兄のようにしか思っていない。それはきちんと読めば分かることだ。(映像化作品での描かれ方は違うらしいが、それは見ていないので置いておく。)
ほのかな憧れのようなものくらいは抱いていたかもしれないが、それは恋愛感情とは違った。岳霊珊が後に令狐冲に冷たくなったのは、そのあたりのことに気付いて気恥ずかしくなったからでは、と思っている。

ちなみに、岳霊珊は所謂ビッチなどでは決してない。ビッチって言葉自体嫌いだけど、そこは置いておいて。主人公の気持ちには応えなかっただけで、林平之に対しては本当に一途だ。見ていて心配になるレベルで。

岳霊珊の末路は悲惨だ。主人公に想いを寄せる他二人の美少女キャラクターが生き残るのに対し、彼女は夫となった林平之の手で殺される。
このあたりは、自分になびかない女は不幸になれ、という作者の深層心理が反映されているのでは、と邪推してしまって怖くなる。


→「笑傲江湖」の林平之

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