場末の雑文置き場

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「仮面ライダー龍騎」キャラクター別感想②

2016年10月10日 | 特撮
須藤

俳優のインタビュー映像で、一番役とのギャップを感じたのはこの人だった。別人みたいに爽やか。演技は上手くないはずなのに。

たった二話だけの登場なのにすごいインパクトを残していったよな。常に敬語で一人称が私、愉快な棒読みと、出番の割にキャラも立ってるし。壁に埋まった死体の話とか、退場の仕方とか完璧だった。子供向け番組でやる内容じゃなかった。

出てきたと思ったら即退場したんでネタキャラ扱いされることもあるけど、かなり怖い人なんだよな。神崎士郎以外では唯一浅倉に迫るレベルの極悪ぶりだったと思う。
日常的にモンスターに人食わせてるからね。ライダーになる前から殺人罪犯してるしな。仮面ライダー=正義の味方という図式を見事にぶっ壊してくれた。
しかも職業が刑事ってのがまたすごい。最初に令子さんの前に現れたときからこいつが犯人だっていうのはすぐに分かったけど、本物の刑事だったっていうのは予想外だった。この人のおかげで、後から出てきた浅倉の衝撃が薄れたくらい。

仮面ライダーは結構強力な力を手に入れたはずだけど、その力を現実世界でも悪用したのって須藤刑事と浅倉だけなんだよな。他のライダーだってそれぞれにクズだけど、それでもライダーの力を使って一般人に危害を加えるような真似はしなかった。まだ抑制のきいたクズだったと言えると思う。
やっぱり、悪さの度合いでは須藤刑事と浅倉の二人が抜けてる。ライダーバトル関係なく殺人犯だし。須藤刑事を小悪党扱いしたり、口だけで実は誰一人殺していない芝浦を須藤刑事と同格の悪役扱いする人は善悪の基準が少しおかしいと思う。

TVSP版の須藤刑事は、わざわざレシートを取りに戻ってくるところがツボだった。正義感の強い警察官だったのに力を手にして歪んでしまったっていう設定で、本編とは別人すぎたが。


北岡

高すぎる身長、特徴的なアゴと、外見は私の苦手な要素てんこ盛り。でも、そこがいいと思う人はきっとたくさんいるんだろう。

30歳という年齢は、やり手の弁護士としてはメチャクチャ若い。だけど仮面ライダーとしてはかなり高齢だよな。北岡といい浅倉(一応25歳設定だけど)といい、龍騎はおっさんライダーが優遇されてるなあ。メイン視聴者は(多分)小学生なのに。

北岡は現実にいたら一番腹立つ奴かもしれない(神崎士郎は完全にフィクションなので除外)。
社会的地位が高く、財力もある。金のためなら強引な手だって平気で使うけど、法の抜け穴を知っていて上手く立ち回るから、浅倉のように逮捕されて制裁を受けることもない。こいつが不幸にしてきた人間の数は浅倉より多いくらいかもしれないのだ。少なくともライダーの力を手に入れる前の段階なら。もしかしたら間接的に何人も殺しているかも。

弁護士は弱者の味方であってほしいという気持ちが私にはあるので、リアルに考えたらこういう人間は本当に許せない。
ただ、キャラクターとしては初期の卑怯で嫌な奴の北岡は結構好き。途中で妙にマイルドになってしまったのがちょっと残念。マイルドになっただけで、いい人になってしまったわけではないけど。
終盤の、浅倉を罠にはめたシーンは良かった。昔の北岡が戻ってきてくれたみたいで。あのときの北岡は輝いて見えたな。


浅倉

浅倉のことはどうしても好きになれない。どうやら龍騎の登場人物の中で一番人気があるようだけど。

最初は私も浅倉の凶悪さを面白がっていたんだが、一向に死なないので段々鬱陶しくなっていった。長く出すぎ。こういうタイプは太く短く生きてこそ、だと思う。東條並みの出番だったらちょっとは好きになれた、かも。
どうも浅倉は人気があるから、という理由で無理に出番を引き伸ばされたような感じがする。こういうキャラは敵として立ちはだかってこそ輝くのに、真司は戦う気がなくて、しまいには馴れ合いまで始めるからな。最初は主人公サイドがこいつの理不尽な悪事に怒りを表明したりしていたけど、後半にはそれもなくなる。こいつは相変わらず極悪人なのに。護送車の警官たちをモンスターに食わせた件に対してなんのフォローもなかったのはなんだかモヤモヤした。しかも馴れ合い回ってあの直後だし。
香川教授たちが出てきてから浅倉はメインのストーリーに関わっていないし、この時点でもう必要ない存在だったんだよな。北岡との因縁話も後付け感が否めなかったし。タイガに倒される形での退場がベストだったと思う。そうしたら東條のインパクトをより強烈なものにすることもできたのに。

私は悪役として描かれている人を素直に嫌いになることはあまりない。ひねくれ者なので、制作側の「こいつを憎め、憎め」的な意図を感じると「その手には乗るか」と思ってしまうから。
浅倉の場合は、脚本家の妙な肩入れを感じたので安心して憎むことができた。頭が固いと言われようが、殺人鬼をかっこよく描こうとするようなやり方は好きじゃない。(私は浅倉みたいなクソ野郎は最高にかっこ悪いと思うが、少なくとも制作側はかっこいいつもりで描いているように見える)
あとはファンの「浅倉が嫌いな奴なんているわけがない。みんなが好きになるはず」って決めつけるような態度が鼻について、尚更嫌いになったんだよな。

見た目も、やや苦手な部類かな。あの派手な格好と鷲鼻と老けっぷりがちょっと……。25歳設定には無理があった。どう見たって30は過ぎてるだろ。
世間的にはすごい男前で色気がある……らしいのだが、私はパッチリ二重で目鼻立ちがはっきりした顔の人 or 童顔で小柄な人が好きなので、その条件からは程遠い浅倉の外見的魅力はサッパリわからんのだ。(念のために書いておくと、私は浅倉が嫌いなだけで浅倉役の役者さんが嫌いなわけではない)

浅倉がかっこいい悪役だっていうのも、今ひとつピンとこない。
「残虐な一面はあるものの、さっぱりした性格で戦いにおいては正々堂々」とかだったらその評価もまあ理解できなくはないんだけど、浅倉は全然そうじゃないからな。十年以上会っていなかった弟をわざわざ騙しておびき出して殺すあたり、すごいネチネチしてて嫌な奴。

そして実はかなりの卑怯者。真司の変身を妨害したり、他のライダーにやられて満身創痍のガイやインペラーを死体蹴りみたいな形で倒したり。戦闘狂キャラとしての美学にも反する。
とにかく勝つことを最大目的としているってスタンスなら不意打ちしようが何しようが気にならないが、戦うのが楽しくて仕方ないという雰囲気を出しといてあの卑怯さだからなあ。「小物悪役とは格が違う」みたいなことを言われてるけど、こいつも充分小物だと思う。

そもそも王蛇って本当に強いんだろうか。一番沢山のライダーを葬った、それは確かだが、龍騎が本気になったら王蛇より強いんじゃないかって思われるフシもあるし。
こいつが殺したのって、ほとんど自分より不利な状況にいる相手だけなんだよな。他のライダーにやられて満身創痍のライダーにトドメ刺したり、ライダーの力を持たない一般人をモンスターに襲わせたり。平等な条件で戦って倒した相手なんて吾郎ちゃんしかいないじゃないか。その吾郎ちゃんだって、あれがゾルダとしての初戦闘だったわけで、戦い慣れてたらやっぱり勝てなかったのでは?

浅倉はクズではない説、または浅倉より東條や芝浦のほうがクズという説を結構な頻度で見かけるが、それは絶対にない。浅倉は人を殺しまくってるけど芝浦は一人も殺していないし、東條はクズっていうのとは別ジャンルだし。浅倉が弟にした行為がクズな行為じゃないとしたら、クズの基準がさっぱりわからん。
弟の件は胸糞悪すぎたし、心底ドン引きした。人の善意を利用して殺すとか、邪悪すぎて。あれを面白がるのは、私にはちょっと無理だった。

浅倉は虐待を受けていたから実は可哀想な奴なんだ、って言われているのもたまに見る。でもそんなことは劇中で具体的に言及されてなかったよな。
この説の根拠は第24話で浅倉が令子さんに「俺はずっと誰かに殴られてきた」って言ったことらしい。でも、浅倉は平気で嘘をつく奴だからな。令子さんの気を引くために言ってみただけかもしれない。自分は人を殺したりやりたい放題のくせに、自分がやられたことだけは忘れないセコい奴でもあるから、殴り合いの喧嘩のことを「殴られた」と表現しているだけって可能性もある。
いずれにせよ、この一言だけでは虐待説の根拠としては弱い。そもそもあのエピソードは浅倉の非道さを浮き彫りにするためのエピソードであって、そこから浅倉に同情の余地を見出そうとするのは無理がありすぎる。浅倉の両親も、もちろん弟も、浅倉の被害者であって加害者ではない。浅倉が虐待されていたんだと思いたい人は、奴があんな人間になってしまったことに何らかの理由を見つけて安心したいのかな。

弟の暁の浅倉に対する反応を見ても、浅倉が元からああいう奴だったんだということが窺い知れる。凶悪犯とは言え、十年以上会っていなかった兄のことをなぜあそこまで恐れていたのか。
これは多分、浅倉が少年時代から残虐性を発揮していたからなんではないかと。暁は兄から日常的に暴力を振るわれていて、いつか殺されるんじゃないかと思っていたのでは。浅倉が暁に「イライラする」のは暁が浅倉とは真逆の心優しい優等生タイプだったりしたからかもしれない。そうだとしたら尚更可哀想だな。

浅倉は家庭環境のせいでああなったわけじゃない。親なんて関係なく、生まれつきの殺人鬼なんだと思う。嫌いな私が言うのもなんだけど、同情の余地なんて欠片もない、救いようない最低さこそがこの人の魅力なんじゃないのかな?

変に改心したりなんかせず、最初から最後までゴミクズ野郎のままなところは良かった。
浅倉がフェリーで少女を守ったと解釈した人にとってはそうじゃないみたいだが、あれは本人が言っていたとおり「囮に使っていただけ」っていうのが正解だと思う。弟をあんな風に殺したような奴が、会ったばかりの少女を本当に助けたとしたら意味不明すぎるしロリコンとしか思えないし、余計気持ち悪くなるだけ。

浅倉の描写に関しては、劇場版が一番好きかな。キャラ的にはTV版と全く変わらないんだけど、奴が奪った命がちゃんと重く受け止められているし、(真司じゃなくて霧島から見てだけど)「倒すべき敵」ポジションにいて、きっちり倒されてるから。
TV版よりも残虐性の高いキャラになっているという意見も見たけど、そんなことはない。浅倉はTV版でもずっとあんな感じだ。劇場版では被害者の視点を入れることで、浅倉がやってきたことの残酷さがより鮮明になっていた。TV版では被害者はスルーというかモブ扱いだから、イマイチ残酷さが伝わっていなかっただけだと思う。


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