しのぶwaves

有馬忍 ライブ情報 日々記

バスタス対ダガール23

2005-07-27 21:40:37 | 物語
エルマーちゃんの全身の毛が総毛立って、追っ手のへびに身構えました。少年は、王様を抱きかかえて走りだしました。へびの鎌首が一瞬王様を捕らえたかと思うと、目にも留まらぬ速さで少年の足に向かって飛びつきました。足を取られた少年が、バッタリ倒れたその時、王様の身体がコロコロ転がって厨房から大理石の食堂まで、勢い良く滑っていきました。ヘビが王様めがけてその鋭い牙を向けたその時です、エルマーちゃんの声が響きました!
「バスタス!王様の枕を!」

へび使いの魂胆 22

2005-07-21 20:13:34 | 物語
雷鳴の中から何本もの腕が逆稲妻と共にソドの国めがけてのぼってきました。
真っ黒い雲が、もくもくと立ち上ったその中から、へび使いは現れました。雲が別れてふた手に退くと灰色の球体が、ぶよぶよに折り重なって歩いているのか、這っているのか、ずるずると、しかし、頭の部分だけは、透明なその中に見えるとぐろが不気味な動きで、すばやく回りを伺っているかのようでした。
へび使いの名前は、ダガール。シドの国を征服しようと、実体のない悪意と憎しみで形づくった体を、長い年月をかけて造りあげたのでした。とぐろの脳みそが、ダガール自身でした。

ヘビ使い 21

2005-07-14 15:17:08 | 物語
ソドの国の下に続く空が、にわかに掻き曇り、雷鳴が遠くの方から近づいてきました。
その稲妻は、空からソドの国に向かってジグザグに、雷音を味方につけて昇ってきました。
ドーン、ドーン、ガラーン、ガラガラ、ドーン、雷鳴がますます近づいて、もうこれ以上耳をふさがづには居られなくなったその時です。宮殿のブルーの階段を真っ二つに引き裂いて、
鉤爪の五本の指を鷲の爪のように折り曲げた黒い腕が、鉄の扉を突き破りました。
真っ黒な手のひらの真ん中は目になっているようです。右や左を探るように動きながら、宮殿の中に入ってきました。ソドの住民はアリの様に逃げ惑うばかり、中には蝿や蚊の様に叩き潰された人もいました。
宮殿の厨房では、今まさに王様とエルマーちゃんと少年がテーブルベッドに投げ出されたところです。夢格納庫の中から、3人を追いかけてきたヘビ枕は、みるみる内に毒々しい色のへびに姿を変えて厨房の床からするするっと目にも留まらぬ速さで飛び出しました。

へび使い 20

2005-07-13 19:55:40 | 物語
頭から、するっと抜け出しました。そして、へびの様に細長く伸びたかと思うと、王様の首に巻きついていきました。少年が叫んで言いました。「急いで!エルマーちゃん、王様が死んじゃう!」
エルマーちゃんが大きな声で呼びかけました!
「逃げる時、後ろの人が踏んでしまうもの、なーに?」
すると、へびが巻き付いていた王様の首が黒い影にに代わりました。2人の目の前に青いパジャマ姿の王様がにっこりほほえんで立っています。そして、言いました
「バスタス君、エルマーちゃん、お久しぶりだね~、君達に会えて本当に嬉しいよ。」
2人は、王様の丸くてかわいい身体を抱きかかえると、クネクネと今では王様を探そうとやっきになっている、へび枕を尻目に一気に丸型の青い扉めがけて走りだしました。
扉はいつの間にか閉じていて、3人のおでこすれすれになって目覚めた様にスルスルと開きました。
王様は、楽しそうにエルマーの背中で「はいよー、はいよー、」と、足をバタバタ動かして上機嫌。
一気に地上まで吸い上げられて、3人は宮殿の食堂の床からポーンと飛び出しました。

19

2005-07-11 19:46:30 | 物語
青い光で覆われた場所は、ドーム型天井でその中心にハンモックのように吊り下げられた揺りかごが
ゆらゆらと揺れていました。手に届きそうな高さで、届かない微妙な位置で揺りかごは止まる事も無く揺れ続けていました。そのカゴを揺らしているのが、青い制服姿の男で、のんびり椅子に腰掛けて腕だけは世話しなく動かしているといった様子です。音もなく揺れるその中で、王様は何やら寝言のような言葉を常に話しています。例えば、「おお~!そこの赤いリボンのおじょうちゃん、そこの扉を開けてごらんなさい、美しいお話の玉手箱を君におくりましょう~!きっと、幸せが訪れますから」とか、「こらこら、そんな乱暴な言葉で友達を傷つけてはいかんぞ!」とか、「満足、満足、」
とか、「悲しいな~、つらいな~、よしよし。」とか、まるで起きて居る様にしゃべり続けているのです。とにかく、ヘビ男達より一歩先にたどり着いたのですから、無事に王様をここから助けださなければなりません。
その時でした、ドーム型の天井から白い紙が少年の足元に舞い降りました。その紙に小さな文字で書かれてあったことは、
「わしの事は気にするな、起きてもなお夢見る力も残しておるぞ。それより、ソドの国を滅ぼさないために、わしをここから連れ出す方法を考えてくれ!」
少年が驚いて言いました。「王様の言葉だとしたら、早く助け出さなくちゃあ!」
エルマーちゃんは急いでいい方法を考え出そうとしています。青い制服の男の腕が一定の速度で、揺りかごを揺らしていましたが、突然その腕がへびのようにクネクネになって王様の揺りかごもクネクネと変な動きになっていきました。王様はまだぐっすりと眠っています。でも、何かが違います、
王様の枕が頭の下から這い出して、生き物のように動き出すと、顔の上に這い上がり王様の息の根を
止めようと

王様の枕 18

2005-07-07 21:01:15 | 物語
「ご主人様に、早いとこお知らせしないと、2人ともご褒美なしだしだしな。お前のアホ頭で考えても無駄だしだし、わかったか!」
一人のヘビ男が舌をしゃーしゃーだした。もう一人が言った。
「おめーに何がわかっとんじゃじゃ、この道はさっきもいっぺん通っとんじゃじゃ、それもわからんくせして、偉そうに言うんじゃねーじゃじゃ」
やはり、舌がしゃーしゃー出ている。最初の男が言った。
「なにおー!そんくらい、わしゃーもわかっとるんじゃ~じゃ~(舌がでている)、ご主人様はな、
この秘密通路のどっかに、この国の宝物があるとわかっとるそうじゃーじゃー、それを早いとこ見っけて、ご褒美いっぱい貰いたくねえのか?」
2人は、肩をこづきあいながら、右ての通路を突き当たると、又しても二手に分かれた道をうらめしそうに見つめた。エルマーちゃんと少年は、ヘビ男達が今度は左に曲がっていった後ろ姿を見送ってから、立ち止まって、今来た道を振り返った。
ウィニーは、格納庫に行く道は、目でみて解るのでなく、夢みて知ると言っていた。
夢を見るなら、目を閉じて眠りにつこう、でも、こんな状態で眠れるわけが無い。
そこで、2人は単純に王様の夢格納庫へたどり着くことを、心から夢見ることにした。王様の夢のお部屋は何処?私達を、どうか、連れて行って下さい。2人は静かにめを閉じて夢を見た、しっかりと手をつないで。
すると、不思議なことがおきました。2人の足元から、真四角に切り取られた石段が、ゴーっという
音と共に真下に下りて行ったのです。切り取られた石のエレベーターはどこまでも落ちていきまし
た。2人の髪の毛はその速さに逆立って、今にも身体が宙に浮く寸前、目の前に青色の丸型の扉が開いて、2人をまるで吸い込む様にその中へ運び込んだのです。
エルマーちゃんの身体の白い毛は、うす灯りの中で青く染まってキラキラと輝いています。
少年の黒い髪まで、青い光で不思議な色に変わっています。

王様の枕 17

2005-07-07 08:20:14 | 物語
少年とエルマーちゃんはこっそり宮殿にしのびこみました。宮殿の中は灰色に変色しているものの
シンと静まり返っていました。ウィニーに聞いた通り、食堂の階段を下りた右手の扉が、秘密通路の入り口だ。2人は足音を忍ばせて暗い部屋に足を踏み込んだ。通路はひんやりとした空気で不思議と薄明かりで足元が見える。壁際に蝋燭が灯っているようだ。足元は大理石の廊下がひんやりとした空気をなおさら増して行く様に続いていく。突然行く手の道が二手に分かれて2人は顔を見合わせて迷いました。その時です、二手に分かれた道の左手の方から、話し声が聞こえました。
「お前の、そのアホ頭のせいだす、せいだす、まった間違えちまっただす、だす。」
「この、ばかでか頭の人のせいにするズルズルズルイ男のくせに、偉そうな口きくでねーだすだす」
2人は、元来た通路の暗がりに身を寄せて息を詰めて待ちました。現れた声の主は、灰色のマントを頭からすっぽりとかぶった2本足で歩くへび男で、マントの下から白い尾っぽがクネクネと大理石を這いながらしゅるしゅると音を立てていました。マントの中の顔は、暗くてよく見えませんでしたが、見えなくて良かったと少年とエルマーちゃんは同じことを考えていました。
2匹のへび男が右の道へ通り過ぎるのを待ってから、2人はそっと、その後をつけていく事にしました。ヘビ男達の言い争いを聞きながら、彼らに任された任務を理解したのです。
それは、この様な内容でした。

太陽の下 16

2005-07-05 07:46:22 | 物語
宮殿の外に飛び出した2人に、ヘナヘナだと思った矢はヘビのようにクネクネと生き物のような動きで向かってきました。エルマーちゃんはヘビがだいだい嫌いなので、おもわず少年にしがみついて叫びました。「牛とニワトリがごちそう食べた。もっと、食べるように言ったら2匹はなんと言ったでしょう?」その時です!襲ってきたヘビの矢がいっせいに逃げ出していきました。
「ふう、びっくりしたわ!あれは何かしら?」
雲の上を歩きながら少年考え込んで言いました。
「あの、白いへび・・どっかでみたことが・・・あ!あれ、僕が「くだらん、つまらんランド」
で姿を変えられていた時に、僕の中に住んでいた奴だ!」
「じゃぁ、なぞなぞの森で私を飲みこんだ、あの白いへび頭も?」
宮殿から、シドの人たちが飛び出してきます。中には、ヘナヘナの矢が身体にくっついてしまい、
泣きながら引き剥がそうとしている人もいます。
エルマーちゃんは、なるべく沢山の人たちを助けようと走り回って、謎謎をかけました。
でも、余りに沢山のヘナヘナの矢が飛んでくるため、間に合いません。
しばらくすると、宮殿の中が急に静まりかえりました。そして、みるみるうちに青色の宮殿が灰色の宮殿へと変色していったのです。そこへ、ウィニーが赤い顔で駆けてきました。
「大変です!宮殿の、夢格納庫が占領されました!シドの国も、下界の生き物すべての夢も、壊されてしまうでしょう・・」涙でウィニーの青色の瞳がいっぱいになって今にもこぼれ落ちそうになったのを、心配そうに見つめていた少年が思いついたように言った。
「夢格納庫は何処にあるんですか?もしかしたら、まだ格納庫の中までは入っていないかもしれないし、僕とエルマーちゃんならそこまで行けるかもしれませんよ」
「そうね、、格納庫の夢が汚染される前に、行きましょう。」
ウィニーは驚いて言いました。「格納庫の中に保管されている夢は、実はこの国の王様なのです。王様は下界のすべての夢を、選別したり、また洗浄したり、必要とあらば危険な夢には、おしおきしたりなさったりしてこの世界中の夢を本当の夢に返しておられるのです。」
エルマーちゃんが聞き返した。「本当の夢って?」
「夢の中には、夢から脱出しても、思いをかなえ様とする力のある夢もあるのです。それが、美しい思いの夢なら、王様はそんな夢を大切に育てる手助けもされるのです。しかし中には、悪質な夢もあり、王様がなだめて夢の世界にお戻しになるのです。」
「じゃあ、王様を助けないと悪い夢がどんどん増えて世界中で悪い事がふえてしまうんだね!」
「その通りです。王様は普段は格納庫の中で眠っておいでです。格納庫はふかふかの雲に包まれたゆりかごで王様が常に気持ちよく眠れる様に、一定のリズムで揺れています。王様が沢山の下界の夢を管理できるように私達も日々努力しているのです。」
ウィニーは王様が好きな子守唄を、悲しそうに歌い始めました、

  お空の上には何がある
  お空の上には太陽が
  お空の下の世界から
  夢はくるくる 夢はくる
  洗って、干して、畳みましょう
  綺麗な 夢を創りましょう
  お空の上には誰が居る
  お空の上にはシドの国
  お空の下から贈り物
  夢はくるくる 夢はくる
  開いて、見つめて、微笑んで
  楽しい 夢を造りましょう


夢どろぼう 15

2005-07-02 19:18:16 | 物語
テーブルベッドで、シドの夢ランチを食べ終わったエルマーちゃんと少年が、夢から目覚めると、
ウィニーが静かに2人の目覚めるのを待っていた。2人の満足気な笑顔が、ランチの美味しさを物語っていた。「シドのランチは、如何でしたか?」透き通る様な肌に、シドの青色に縁取られた宮殿の窓辺が反映して、2人は思わずうっとりとウイニーを見つめた。
「実は、お二人にお話しておきたい事があるのです。」ウィニーの顔が少しだけ翳る・・・
「シドの国にこうして客人がお見えになったのは、シドの歴史上大変珍しいことで、以前一度だけ下界からの訪問者があっただけ・・・」
その時、エルマーちゃんの良く聞こえる耳に、聞いた事の無い不思議な音が聞こえてきたのです。
タンタン、タンタン、ドォワンドォワン、ギュウェン、ギュウウェン、トタントタン・・・くりかえし・・・「あら、ウィニーさん?どうしました?」
みるみる内にウィニーさんの顔色が、赤く変色してぎゃっと叫んだ瞬間に白いドレスを両手に捲り上げて、シドの宮殿の青い廊下を、一目散に走り去って行ったのでした。
その時少年がエルマーちゃんより一瞬早く、飛んできた弓矢をよけてエルマーちゃんを抱きかかえると、右手に開かれていた窓から飛び出してシドの空中に飛び出したのです。
2人が落ちた場所は、フカフカの雲の上でした。頭上から、降ってくるのはへなへなした弓矢ばかり
2人は顔を見合わせて、雲の隙間に身をかくしました。
遠くから、聞こえてくるのは、シドの人々が赤く変色した顔で叫んでいるに違いないこんな声、
「夢ドロボー、夢ドロボーが来たぞー!」

夢どろぼう 14

2005-07-01 13:41:57 | 物語
シドの国の料理人達は、朝一番に取れた良質の夢だけを選りすぐり、新鮮でおいしいランチを用意します。よく注意しないと、見た目は綺麗でも中身に毒素が含まれている夢もあり、プロにしか出来ない選別の方法があるのです。それは、良い夢から取れるおいしい食材を見分ける、「夢舐め機」が100台も厨房に設置されているのです。シドの国のコックさん達は、パリパリの青色の制服を着て朝一番に取れた新鮮な夢を、夢舐め機に流し込むの事から朝のお仕事が始まります。夢舐め機にかかればどんな夢も、新鮮かつ純粋な夢しか生き残れないのです。
今朝一番のお勧め料理を、チーフマネージャーが決定しました。
前菜料理は   「ほうれん草がだいだいだいッ嫌いだった子供も、だいだいだい好きになっちゃった、ほうれん草とスイートコーンのビスケット」と「とうもろこし畑でかくれんぼしててお昼ねしちゃったお嬢さんのコーンプデイング」
そして、今日始めて見た夢から、選りすぐりのメニュウ~
「牧場で、恋をした少年と少女がキスをした隣に偶然居た牛の、牛肉のシチュウーパイ」
そして、メインの料理はソドの国でもなかなか味わうことの出来ない料理
「夢の中から、飛び出したお話が現実の世界でも夢として、認められてるそうとう忍耐強い夢の
味付けにもかかわらず、嫌味のないソフトな舌触りにうっとりしてしまう、スイートポテトのシュリンプまんじゅう」
そして、最後をしめくくるデザートは
「野いちごを摘みに出かけた少女の夢、森の小道で腰掛けた木の株で口ずさんだメロディーが混ぜ合わされたバニラアイスと、木漏れ日がきらめくカクテテルゼリーの宝石箱」で、しめくくられています。