「半島を出よ 上・下」村上龍著、読んでみました。
上下2巻で1650ページの書き下ろし、少し違和感を持ちながらも楽しく読めた。
近未来の北朝鮮からのテロ攻撃というのはそこそこ現実味があり面白いんだけど、ストーリー展開についてはあまり現実感がない。
いろいろな資料と取材の元に執筆しているんだろうけど、経済の混乱(株価や為替)に付いての描写が殆どなく、「コリョ」に対する政府の対応の描写は物足りなく話に厚みが出てこない。
現実的な話だと「イシハラグループ」が行動を起こす前に「自衛隊」や「警察」や「右翼」や「左翼」や「暴力団」が相当な動きをすると思うが、その辺りは淡白な描写か全く無視されている。
そんな違和感を持ちながらも、「北朝鮮軍の現況・思考」や「日本に上陸してからの文化ギャップ」の数々のエピソードは興味深く読めたし、「イシハラグループがコリョを殲滅する」ストーリーは冒険活劇としてわくわくした。
娯楽作品としてはかなりのレベルだと思うが、現実感を増し厚みを出す為に、あと1巻(800ページ)くらい費やせば相当の作品になったと思う。
武器の説明の描写はちょっと「大藪春彦」を髣髴させますね(笑)。登場人物の「イシハラ」と「ノブエ」は1994年の「昭和歌謡大全集」の生き残りと云う事、10年位前に読んでるはずだが、ぜんぜん記憶に残ってない。今度借りて読んでみよう。
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