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SECの強硬手段: 「裸」空売り (naked short-selling) 禁止

2008-07-20 | グローバル経済
先週、Fannie MaeとFreddie Macの経営危機と80%以上の株価暴落という市場の大混乱を前にして、SECが、株式の裸の空売りを禁止するという、ヘッジ・ファンドややり手のトレーダーたちの手足を縛る強硬手段に出ました。

これは、共和党政権も、売り浴びせられた金融機関の株のこれ以上の暴落を阻止するために、「自由市場経済体制」にとうとう規制を加えねばならないと決心したということであり、大統領選挙を前の大きな政策変更です。

「裸」の空売りとは何でしょう。空売りは、相場の重要な取引手段であり、そのものは合法化されたものであります。通常は、値下がりを予想する株を、現物を借りてきて、その株の先物を売ることを指しています。その先物の決済日に約定価格以下で市場から買い戻せれば、差額がトレーダーの利益となります。

トレーダーはこの空売りに際して、現物を借りてくることが原則として定められていますが、実際にはそれを省略して、借用にかかるコストをセーブするトレーダーが多いようです。このように、現物を借りて持っていない状態で、すなわち実質的に量的な制限を受けないで、空売りすることをnaked short-sellingと呼んでいます。

この空売りは危険な賭けでありますが、絶対に儲かるように仕組むことが可能です。みんなで組んで、特定の会社の株価を下げるため、悪いうわさを市場にばら撒くのです。SECはBear Sternsの株暴落などにこの疑い濃厚と見て捜査を開始しました。

ところで、空売り禁止措置の対象が、Fannie MaeやFreddie Macをはじめとする19の銀行・金融会社に限られるという、差別的な措置(selected protectionism)であることが強い批判に曝されています。空売りの全面禁止はありえない選択ですが、この恣意性については、後刻問題とされるでしょう。




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