世界の動きを英語で追う

世界と日本の最新のできごとを、英語のキーワードを軸にして取り上げます。

コロナへの防御持久戦:Hanker down

2021-12-16 | 貧困・疾病・格差
米国の国立アレルギ―・感染病研究所長のアンソニー・ファウチ博士(Dr. Anthony Fauci)は、「米国民一人一人は、今政府が行っているコロナに対する戦いよりも、はるかに強力な戦いを国民全体としてしなければならなくなると覚悟してもらいたい」と警告を発してきた: [Americans] should be prepared that they’re going to have to hunker down significantly more than we as a country are doing.

hanker downは、もともと塹壕に入って身を守りながら持久戦を戦うことを意味している。米語では、この軍隊用語を転用して、「身を守って頑張って戦う」の意味で口語で使われている。

サウジ女性、車の運転許可を求めて立ち上がる Women2Drive

2011-06-18 | 貧困・疾病・格差
2011/06/18

現代の欧米や日本では、実際はどうあれ法の前の男女平等は当然のこととされているが、それが実現されるまでの闘いは容易なものでなかったことは歴史が証明している。日本でも婦人参政権が確立するためには第二次世界大戦での敗戦を待たねばならなかったのだ。

今、世界にはいまだに、女性を男性の庇護なしには生きてはいけない存在とてみなし、独立した社会生活することを認めない社会が厳然と存在する。それはモスレムの宗教原理によって社会生活の規範が定められているアラブ社会、特にサウジ社会がそれである。

こうしたモスレム社会規範と民主主義の葛藤の実態は、2006年のノーベル文学賞を受賞したトルコ人作家、オルハン・パムクの小説「雪」に活写されている。政教分離が実施されてから80年経つトルコでもこのような状況であるが、祭政一致のアラブ社会において女性は男性の同伴無しに外出は許されないし、車の運転は禁止されている。

本日のCNNは、サウジで5月に禁を犯して運転して逮捕された女性が中心になって組織された"Women2Drive,"というネットを通した呼びかけで、当局の取り締まりを無視して、女性たちが敢えてハンドルを握って道路に繰り出したことを報じ、サウジの実態を次のように解説している:

Though there are no specific traffic laws that make it illegal for women to drive in Saudi Arabia. However, religious edicts are often interpreted as a prohibition of female drivers. Such edicts also prevent women from opening bank accounts, obtaining passports or even going to school without the presence of a male guardian.(女性の運転は道路交通法では禁止されていないが、宗教規律からそれは禁止事項とみなされている。女性は独自に銀行口座も持てないし、パスポートの取得もできない。男性の付き添いなしに学校に行くことも許されていない)

しかし、欧米留学経験のある女性が中心となって、Facebookを通して始めたこの"Women2Drive,"運動であるが、参加者には、「黒のイスラムの服装を着用すること、サウジの旗を振って王家に恭順の意を表すること、国際免許で運転すること、男性のエスコートを伴うこと」を順守するように呼びかけていること自体が、いかに抑圧の力が強いことを示している。


ハイチ大地震、混乱の極み The Dead Go Uncounted

2010-01-19 | 貧困・疾病・格差
2010年1月19日(火)

本日もUSA Todayはトップで、米国によるハイチ大地震の被害救援の強化を報じている。オバマ大統領は、先週末までに派遣した7,500人の軍に加えて、本日5,000人の追加派遣を行うこととした。

すでに報道されている通り、食料、水、医薬の不足は眼を覆うべきものがあるが、ハイチ政府は機能を喪失しており、空港・港湾の設備のマヒによってさらに事態が悪化しているとの現地からの報道である。

そのような混乱と焦燥の支配する現地では、死者の数は10万人を超えるのではないかと推定されている。The New York Timesは、あまりの死者の数の大きさのため、死者の葬儀と埋葬が追いつかず首都ポルトープランスの郊外の各所に掘られた穴に、死者への儀礼もなくただ次々と投げ入れられている現状を報告している。

そのひとつ,首都から数マイル離れたところのチタニイェンで行われている凄惨な埋葬「作業」を描写している。4mの深さで、20mの長さの直方体の穴がいくつも掘られたものを大量埋葬墓地(a mass grave)とし、そこに政府が用意したダンプカーに乗せられた死体が先週金曜日から次々と投げ込まれている。

この埋葬に当たっては、個人の尊厳を示す儀式は一切行われない。一枚の写真も取られないし、名前も確認されない。死者の数を数えることさえ行われていないのである。ただただ穴を掘って死体を投げ込むだけの作業が行われている。

ハイチ人は土着宗教であるブードゥ教の教えにしたがって死者との関係を死後も大切にするのが習俗である。したがって葬式は念入りにお金を掛けるのが習慣であるが今回はそのような余裕をまったく国民全体が失っている。

このチタニイェンという場所は、ハイチを50年代から89年代まで支配した圧制者Duvaliersが、言論や反対派を弾圧、多くの国民を逮捕・拷問・殺害したのであるが、その大量殺戮の犠牲者を葬った場所である。普段、ハイチ人はこの場所を忌み嫌って近づかないが、今回は埋葬場所が不足したため使わざるを得ないということである。

数さえ数えられずただ穴に投げ込まれるというのは最大の侮辱である。人々は「最後の礼も尽くされず死に逝く」“the lack of a dignified goodbye”とNY Timesは記事を締めくくっている。



スラムドッグはインドの国辱 “Poverty Porn”

2009-02-24 | 貧困・疾病・格差
2009年2月24日(火)

「おくりびと」が外国語映画賞を受賞したことで、日本中はもろ手を挙げた祝福の嵐となっているが、作品賞という最高の栄誉に輝いた、「Slumdog Millionnaire」はインドに対する国辱(An Insult)だとするとして、インド国内で強烈な批判にさらされている。単純に受賞を喜び、映画を楽しむことのできないインド人も多いというのが現実である。

インドの否定的な反応をFinancial Timesの記事(2009年2月24日)、”Slaumdog Oscar success splits India”(スラムドッグのオスカー受賞インドを二分)から拾ってまとめると次のようになる。

「中身も、俳優も、音符(music score)もインドそのもの(Indian)であるが、映画はあくまで舶来だと見る人が多い。また多くのインド人にとって、ことさらムンバイのスラム地区を選んで、無理やり不具にさせられた子供や、警官の児童虐待を描くのには不快の気持ちを禁じえない。

インドの恥部を見たがる西洋人の劣情を刺激する、「貧窮露出ポルノ」(poverty porn)だ。インドをからかうこの映画に憤激する人も多い。特に、Dogという言葉に、侮蔑の気持ちを嗅ぎ取って、強く反応をするのである。」

急速に近代化し、核保有国で、国産衛星を打ち上げる国力も有する人口11億人の大国インドではあるが、一人当たりの国民所得はまだまだ低く、貧困と格差は大きな問題である。社会的差別・人種・宗教などの「古い問題」は依然としてインドの抱える深刻な問題であることは、「ソフトウェアの工場」となった今も変わらない。この映画は、Hollywoodが、インド映画の手法(Bollywood)を模倣して、見事にそうした矛盾を描いたものともいえるのである。

西洋とインドの文化の衝突を実感したければ、E.M.Fosterの名作を映画化した「インドへの道」がお勧めである。現在のインド社会の矛盾を知りたければ、「インド厄介な経済大国」(Edward Luce, In Spite of the Gods 日経BP 2008)が、お勧めである。いずれにせよインドは、「簡単に」理解されることを拒む国である。




ウズベクの児童労働 widespread use of forced child labor

2008-08-15 | 貧困・疾病・格差
米国の小売業界と衣服業界を代表する4社が、ウズベキスタン政府に対して、「同国で蔓延している、綿摘み作業に児童を強制労働させることをやめるよう」に申しいれました。

すでに、TESCO, Marks & Spencer, Target, GAPを含む欧米の有力な衣服小売業者団体は、昨年の米国政府の調査結果に基づき、ウズベク綿製品の取扱を中止しており、納入業者にはウズベク製の綿糸の使用をやめるように求めています。

報告によると同国憲法では児童の労働を禁止していますが、ほとんどの地方で、学生・児童が低賃金の摘み取り作業に投入されているとのことです。一方政府の公式回答は「自発的に農作業に協力しているだけである」というものです。

ウズベキスタンは、年産80万トンの綿花を産出し、約1,000億円の外貨収入を得ていますが、すべての綿花は3つの公社が買い取ることになっており、輸出価格と集荷価格の差は国家収入となっています。

ウズベキスタンは、イスラム・カリモフ大統領が専制政治を続けており、2005年には国内に駐留を許していた米軍基地からの退去を求めるとともに、ロシア・中国に接近する外交政策を取ってきましたが、人権問題に関する米・欧からの締め付けには、さらに態度を硬化させることが予想されます。


「アフリカの角」の飢餓 Poor crops, high food prices

2008-07-23 | 貧困・疾病・格差
「アフリカの角」(The Horn of Africa)と称される地域の5カ国における長期の旱魃が深刻な食糧不足を引き起こしています。今年の大きな特徴は、国際的な食糧価格の上昇により、援助資金の援助効果が著しく落ちていることにあります。

「アフリカの角」の5カ国の飢餓人口の推計値が国連の世界食糧計画(the World Food Program)から発表されていますが、それによりますと:
   エチオピア 1,030万人
   ソマリア   260万人
   ジブチ    11.5万人
   ケニヤ    90万人
   ウガンダ   70.7万人
となっており、その合計は1,400万人に達しています。

収穫の激減に加えて、価格高騰により食糧備蓄も底をついており、WFPは今後2ヶ月以内に食糧を配給できなければ、餓死者を出す事態となるであろうと警告を発しています。

先の洞爺湖サミットでは、「食糧価格高騰の深刻な懸念を共有し、あらゆる対策を取ると約束」したことが議長総括となっています。これに基づき政府レベルでの二国間緊急援助と、国連を通した食糧援助が機能することが望まれます。