福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

祝!BECO新聞発刊!-「希望の牧場」の牛たちは私たちだ!

2015-02-28 15:59:14 | 新聞
毎時3-5マイクロシーベルトもある福島の浪江町の「希望の牧場」で、避難指示を無視しながら、殺処分になりそうだった福島の牛のめんどうを見つづけている人がいる。その自称「カウ・テロリスト」の吉沢正巳氏が、『BECO新聞』というミニコミを発刊した。「原発事故の生き証人・被曝牛300頭」のための餌のストックは、1か月分を切ったという。みんなで、『BECO新聞』を購読して、餌代を寄付しよう。

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 被曝牛を育て続けることは、単なるセンチメンタリズムではない。牛飼いである吉沢さんにとっては、牛飼いとしての生き方をまっとうすることだろう。そして牛飼いでない私たちにとっても、かわいそうという感情をはるかに超えた、いやそういう感情をしっかりと支え強固にするいくつもの理由がある。

 吉沢さんは、YouTubeにのったインタビュー(リンク文末)で牛の殺処分は原発事故の生き証人を殺すこと、いわば「証拠隠滅」であると言っている。実際、BECO新聞の創刊号によれば、「希望の牧場で保護されている約300頭の被曝牛のうち約20頭に、写真のような白い斑点が出現した」。吉沢さんはこれを放射能の影響ではないかと考えているし、農水相さえ調査に乗り出さざるをえなくなっている。こうしたことも、彼が文字通り命がけで牛たちを育て続けているから表に出てきたことなのだ。

 動物を殺してはいけない、それは自分たち人間の命を守ることにつながるからだ。福一原発事故のあと、たくさんの犬・猫・牛や、はてはダチョウまで、事故前は人間の暮らしに寄り添って生きながら、その「社会的」役割を果たしていたペットや家畜たちが放棄されたり、殺処分された。同時に人間に対する保護も、(SPEEDIなどの)情報隠しや、初期被ばく量の調査に対する不作為や、移住を含めた避難への抑制など同じように個々の命に対する配慮を欠いていた。今度の事故で私たちは、国家が末端の人間の命などいくらでも使い捨てにすることを(戦争などで思い知っていたはずなのに)改めて思い知らされた。動物を殺すことは、こうした人間への殺傷権力のさきがけであり、指標である。
 
 実際、国家は人間を殺しながら浪費する時、動物も犠牲にする。東京新聞20150212夕刊『刻む記憶』には、ベルリンでの戦争体験継承の試みが報じられている。ベルリンでは戦争の記憶をとどめるために、街灯にイラストとともに当時のユダヤ人を対象にした法令がかかれているという。その中の一つが写真でのっている。

「ユダヤ人犠牲者への追悼事業として、ベルリン・バイエルン地区の街灯に設置された猫の絵の看板。裏には「ユダヤ人にはペットの飼育を禁止する」と書かれている」


暮らしの手帳「戦争中の暮らしの記録」には、戦時体制の権力から犬を守った人の話がある。「昭和19年の秋」の東京では、「動物、ことに犬はなるたけ供出するようにという回覧板がまわった」り、

「飼い主において行かれた犬があちこちにつながれ、主人といっしょに帰る私の犬を、うらやむように、うらめしそうにみおくっていた」

という。やがて疎開することになったこの人も大きな困難に直面する。犬を「都内に入れても、都内から連れだしてもいけない、という条例が出ていたからだ。」そして、自分の犬を大きなリュックに詰めて列車の連結器の上でトイレにも行けず、おもらしもしながら、誰かの密告によってやって来た車掌の目をかすめ東北の町についたが、そこでも「殺して毛皮を飛行帽つける」ために犬狩りがあり、

「飼い主の目の前で射ち殺し」たり、「用事から帰った来た奥さんが、自分の家の犬が四つ足をしばられ、鉄砲の先に血だらけになってぶらさげられてくるのに出会い」

というようなことになった。この危機を、犬に睡眠薬を飲ませて蔵に隠すことで何とか切り抜けたという波乱万丈のエピソードがのっている。

戦争の時にそんなひどいことをするのは、ドイツや日本のファシストだけだ、と思ったら大間違い。犬とともに生き、犬を大切にするイギリスでも、空襲時の対策として犬を供出させて殺していた。

BECO新聞には、マハトマ・ガンジーのことばが引用してある。

「一国の偉大さ、道徳的発展は、その国における動物の扱い方でわかる」

吉沢さんは、これを実践している。だから、口蹄疫でやはり多数の牛を殺処分した宮崎で講演した時、

「(売り物にならない牛の命を守るなんて)頭がオカシイと言われませんか。虚しさはないんですか」

と質問した農業高校の生徒さんに対して、こう答えた。

「何度も言われました。沢山の牛が死んだ。牛飼いなのに助けられなかった…」(BECO新聞、2ページ)

こういう対話が、ガンジーのことばの実践的な理解につながるのだと思う。

希望の牧場の牛たちは、牧草ロールを一日300kg、30,000円分食べるという。餌代は年間1,000万円にものぼる。もちろん牛たちからの収入はゼロ。みんなの寄付や購読でこの牛たちを生かそう。そうしようとしている吉沢さんを助けよう!

「希望の牧場」のブログ(寄付先の口座がわかる)

・吉沢さんのYouTubeにのった主張:治外法権牧場/原発一揆、東電・国は大損害つぐなえ!
・通編生活の記事:
「決死救命、団結!」――希望の牧場・吉沢正巳の訴え(前編)-1
「決死救命、団結!」――希望の牧場・吉沢正巳の訴え(後編)-1



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