福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

中日新聞もがんばれ!:2号機爆発の原因も「地震そのもの」による損傷

2011-05-17 22:50:41 | 新聞
読売・朝日・毎日・日経・産経などの全国紙が「東電発表」を安直にそして堂々と繰り返しているだけなのに、共同通信に続いて中日新聞も、極度に重要な事実を、『東電など複数の関係者』に対する独自の取材に基づいて明らかにしてくれた。今度は2号機の話。地震そのものによって圧力抑制室(格納容器下部)が破損しており、その破損箇所から水素が漏れて、外の酸素に触れた結果、3月15日の2号機の爆発を引き起こしたというものだ(このシナリオも前記事で触れた田中三彦氏の雑誌記事で予測されていた)。

『2号機は津波による電源喪失で原子炉の冷却機能が失われ、大量の蒸気が発生、3月14日午後10時50分ごろに格納容器内の圧力が異常上昇した。東電は蒸気を逃がすベント(排気)を2度行ったが、・・・圧力低下が確認できなかった。東電など複数の関係者によると、圧力容器内の蒸気は露出して高温になった燃料から発生した水素を含み、蒸気とともに配管を通って抑制室に入った。ベントができなかったことで、抑制室の内圧も高まり、地震により破損した溶接部などから水素が漏れた可能性がある。・・・漏れた水素が空気中の酸素と反応して水素爆発。衝撃で抑制室が壊れたとみられる。』

この報道にはきわめて重要な点が二つある。
1. 津波・電源喪失は確かに原子炉温度上昇・蒸気発生・圧力上昇の一因だろう(もっとも、2号機でも1号機と同じように、「津波以前」に冷却水喪失が起こっていた可能性も多々ある)。しかし、爆発そのものは、『地震により破損した溶接部などから漏れた』水素が格納容器外部の空気と接触して反応を起こしたことによる。すなわち、放射能防護の「最後の砦」である格納容器は、地震そのものによって、津波・電源喪失以前に破損し「健全」ではなかったということだ。
2. 2号機の格納容器の健全性は地震で失われていた。それこそが、爆発の最終的なきっかけを作った決定的なファクターであった。ところが、私たちは、まったく逆に爆発が格納容器の健全性を失わせたと思わされていた。3月15日の毎日新聞から引用する。

『経済産業省原子力安全・保安院に東京電力から入った連絡によると、15日午前6時10分ごろ、東日本大震災で被災した福島第1原子力発電所2号機で爆発音がした。原子炉格納容器につながる圧力抑制室の気圧が下がっており、損傷した恐れがあるという。』毎日新聞 2011年3月15日 8時06分

上記の中日新聞の記事が述べるとおり、爆発は圧力抑制室の損傷を広げ、決定的なものにしただろう。しかし、この毎日新聞の記事からは、爆発後はじめて損傷が起こったと理解される。最後の砦たる原子炉の格納容器ほどの堅牢なものが、「あらかじめ壊れている」という可能性を一般読者が想定することは不可能である。中日新聞の報道は、こうして事故発生以来、毎日のように吹き荒れた報道による情報操作、私たちの意識と知識に加えられた報道暴力の実態を、あらためて想起させる。

さらに、非常に重要な点。大手メディアが東電・政府の広報機関(大本営発表!)に堕してしまったとき、一地方紙がこうした記事を出してくれた意義は大きい。独自の取材を通して、権力者や利権保持者の都合の悪い隠された事実を暴くのは、ジャーナリズムの原点ではないか。大手のジャーナリストたちには、それができない理由があるらしい。スポンサー関係や個人的「人脈」(接待とかもあるだろう)や選良同士の感受性の連帯(紳士協定)で原発村のお歴々を困らせるような報道行為はできないようだ。だとしたら、そんな「中央」の腐敗から自由な地方の批判精神が大暴れする時が来たのではないか。東電や政府の隠ぺい情報格納容器の砦を突き破るのは、あなたたちだ!

中日新聞がんばれ!地方をなめるな!


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