福島原発事故メディア・ウォッチ

福島原発事故のメディアによる報道を検証します。

津波の前にやっぱり原子炉は壊れていた!:Bloomberg.co.jpがやっぱり取材で突き止めた重大事実

2011-05-21 17:58:03 | 新聞
大手メディアの怠慢翼賛報道の隠ぺいのベールを破るには、通信社・地方紙とともに、やはり海外メディアの突込みにも期待が集まる。Bloomberg.co.jpの『福島原発:津波が来る前に放射能漏れの可能性-地震で既に打撃か(1)』は、そんな期待に応えてくれる大変重要な事実を、共同通信や中日新聞と同様、やはり東電への取材を通して明らかにしている。その重要事実とは、

『東京電力福島第一原子力発電所では津波が来る前に放射能が漏れていた--。』

である。ブルームバーグ・ニュースはこの事実をどこから突き止めたか?5月16日に東電が公表した事故記録データを精査し、かつそこから得られた材料をもとに東電当局を取材したからだ。データからは、

『3月11日午後3時29分に1号機から約1.5キロ離れたモニタリング・ポストで高いレベルの放射線量を知らせる警報が鳴った。大津波が福島第一原発を襲ったのはその数分後』

ということがわかり、それを東電に確かめると、

『東電原子力設備管理部の小林照明課長は19日、ブルームバーグ・ニュースの取材に対し、「モニタリング・ポストが正常に作動していたかどうか、まだ調査している。津波が来る前に放射性物質が出ていた可能性も否定できない」と認めた。』

東電は、上の事実を認めざるを得なかったのだ。「計器が壊れていた」という最後の最後の言い訳をつけくわえながら・・・(3月中にも、まずい事実があると「圧力計が正常に動作しているかわからない」と言っていた。これはすべての議論を打ち切ってしまう効果をもった、誰に対しても絶対に通用する「フールプルーフ・ロジック」と言える)。

地震発生(午後2時46分)のあと、「午後3時半頃」とされる津波到達の数分前、1号機から1.5キロも離れた地点においてさえ警報が鳴るほどの放射線が漏れていたということは、地震そのものによって原子炉に重大な異常事態が発生していたこと意味する。さらに、放射線漏出についても、東電の重大な事実隠ぺいとごまかしを暴露することになる。「みんなうそだったんだぜ!」

『東電はこれまで、3月11日に起きた東日本大震災に伴う津波で冷却電源が失われ炉心溶融で発生した水素が建屋爆発を起こし外部に大量の放射線物質が飛散したと説明していたが、これが根底から覆る可能性が出ている。』


地震それ自体で原子炉が損傷したという事実の『漏えい』は東電および原発推進派にとっては大変な痛手だ。津波対策や非常電源対策では既存の原発再開を正当化できなくなる。同じ規模の揺れに襲われた福島第二、女川、東海などの再開など、もってのほかになる。だから、このスクープが暴露した東電の隠ぺい工作は原発推進派をさえ激怒させる。

『近畿大学原子力研究所の伊藤哲夫所長(原子力安全工学)は19日、「地震の段階で何らかの損傷があったということは当初から想像はしていた。東電はなぜ2カ月もたってから公開したのかと非常に腹立たしい」と述べた。』

言うまでもないでしょうが、この伊藤先生という方は巷の御用学者リストにも立派に掲載され、テレビなどの「安全キャンペーン」でも活躍したその筋の方です。この人が『非常に腹立たしい』とお感じになるのは、東電が大事な事実を2カ月隠していたことではなく、なんで最後まで上手に隠しおおせなかったんだ!このまぬけ!ということです、むろん。

津波前の原子炉損傷と放射線漏れ、という過酷な事実を、大手メディアは公表された東電資料の中から読み取ることができなかった。そもそも本当に検討したのだろうか。資料公表後の各紙の記者はこの資料について、こう言う。

『記録紙に打ち出されたグラフや、当直長がつける運転日誌、原子炉を冷やす装置の操作記録などで、全部で大型ファイル4冊分にあたる。』朝日
『大震災が発生した3月11日午後2時46分から14日頃までの原子炉内の水位、放射線量などの膨大なデータのほか、運転員の当直日誌、操作実績をまとめた。』読売よ
『A4判で約2900ページに及ぶ。』毎日


各紙ともやたら「量が多い」と強調している。「こんなにたくさん宿題出されたら、とってもやってらんないよー」、とブーたれている中学生のようだ。それで結局、彼らはただ東電の発表から記事を書いた。発表の後も、資料を読まないことの言い訳を「こんにたくさん無理」と言っているようだ。


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