電磁波で地震予知を行っている研究者のひとりとして、北海道大学地震火山研究観測センターの森谷武男博士がいます。
森谷氏は、地震発生前には何らかの要因で大気中の電気状態が乱れ、遠くからのFM電波が届く「地震エコー」と呼ぶ現象が起こる、と主張しています。地震エコーが観測されなくなってしばらくすると、地震が起こるというのです。
テレビでもセンセーショナルに取り上げられた森谷氏ですが、彼の主張は全く信用できません。以下に説明します。
(1)ほかの電磁波による予知と矛盾
まず、同じく電磁波の観測により地震予知をしている、いわば盟友であるはずの早川正士氏の主張と、極めて著しい矛盾があるのです。
森谷氏は、「東日本大震災が起こる半年ほど前から、岩手からの地震エコーを北海道で観測していた」と主張しています。ですが、一方の早川氏のほうは、電離層の異常は地震発生の約1週間前に起こるとしているのです。半年と1週間では、あまりにも食い違いすぎです。
また、岩手と北海道の間には、東日本大震災の震源はありません。なのに、森谷氏は、岩手からの異常を北海道で観測しています。これに対して早川氏は、送信局と受信局の間に震源がある場合にのみ電磁波伝搬異常が観測でき、震源も予測可能なのだとしており、明らかに矛盾しています。
いずれにしても、これでハッキリと断言できることは、森谷氏と早川氏、少なくとも一方はインチキであるということです。
(2)原理説明が非科学的
次に、森谷氏の原理説明をみてみましょう。
まず、森谷氏の文章(http://nanako.sci.hokudai.ac.jp/~moriya/fm.htm)は、科学者が書く文章とは思えないくらい、著しく不明瞭です。誤字も非常に多く、日本語として意味不明な部分も散見されます。ここでは取り敢えず、あくまで常識的に、この説明文を解釈してみることとします。
では、森谷氏が地震エコーだとする電磁波の波形をみてみます。彼によれば、上から2段目の波形が「ステップ状」の形状を呈しており、それが地震エコーの形だと言います。
しかし、客観的にみて、たとえば上から2段目と3段目の波形の本質的な違いが、全く不明です。たとえば、階段型でない2つの波形が重なったりすれば、簡単に階段型になってしまうはずです。こうした本質的でない特徴を取り上げて殊更に騒ぐのは、疑似科学の典型です。
また、森谷氏の説明では、異常の継続時間は最大震度に依存し、一方で検知可否(つまり電界強度)はマグニチュードで決まるとしています。ですが、直観的に考えれば、これは明らかに逆のはずです。感知される具体的な異常値すなわち電界強度が、ふつうに考えれば最大震度に依存するはずです。異常が継続する時間、つまり異常源が潜在的に持つエネルギーがマグニチュードで決まるというのでなければ、論理的に現象を理解できません。
いずれにしても、こんな程度のものを「地震エコーだ」と断定して騒げる、その無邪気さがうらやましいとさえ言えます。
(3)実際に予知がハズレている
森谷氏の場合、早川氏とは違って、過去の観測データが具体的にハッキリとは示されていません。つまり、観測値と地震との相関関係が、第三者からは確認できないのです。その意味では、早川氏よりもタチが悪いと言えます。
彼の言を信じるとしても、彼が予知したとする大きな地震は、東日本大震災の前には十勝沖地震(2003年9月、M8.0)くらいしかなく、他はせいぜいM6のマグレでも当たりそうなありふれた地震ばかりです。しかも十勝沖のときは「大地震の経験がなかったので(中略)受信機の故障と思ってしまった」などととぼけています。
なお森谷氏は、地震エコーの観測をもとに、「2011年12月から2012年1月にかけてM9クラスの大地震が起こり、震源はおそらく日本海溝南部付近」という予測をテレビなどで公表していました。だが、一方の早川氏のグループは、そのような予測は全く出していません。やはり、少なくとも、どちらかはインチキ確定なのです。
なお、森谷氏が予測した期間から3カ月ほど経ちましたが、M9クラスの大地震は発生していません。つまり、森谷氏の予知は、大ハズレだったのです。
(4)元になった研究も信頼できない
電磁波による地震予知のヒントを森谷氏や早川氏に与えたのは、彗星発見で有名な天文家の串田嘉男氏です。特に森谷氏のFM電波を用いる方法は、串田氏の手法を継承したものです。
しかし当の串田氏は、「2003年9月に南関東でM7以上の大地震が起きる」という一世一代の予知を外し、その後は予知を的中させたという情報は全くありません。なお、「的中率80%」という触れ込みだった串田氏の予知ですが、第三者である吉野千恵氏らの検証(1999年)によれば、誤差を許容しても的中率はわずか9%だったといいます。
また、電磁気で予知をしている研究者が必ず引き合いに出すのは、ギリシャのVAN法という地電流観測による地震予知です。VAN法は、1993年にM5.7の地震を予知したことになっています。しかし、これはおそらく、マグレです。M5.7はギリシャではそれほど珍しい地震ではありませんし、これ以降、VAN法の予知どおりに地震が発生した事例は確認されていません。ギリシャの学会や政府も、VAN法には全く取り合っていないのです。
…このように、電磁気学による地震予知の現状は、子供騙しの域を出ていません。ハッキリ申し上げると、こんな研究は、お金と電力の無駄使いにも思えます。このような研究よりも、家屋の耐震対策、津波危険地域の防災対策、さらには避難法の周知などの啓蒙活動にお金を使うべきです。地震を予知できようができまいが、揺れは起こるのですし、津波は来るのですから。
森谷氏は、地震発生前には何らかの要因で大気中の電気状態が乱れ、遠くからのFM電波が届く「地震エコー」と呼ぶ現象が起こる、と主張しています。地震エコーが観測されなくなってしばらくすると、地震が起こるというのです。
テレビでもセンセーショナルに取り上げられた森谷氏ですが、彼の主張は全く信用できません。以下に説明します。
(1)ほかの電磁波による予知と矛盾
まず、同じく電磁波の観測により地震予知をしている、いわば盟友であるはずの早川正士氏の主張と、極めて著しい矛盾があるのです。
森谷氏は、「東日本大震災が起こる半年ほど前から、岩手からの地震エコーを北海道で観測していた」と主張しています。ですが、一方の早川氏のほうは、電離層の異常は地震発生の約1週間前に起こるとしているのです。半年と1週間では、あまりにも食い違いすぎです。
また、岩手と北海道の間には、東日本大震災の震源はありません。なのに、森谷氏は、岩手からの異常を北海道で観測しています。これに対して早川氏は、送信局と受信局の間に震源がある場合にのみ電磁波伝搬異常が観測でき、震源も予測可能なのだとしており、明らかに矛盾しています。
いずれにしても、これでハッキリと断言できることは、森谷氏と早川氏、少なくとも一方はインチキであるということです。
(2)原理説明が非科学的
次に、森谷氏の原理説明をみてみましょう。
まず、森谷氏の文章(http://nanako.sci.hokudai.ac.jp/~moriya/fm.htm)は、科学者が書く文章とは思えないくらい、著しく不明瞭です。誤字も非常に多く、日本語として意味不明な部分も散見されます。ここでは取り敢えず、あくまで常識的に、この説明文を解釈してみることとします。
では、森谷氏が地震エコーだとする電磁波の波形をみてみます。彼によれば、上から2段目の波形が「ステップ状」の形状を呈しており、それが地震エコーの形だと言います。
しかし、客観的にみて、たとえば上から2段目と3段目の波形の本質的な違いが、全く不明です。たとえば、階段型でない2つの波形が重なったりすれば、簡単に階段型になってしまうはずです。こうした本質的でない特徴を取り上げて殊更に騒ぐのは、疑似科学の典型です。
また、森谷氏の説明では、異常の継続時間は最大震度に依存し、一方で検知可否(つまり電界強度)はマグニチュードで決まるとしています。ですが、直観的に考えれば、これは明らかに逆のはずです。感知される具体的な異常値すなわち電界強度が、ふつうに考えれば最大震度に依存するはずです。異常が継続する時間、つまり異常源が潜在的に持つエネルギーがマグニチュードで決まるというのでなければ、論理的に現象を理解できません。
いずれにしても、こんな程度のものを「地震エコーだ」と断定して騒げる、その無邪気さがうらやましいとさえ言えます。
(3)実際に予知がハズレている
森谷氏の場合、早川氏とは違って、過去の観測データが具体的にハッキリとは示されていません。つまり、観測値と地震との相関関係が、第三者からは確認できないのです。その意味では、早川氏よりもタチが悪いと言えます。
彼の言を信じるとしても、彼が予知したとする大きな地震は、東日本大震災の前には十勝沖地震(2003年9月、M8.0)くらいしかなく、他はせいぜいM6のマグレでも当たりそうなありふれた地震ばかりです。しかも十勝沖のときは「大地震の経験がなかったので(中略)受信機の故障と思ってしまった」などととぼけています。
なお森谷氏は、地震エコーの観測をもとに、「2011年12月から2012年1月にかけてM9クラスの大地震が起こり、震源はおそらく日本海溝南部付近」という予測をテレビなどで公表していました。だが、一方の早川氏のグループは、そのような予測は全く出していません。やはり、少なくとも、どちらかはインチキ確定なのです。
なお、森谷氏が予測した期間から3カ月ほど経ちましたが、M9クラスの大地震は発生していません。つまり、森谷氏の予知は、大ハズレだったのです。
(4)元になった研究も信頼できない
電磁波による地震予知のヒントを森谷氏や早川氏に与えたのは、彗星発見で有名な天文家の串田嘉男氏です。特に森谷氏のFM電波を用いる方法は、串田氏の手法を継承したものです。
しかし当の串田氏は、「2003年9月に南関東でM7以上の大地震が起きる」という一世一代の予知を外し、その後は予知を的中させたという情報は全くありません。なお、「的中率80%」という触れ込みだった串田氏の予知ですが、第三者である吉野千恵氏らの検証(1999年)によれば、誤差を許容しても的中率はわずか9%だったといいます。
また、電磁気で予知をしている研究者が必ず引き合いに出すのは、ギリシャのVAN法という地電流観測による地震予知です。VAN法は、1993年にM5.7の地震を予知したことになっています。しかし、これはおそらく、マグレです。M5.7はギリシャではそれほど珍しい地震ではありませんし、これ以降、VAN法の予知どおりに地震が発生した事例は確認されていません。ギリシャの学会や政府も、VAN法には全く取り合っていないのです。
…このように、電磁気学による地震予知の現状は、子供騙しの域を出ていません。ハッキリ申し上げると、こんな研究は、お金と電力の無駄使いにも思えます。このような研究よりも、家屋の耐震対策、津波危険地域の防災対策、さらには避難法の周知などの啓蒙活動にお金を使うべきです。地震を予知できようができまいが、揺れは起こるのですし、津波は来るのですから。
はずかしいブログは早々に閉鎖してまじめに行きましょう。
実力のない批判屋の範疇を脱しきれないと日々アピールしているようなものですよ筆者は。
全く成果が出ていない研究なのに「成果が出ている」と虚偽の主張をし続け、研究資金を得続けようとする研究者の態度は、科学の発展を阻害するという意味でも、税金などの資源を無駄遣いするという意味でも、極めて「有害」です。
したがいまして我々は、彼らを批判するだけの「批判屋」であろうとも、「実がない」とは全く考えていませんし、ステイタスが低いとも全く考えていません。
ご了承ください。
地電流の東西方向成分の値が東日本大震災の時にかなり異常になっていたのを見ました。
http://www.kakioka-jma.go.jp/cgi-bin/plot/plotNN.pl
時間的に見て、地電流の値が異常になり始めたのは、地震が発生する数時間前です。
これを見れば、地震と地電流や地磁気に関係がないとは決して言えないと思います。
確立が本当に100%でなければ疑似科学だという見方は間違っていると思います。
それはシュレジンガーの不確定性原理を理由として量子力学を疑似科学と言っているようなもので、科学に対する見方がかなり遅れており、学識レベルが低いと思われます。
あなたの意見では、100%確実でなければ、台風の進路予測もするべきではないというような馬鹿馬鹿しい事になるでしょう。
確率が100%でなくても危険が多くの人に迫っていると認識した場合、80%でも90%でも発表して、人命が助かるように図る方が知性的だと思います。
物理などの科学における法則は傾向法則として認識するべきであると思います。
たとえば、化学反応における電気陰性度の順が化学反応の結果全てを予測するものではないようなものです。
災害は予測確率がある程度高ければ発表する方が有益だと思います。
コメント誠にありがとうございます。
我々の立場を著しく誤解されているようですので、説明させて頂きます。
まず、「確率が100%でなければ疑似科学だ」という見方を我々がとっているように感じられたようですが、我々はそんなことはひと言も申し上げておりません。デタラメからの差分が1%も読み取れないので、疑似科学だと申し上げているのです。
また、我々は「地震と地電流や地磁気に関係がない」とは一言も申し上げておりません。その一方で、「現状で多くの研究者が主張している地電流や地磁気による地震予知方法には、信頼性や信憑性のあるものはひとつもない」という立場です。
>災害は予測確率がある程度高ければ発表する方が有益だと思います。
仰るとおりだと思います。ですが、彼らが発表している予測には、デタラメ以上の有意な的中確率を、「ある程度」どころか、「全く」読み取れません。それは我々がこのサイトで説明しているとおりです。そのようなデタラメな予測は、発表しない方が有益です。
地震が起きるまえに、地下で岩盤が破壊されそれによりイオンが大気に放出され、上空(電離層?)の状態が変わるというのは、他国の研究者でも同意が得られていると思います。
ただ、その量などから、地震予知の三原則に結び付けるのはまだデータが不足しており、その他の要因等をフィルターする必要性があると思います(中国の大気汚染とかどうなんでしょ)。
この研究が発展途上というのがありますが、発表する側も外れて批判されるのを恐れずに公表されているのは、やはりもし当たった場合の被害を少しでも減らしたいというのがあると思います。実際に過去巨大地震の前にはっきりと予兆があったのですから(ただ、確かに100%確証は得られていないというのは理解できます)。
かたや、国で予算をあてて行っている事前予知は、主にGPSを使うなどのスロースリップを観測するものですが、こちらはそれが起きたとしても、時期の判断が非常に難しいと思っております。
例えば犬が眠い時にあくびが出て、その後どれくらいで眠りにつくとかそんな感じでしょうか。
これから研究が進み、少しでも高い精度で予知が可能になることは親としての悲願です。
こういった一般の人が公表をしても全然パニックになっていないですが、気持ちを引き締め、防災用品等を買う良いきっかけと思います。大地震はかならずやってくるのですから。
コメント誠にありがとうございます。
>地震が起きるまえに、地下で岩盤が破壊されそれによりイオンが大気に放出され、上空(電離層?)の状態が変わるというのは、他国の研究者でも同意が得られていると思います。
何をもって「同意が得られている」とするかにもよりますが、少なくとも地球科学者一般の間では、そのような同意は得られていません。
「電磁気で地震予知ができる!」と主張し続ける方々の間でのみ、そのような同意が得られている状況です。そういった方々がテレビや雑誌や書籍やネットで喧伝し続けているために、さも広く同意が得られているように一般に思われているだけです。
たとえば宇津先生の『地震学』の最新版でも、地震予知についてはかなりの頁が割かれていますが、電磁波の伝搬に異常が起こるという「報告がある」とたった1行触れられているだけです。現在の地震学におけるコンセンサスとしては、ただ「そういう報告もある」といった程度のものに過ぎないことは、ぜひ知っておいて頂きたいと思います。
上のサイト内の画像
http://sekaitabi.com/wp-content/uploads/moriya15.jpg
に
M1~4で異常電波が
10~30分
M4~5
200~400分
M5以上
1000分以上
とあるのでM9以上の地震は半年ほど異常電波がかかるんですよね。
この内容を記事内に乗せてくれるとたすあかります
じゃないのか(笑
村井俊治氏や早川正士氏への批判は同感です
下手な予知も数撃ちゃ当たるですわ
串田氏の7/31-8/1のm7.5近畿新潟福島が的中したときも濃厚な批判期待してます。