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現代ビジネスOPEN!! どりこの探偵局


「新聞の亡霊」がまた出てきた 
~毎日新聞社のDoTV実験の無意味~



 9月29日に、毎日新聞社は、シャープの液晶テレビAQUOSで、新聞が読める「毎日新聞×DoTV」というサービスを始めた。
 また出てきた「新聞の亡霊」に、この業界の発想の貧しさを感じる。 

 「紙面フェチ」に侵された業界幹部

 新聞の紙面をそのまま、インターネット上で読めるようにするという発想は、昔からある。
 産経新聞は2001年から「新聞まるごと電子配達」というサービス(有料)を行っているが、読者はほとんどいないということだ。
 産経は昨年からiPhoneで無料で読めるサービスもしているが、これも最初はものめずらしさで見る人が多かったが、その後は人気が落ちていると聞く。
 私は、産経に技術提供した会社から「日経もやりませんか」と誘われ、「何の意味もない」と断った。2000年ごろのことだったと思う。
 新聞業界は、恐ろしいほど「紙面フェチ」の人が多く、役員はほとんどそれに侵されている。
 もういい加減に、何がデジタルの本質かを知るべきだと思う。(それについては、ぜひ『2030年 メディアのかたち』をお読みください。この程度はデジタルの常識ですから)
 今の新聞は、1日に2回発行して、宅配をするというビジネスモデルの上に成り立っている。インターネットを使えば24時間、ニュースを更新できるし、ハイパーリンクによって、様々な関連情報を参照できる。
 いま進行しているデジタル革命は、アナログ(紙面)の情報をデジタル化して、インターネットで送るなどという陳腐な話ではない。何よりもWWWによるハイパーリンクの構造が本質だ。

 若手社員で「ノアの箱舟」作戦

 「新聞は再生できますか」と私は時々質問される。
 「再生できません」と私は答える。
 今の新聞は1998年ごろに収入のピークを迎え、その後は、販売も広告もどんどん落ちてきている。この傾向は景気が回復しても改善することはなく、向こう10年で、業界の規模は半減すると予想される。
  その減少分をさらっていく新たなメディアの創造が必要だ。
 私が新聞経営者なら、40-50人の社員に4年間で50億円ぐらいの資金を与えて、「新たなデジタルメディアを創れ」と命じ、それが軌道に乗ったら、既存の紙の新聞から、使える社員だけを新しい船(デジタル)に乗り換えさせる・・・という作戦を取るだろう。私はこれを「ノアの箱舟作戦」と呼んでいる。
 その時に重要なのは、「骨格」だ。最初にどういうページを見せ、そこからどういうボタンとリンクを用意して、使いやすく魅力的な構造を作る。そこにコンテンツを貼り付けていく・・・というわけだ。  
 コンテンツが重要ではない。ユーザーにとって重要なのは使いやすさ、見やすさである。そういうセンスは日常的にネットを使っている人でなければわからない。ネットを使わない人が、意思決定するなど論外だ。

 我々は一体何をしているのか?

 日本雑誌協会も、8月に雑誌コンテンツデジタル推進コンソーシアムを立ち上げた。ミソはパソコンや携帯電話で記事単位で読めるサービスを提供することだという。これも成功はおぼつかないと見る。
 毎日新聞のある幹部に「DoTVの先の戦略はありますか?」と聞いたら、「何も考えていない」という。シャープやNTTコミュニケーションズの誘いに乗っただけのようだ。        

 もう一度、原点を確認しよう。
 新聞は「ニュースを提供する」のが最大の仕事だ。であるなら、取材したら即座に読者に知られなければならない。紙面の締め切りなど待ってはいられない。現在の紙面や記事は、「紙に印刷する」という前提で考えられた「形式」に過ぎない。
 雑誌についても同じだ。今の雑誌コンテンツは雑誌というコンテナに合わせて中身を盛り付けているだけだ。インターネット上に置くなら、インターネットの特性をフルに使うべきだ。
 私は、新聞や雑誌が衰退していくことを止めようとは思わない。馬車がなくなって自動車になったように、手段は時代に合わせて変わるのが当然だ。 
 しかし、ジャーナリズムがなくなるのは絶対に防がないといけない。ジャーナリズムがなくなれば、民主主義は窒息死するからだ。 
 そういう意味で、デジタル・ジャーナリズムの新しい形を考えて生きたい。                                      

                                   2009年9月30日
                                      坪田知己 

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