玄文講

日記

首なしニワトリ ~魂の座1

2005-01-03 18:44:49 | 人の話
あけまして、おめでとうございます。

今年は酉年ということで、本年最初の話は愉快なニワトリ「首なしマイク」について取り上げたいと思います。


(街中に人だかり。シルクハットの怪しい風体の小男が一枚の写真を前に演説している)
さぁ、さぁ、紳士淑女の皆様、まずは上の写真をご覧あれ。

これは合成写真でもなければ、インチキ剥製でもありません。いいですか、皆様、、、
驚くべき事に、このニワトリ、その名もミスター・マイクには 何と首がありません!!
ああ、素晴らしい!これぞまさに生命の神秘!これは神の奇跡か悪魔の悪戯か!?
さぁ皆様もどうぞ遠慮なく拍手喝采なさいませ!感嘆の声をもらし、しょんべんをだだもらし下さい!

、、、おや?皆様、反応がない。
えっ?なんですと?「首の無いニワトリなんて俺の田舎の軒下にいくらでも吊るされている。ニワトリは解体する時に首を切ってやるんだ。そうすれば首を切られたニワトリは血を流しながら暴れまわって、勝手に血抜きされる。現代っ子には縁のない話かもしれないが、そんな物のどこが珍しいんだ」ですって?

はっはっはっ、お客様。そんな死体ふぜいとこのミスター・マイク様をご一緒にしていただいては困ります。
この首なしマイクは生きているのです。
首を振り振りよちよち歩き、ドクドクと心臓を鼓動させ、パクパクと餌を食べ、ムクムクと成長さえしているのです。

えっ?「ふざけるな。嘘をつくならもっとましな嘘をつけ。そんなヨタ話に金は出せない」ですと?
そうですか、信じていただけませんか。
いいでしょう。それではこの首なしマイク君の波乱万丈の生涯について聞いていただきましょう。
話の真偽はそれから皆様各自でご判断下さい。

時は1945年、所はコロラド州のある農家。
その家の主人、農夫のロイド氏はいつものように家畜のニワトリの首をチョッキンパいたしました。
そして翌日、ロイド氏が血抜きされたニワトリを回収しに行くと、なんと首の無いニワトリが小屋の中を元気に歩き回っているではないですか!

しかも首にスポイトで餌をやると、いつまでも死なずに元気でピンピンしている。
驚いてそのニワトリをユタ大学に連れて行くと、学者先生方もびっくりぎょうてん!
喧々囂々(けんけんごうごう)の挙げ句、このニワトリは首を切られた時に凝固した血塊が頚静脈を止血したために死なずにすみ、反射を司る脳幹が体内に残っているため生命活動を続けていられるのだ、という結論に達しました。
そしてロイド氏はこのニワトリに愛着を持ちはじめ、マイクという名前をつけて可愛がったのです。

さて、こんな面白い生き物を世間様が放っておくわけがありません。
マイク氏は25セントの見物料で見せ物小屋に立ち、全米各地を巡業し、連日長蛇の列を作らせロイド氏を大いに儲けさせました。
そしてライフ誌、タイムマガジンの表紙にも載り、2ポンドから8ポンドまでに成長した頃に18ヶ月の天寿をまっとうし、人々はマイク氏の死を残念がり毎年5月の第三週末日を「首なしニワトリの日」として記念日に制定したのでした。

さぁ皆様もどうぞ遠慮なく拍手喝采なさいませ!感嘆の声をもらし、しょんべんをだだもらし下さい!
(人々、拍手喝采。シルクハットを振り回し歓声にこたえる小男)



頭がなくとも生きていられる生物は「首なしマイク」だけではない。
「断頭動物」「除脳動物」の行動はその他の動物、ハト、カエル、猫、犬などを用いて盛んに研究されている。

生理学者のブリュガーは頭部を切除したカエルの行動を研究し、そのカエルが頭のあるカエルと比べて「背中の刺激物」に対して劣ることなく反応したことを報告している。

生理学者のゴルツは犬の頭蓋骨に穴をあけて水を注入することで、犬の大脳を破壊した。
それでも、その犬は外見は生きている犬と変わりなく、歩き、食事をし、痛みを与えるとうなり、刺激を与えないと眠り、大きな音に反応して目を覚まし、押したり引いたりするとバランスを保とうとしてふんばりさえした。

これはどう解釈すべきだろうか?
生命にとって大脳は魂の座ではなかったのだろうか?
それにも関わらず大脳のない生物が、脊髄の反射運動だけで健常な生物と変わりなく行動できるとはどういうことなのだろうか。

これは犬やカエルなどの下等な動物だけにあてはまる話なのだろうか?
それとも人間でさえも、自由な魂の下で行われているはずの自発的な行動、それらの多くが実は単なる反射運動に過ぎないのだろうか?

それでは脳死はどうなるのか?
もし魂の座が脳だけでないのならば、脳死を人間の死として扱う「臓器移植問題」はどう解釈されるべきなのだろうか?

あまり「正月」や「寿」にはそぐわない話になってきたので、今日はここまでとしたい。
続きはまた明日。

[参考]「奇跡の首無し鶏」マイクの残したもの
http://x51.org/x/03/10/2502.php

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